
結論: AI開発の受託では、診断・PoC・本開発・運用の段階ごとに、どこで準委任から請負へ切り替えるかを考えます。完成の姿と合格の基準が決まった部分から契約を切り替える、という当社の整理を紹介します。この記事では、発注前に決める5つの判断、請負と準委任の違い、診断からPoC・本開発・運用まで段階ごとに契約を変える考え方、費用の目安、依頼前の準備を順に書きます。
この記事の要点
- 発注前に決めるのは、目的と対象業務・開発の段階・契約形態・完成の定義・運用を誰が持つかの5つ。会社に聞く前に、自社のメモで答えられる状態にしておく
- 請負は仕事の完成に法的な責任を負う契約、準委任は完成そのものには責任を負わない契約(特許庁のIP BASE)。準委任の成果完成型でも完成の定義は別に問題になりうる(同)
- 段階は「診断→PoC(=本番の前に小さく試す開発)→本開発→運用」。診断で形を決め、固まった部分から請負へ切り替えると、最初から大きな一括契約を結ぶより外れにくい
- 当社の提供条件は、準委任または請負(30万円〜)で、月20〜36万円の案件例がある。AI適用診断はライト15万円・標準30万円(税別)で、本番化・保守は別契約
- 対象業務が決まっていない会社や、社員の使い方の習得が先の会社は、受託の前にやることがある。向かない場合も後半に書く
この記事は、AI開発を受託会社に頼むかどうかを検討している中小企業の経営者・事業責任者に向けて書いています。見積を取る前に、何を決め、どの契約形態で、どの段階から頼むかを決めたい場面を想定しています。「AIで何かを作りたい」ところまでは決まっている前提です。発注前に決める4つの判断と費用の目安はAI受託開発|発注前に決める4つの判断と費用の目安に書きました。本記事では5つの判断を短く押さえたうえで、段階ごとに契約を切り替える条件を、契約形態と完成の定義から考えます。外注先の探し方や会社の比較も扱いません(AI受託 開発会社|探す場所3つと4タイプへ)。ここでは「契約形態と開発の段階の当て方」だけに絞ります。
今日やることは1つです。頼みたい業務を1文で書き、その仕事を請負で頼むか準委任で頼むかを、この記事の表で決めてください。今週・今月の動きは、最後のまとめに書きます。
AI開発の受託とは|任せる範囲と、コンサル・内製化支援との違い
AI開発の受託とは、AIを使った仕組みの制作や作業を、契約で内容を決めて外部の会社に任せる形です。コンサルや内製化支援とは、「何が手元に残るか」が違います。
受託は、完成した仕組みや作業の結果が手元に残ります。コンサルは、進め方の整理や助言が残ります。内製化支援は、自社の社員が自分で作り・直せる力が残ります。同じ「AIの支援」でも、お金を払って得る物が違うので、見積を比べるときは先にここを分けておきます。
| 形態 | 手元に残る物 | 任せる範囲 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 受託開発 | 動く仕組み・納品物 | 設計から制作までを会社が行う | 作る物が決まっていて、自社に作る人がいない |
| コンサル | 方針・計画・助言 | 進め方を整理して助言するところまで | 何から始めるかが決まっていない |
| 内製化支援 | 社内の担当者のスキル・手順 | 作りながら使い方を引き継ぐ | 自社で運用と小さな改善を持ちたい |
| 業務委託(一般) | 契約で決めた作業の結果 | 契約書に書いた作業 | 人手が足りない作業を切り出したい |
当社の整理では、「業務委託」は請負と準委任を含む広い言い方として使います。契約書に「業務委託契約」とだけ書いてあっても、中身が請負か準委任かは別に決まります。そこを次の節以降で扱います。
確かめ方は1つです。候補の会社に「納品の時点で、手元に何が残りますか」と聞いてください。「システム一式」と答える会社と、「提案書と進め方の資料」と答える会社では、頼んでいる物が違います。
AIコンサルの費用と受託開発の関係はAI専門家の費用も参考になります。内製化との組み合わせはAI内製化とは?に考え方を書いています。
発注前に決める5つの判断
見積を取る前に決めるのは、目的と対象業務・開発の段階・契約形態・完成の定義・運用を誰が持つかの5つです。この5つが自社のメモに書けていれば、会社に聞かれても迷いにくくなります。
① 目的と対象業務
何のために、どの業務をAIで変えるのかを1文で書きます。「問い合わせ対応の一次分類を減らしたい」のように、業務の名前と変えたい点が入った文にします。「AIを導入したい」だけでは、会社も見積の前提を置けません。
確かめ方: 同じ文を、現場の担当者に見せて「これで合っていますか」と聞きます。担当者が違うと言う場合は、まだ業務が固まっていません。棚卸し(=どの業務にAIを当てるかを整理する作業)が先です(AI 業務 棚卸し)。
② 開発の段階(どこから頼むか)
AI開発は、診断・PoC・本開発・運用の4段階に分けて考えられます。自社が今どこにいるかで、頼む範囲が変わります。業務は決まっているが技術的に動くか不明なら、PoCから頼みます。業務そのものが固まっていないなら、診断からです。
必要な段階は、作りたい物でも変わります。文章や画像を作る生成AIか、数字のデータから学んで分類や予測をする従来型の機械学習かで違います。生成AIは試して精度を見る工程が大切なので、PoCを挟む価値が高くなります。従来型の機械学習は学習に使うデータの量と質が成否を決めるので、診断でデータの有無を先に確かめます。
確かめ方: 「今の状態は、診断・PoC・本開発のどこが必要ですか」と会社に聞き、理由を説明してもらいます。必ず本開発を勧める会社には、診断やPoCを挟まない理由を聞いてください。
③ 契約形態
請負にするか、準委任にするかを決めます。完成の姿が書けるかどうかが分かれ目です。詳しくは次の節に書きます。1つの案件で、段階ごとに契約形態を変えることもできます。
確かめ方: 見積書や契約書の案に「請負」「準委任」のどちらかがはっきり書かれているかを見ます。書かれていなければ、聞いて書面にしてもらいます。
④ 完成の定義
何ができたら「完成」とみなして支払うのかを決めます。「動くこと」では足りません。たとえば「問い合わせのうちどれだけを正しい分類にできたら合格か」のように、確かめる方法まで決めます。数字は自社の業務で決める物なので、ここで他社の数字を借りません。
確かめ方: 完成の基準が、納品の前に自社の人が自分の目で確かめられる形になっているかを見ます。会社の側にしか確かめられない基準だと、合格か不合格かを自社で判断できません。
⑤ 運用を誰が持つか
納品した後、仕組みを動かし続けて直すのは誰か。受託会社が持つのか、自社が持つのか。ここを決めないと、納品の日に「動いたが、誰も直せない」状態になります。保守の考え方はAIエージェント保守とはに書いています。
動かす場所(クラウドか、自社の機器か)も、この判断に入れます。クラウドは始めやすく、自社の機器は社外にデータを出したくない業務に向きます。選び方で、保守を誰がするかと、機材や利用料を誰が払うかが変わります。
確かめ方: 納品物に、運用の手順書や設定の一覧が含まれているかを聞きます。自社で運用するなら、その引き継ぎ作業が見積に入っているかも見ます。動かす場所を決める場合は、機材・クラウド利用料が見積に含まれるか、別払いかも聞いてください。
何を作るか・契約の型・どの段階から頼むか・完成の条件の考え方は発注前に決める4つの判断に書きました。本記事は③契約形態と④完成の定義を、段階との組み合わせで深く書きます。
請負と準委任の違い|AI開発では「完成の定義」が焦点になる
請負は、仕事の完成に法的な責任を負う契約です。準委任は、完成そのものには責任を負わず、合意した仕事を丁寧に行うことに対価が発生する契約です。準委任の成果完成型でも、何をもって完成とするかは別に問題になりうる、と特許庁は注意しています。
特許庁のIP BASE「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」は、次のように整理しています。請負型は、請負人が注文者に対し仕事の完成を約束し、その履行について法的な責任を負う契約です。準委任型は、契約で合意された仕事を一定の水準、善良な管理者の注意のもとで行うことに対して、対価と責任が発生する契約類型です。受任者は仕事の完成に対して法的な責任を負いません。
さらに同ページは、準委任の中に「成果の引き渡しと引き換えに報酬の支払義務が生じる『成果完成型』」(=成果物を渡して初めて報酬が出る型)があると説明します。ただし、この場合でも何をもって「完成」とするのかは別途問題になりうる、と注意しています。つまり、契約の名前だけでは安心できません。完成の基準を契約書に書けるかが分かれ目です。
| 契約形態 | 会社の責任 | 向く開発の段階 | 発注側が決めること |
|---|---|---|---|
| 請負 | 仕事の完成に責任を負う | 仕様が固まった本開発・決まった形の制作 | 完成の基準と納期を文章にする |
| 準委任 | 完成には責任を負わず、合意した仕事を丁寧に行う | 診断・PoC・要件が動く段階・運用の支援 | 作業の範囲、稼働の量、報告の頻度 |
| 準委任(成果完成型) | 成果物を渡すことと引き換えに報酬が生じる | 成果物は決められるが、作り方に幅がある段階 | 成果物の定義と、受け取りの確認方法 |
完成の姿を書けるかどうかが、請負と準委任の分かれ目になる。
図の内容: 完成の姿と合格の基準を書ければ請負、書けなければ準委任で、準委任には成果完成型もあることを示す流れ図。
選び方の目安は次のとおりです。完成の姿と合格の基準を文章で書けるなら請負、書けないなら準委任が向きます。
この目安は、特許庁の定義そのものではありません。特許庁の資料の定義を、発注の場面に当てはめて当社がまとめた整理です。
確かめ方: 契約書の案を受け取ったら、完成の定義が書かれた条文を探します。準委任の契約でも「成果物の引き渡しで報酬」と書かれていれば、成果完成型にあたることがあります。そのときは、成果物の中身と受け取りの確認方法を一緒に聞いてください。準委任と請負をフェーズごとにどう当てるかはAI導入の準委任と請負に、準委任契約の注意点はAI準委任契約に書きました。ここでは重ねて書きません。
診断→PoC→本開発→運用|段階ごとに契約形態を変える
AI開発は、診断・PoC・本開発・運用の4段階で進め、段階ごとに契約形態を変えると外れにくくなります。前半は「分からないことを減らす段階」なので準委任、後半は「決めた物を作る段階」なので請負が噛み合いやすいからです。
PoC(=本番の前に、小さく動かして使えるかを確かめる開発)は、使えるかを試す段階です。成功するか分からない段階で完成責任を負う契約にすると、会社も大きめの余裕を見て見積を出すことになります。逆に、仕様が固まってから準委任のまま続けると、終わりの基準が曖昧なまま費用が積み上がります。
診断で形を決め、固まった部分から請負へ切り替える4段階の階段。
図の内容: 診断・PoC・本開発・運用の4段階と、各段階の費用の目安、向く契約形態を階段で示した図。
| 段階 | 向く契約形態 | 費用の幅 | 手元に残る物 |
|---|---|---|---|
| ① 診断 | 準委任 | ライト診断15万円・標準診断30万円(税別・当社) | どこにAIを入れるかの整理。本番には接続しない |
| ② PoC | 準委任 | 100〜500万円・1〜3ヶ月(2026年7月6日時点の当社調査) | 小さく動く試作と、本開発に進めるかの判断材料 |
| ③ 本開発 | 請負(仕様が固まった部分) | 内容で大きく変わるため個別に見積 | 本番で使える仕組みと納品物 |
| ④ 運用 | 準委任(保守・改善の支援) | 別契約。本番化・保守は診断とは別に決める(当社) | 動かし続ける体制と、直しの手順 |
PoCは100〜500万円、コンサル・要件定義は40〜200万円(1〜2ヶ月)です。どちらも当社が2026年7月6日時点で公開情報を調べた範囲の幅です。コンサル・要件定義は、上の4段階の表には入れていません。PoCの前に、作る内容を整理する仕事の相場の幅として読んでください。確定した価格や特定の会社の料金ではなく、公開情報から集めた参考値です。見積を受け取ったら、この幅の中にあるか、外れているなら理由が説明されているかを確かめる目安として使ってください。
当社のAI適用診断は、2週間・本番非接続(=実際の業務システムや顧客データにはつながない)・現場同席です。費用はライト診断15万円、標準診断30万円(いずれも税別)です。診断のあとは別契約になります。診断の費用の見方はAI適用診断の費用相場に書きました。
PoCが終わったあとの道は、大きく3つあります。
| PoC後の選択 | 向く場面 | 次にやること |
|---|---|---|
| 本開発へ進む | 判断材料で合格の基準を満たした | 範囲を決め、請負に切り替えるか検討する |
| 条件を変えてもう一度試す | 惜しいが、データや範囲に原因があった | 変える点を決めて、小さくやり直す |
| 見送る | 基準に届かず、直す見込みも薄い | 費用の上限で止めた判断を記録する |
本開発の期間は内容で大きく変わるので、要件が固まってから運用開始までの目安を見積の時点で出してもらいます。運用に入ってからの改善や、使いながらAIの追加学習を行う場合にどの契約で続けるかも、この時点で聞いておきます。
確かめ方: 候補の会社に「この案件を診断・PoC・本開発に分けるとしたら、どこで契約を切り替えますか」と聞いてください。「PoCの結果が悪かったとき、どこで止められますか」も一緒に聞きます。段階の切れ目を説明できるかで、進め方が具体的かを確かめます。PoCの費用の内訳はAI PoC 費用で書きました。
費用の見方|払い方の違いと、見積で確かめる点
費用は、契約形態ごとに「何に対して払うか」が違います。準委任は作業に払い、請負は完成した物に払います。見積書を見るときは、どちらの払い方になっているかを先に確認します。
当社の提供条件は、準委任または請負(30万円〜)の契約です。月20〜36万円の案件例があります。初期費用は0円、初回相談は無料(30分)です。これは当社の条件であり、他社の価格ではありません。発注側が見積で要求してよい条件に置き換えると、次の4点になります。
- 払い方の単位が見積に書かれていること(月額か、一括か、段階ごとか)
- 追加費用が出る条件が書かれていること(範囲外の依頼をしたとき、いくらになるか)
- 本番化や保守が別契約のとき、その見積が別に出ること
- 機材やクラウドの利用料、AIの利用料を誰が負担するかが書かれていること
月額で払う準委任は、稼働の量が見えやすい反面、終わりの基準を自分で持たないと、続けているだけの状態になります。請負は、完成の基準が書ければ総額が見えやすい反面、仕様を変えるたびに追加の見積がかかります。どちらが安いかではなく、自社の案件にどちらの不安が小さいかで決めてください。
確かめ方(見積書を受け取ったとき): 「この金額に含まれない物を3つ教えてください」と聞きます。答えの内容から、見積に含む範囲と含まない範囲を確かめます。見積の読み方の詳細はAI受託開発の費用相場|外注で失敗しない4つの確認点と、AI受託開発の費用相場【2026年】見積の読み方で書きました。内訳はそちらに任せ、この記事では書きません。
期間とやり取りの目安
期間は、段階と契約形態で決まります。診断は短く、PoCは1〜3ヶ月、本開発は内容次第です。やり取りの頻度は、依頼する前に決めておきます。
当社の標準は、期間が3〜4ヶ月で、基本はフルリモートです。稼働(=当社の担当者が案件に入る回数と時間)は週1〜2回・月20時間〜です。進捗は週1回、30〜60分の共有で確認します。AI適用診断は2週間です。ここまでは当社の条件です。PoCの1〜3ヶ月は別の調査の幅なので、当社の標準期間3〜4ヶ月を、PoCだけの期間と読まないでください。
発注側が期間について決めておくことは次のとおりです。
- いつまでに何が決まれば次の段階へ進めるか(判断の期限)
- 共有の頻度と、見る人(誰が週1回の共有に出るか)
- 期間が延びたとき、延長するか止めるか
確かめ方: 週1回の共有に、自社のどの役職の人が出られるかを先に決めます。出られる人がいないのに週1回の共有を約束すると、会社側は確認待ちで止まり、期間だけが延びます。
依頼前の準備チェックリスト
依頼前の準備は、頼みたい業務・段階・契約形態・完成の定義・運用の担当を、1枚のメモにすることです。メモがあれば、見積の相談を進めやすくなります。
| 準備項目 | 決める人 | 今日の確かめ方 |
|---|---|---|
| 頼みたい業務を1文で書く | 事業責任者 | 現場の担当者に読んでもらい、合っているか聞く |
| どの段階から頼むか | 経営者・事業責任者 | 診断・PoC・本開発のどこかに丸を付ける |
| 請負か準委任か | 経営者 | 完成の姿と合格の基準が書けるかで決める |
| 完成の定義(確かめ方) | 現場の担当者 | 自社の人が自分で確かめられる基準にする |
| 納品後の運用を誰が持つか | 経営者・情報システム担当 | 運用する人の名前を1人書く |
メモを書き終えるまでの順番は、業務→段階→契約形態→完成の定義→運用の5つ。
図の内容: 依頼前のメモを、業務・段階・契約形態・完成の定義・運用の5つの順番で書く流れ図。
そのまま使える依頼文のテンプレートを置きます。候補の会社に同じ文面を送ると、答えの違いで比べられます。
件名: AI開発の受託についてのご相談(見積前の確認)
お世話になっております。◯◯(会社名)の△△です。
次の内容で、受託開発のご相談をしたく連絡しました。
1. 頼みたい業務: (例)問い合わせメールの一次分類を、担当者の手作業からAIに置き換えたい
2. 頼みたい段階: (診断/PoC/本開発のどこから)
3. 希望する契約形態: (請負/準委任/相談したい)
4. 完成の定義(案): (何がどうなったら完成とするか。自社の人が確かめる方法も)
5. 納品後の運用: (自社で持つ/貴社に依頼したい)
次の点を教えてください。
- この案件の場合、診断・PoC・本開発のどこで契約を切り替えるか
- 見積に含まれない物(範囲外になる依頼の例)
- 週1回の進捗共有に、貴社側で誰が出るか
返信は◯月◯日までにお願いします。確かめ方: 返信の中身を並べて、「完成の定義」への答えを比べます。自社の案を直してくれる会社と、一般論しか返さない会社では、その後のやり取りの質が変わります。
業種ごとの読み替え
契約形態の選び方は業種で変わりませんが、「完成の定義」の書き方は業種で変わります。自社の業務に合わせた書き方に読み替えてください。数字は自社の業務で決める物なので、ここには例の形だけを置きます。
- 製造業: 検査や見積の補助なら、「判定を人が確かめた結果と一致する割合」を基準にします。基準の値は自社の許容できる誤りの量で決めます
- 建設・不動産: 日報や物件資料の作成なら、「担当者が手直しなしで使える文書の割合」を見ます。手直しの量を測る方法を先に決めます
- 税理士・社労士などの士業: 書類の下準備なら、「確認する人が見直す箇所が減ったか」で見ます。最終確認は人が行う前提にします
- 小売・EC: 問い合わせの分類や商品説明なら、「担当者が訂正した件数の推移」を基準にします
どの業種でも共通するのは、基準を確かめる人が自社の中にいることです。確かめる人がいない基準は、納品の日に判断できません。
業種別の活用の考え方は、中小製造業のAI活用マップや建設業のAI活用にまとめています。
確かめ方: 完成の基準を決めたら、過去の実際のデータを使って、自社の人が手でやってみます。人が手でも迷う基準は、AIの結果を確かめるときも迷います。
受託でつまずきやすい場面と、先に打つ手
受託でつまずきやすいのは、完成の基準が曖昧なまま始めることと、納品後の担当が決まっていないことです。どちらも契約の前に決めれば避けやすくなります。
- 「動いたら完成」で始めてしまう: 納品の時に、思っていた物と違うことが分かります。完成の基準を契約書に書いてもらいます
- 準委任のまま進み続ける: 作業が積み上がり、いつ終わるか見えなくなります。段階ごとに終わりの条件を置き、次へ進むか止めるかを決めます
- 運用の担当が空白: 納品後に誰も直せなくなります。引き継ぎの作業が見積に含まれているかを確かめ、無ければ入れてもらいます
AI活用がうまくいかなかった後の立て直しはAIを試したが使い物にならなかった原因は3つで書いています。外注と内製を混ぜる形はAIエージェント外注|内製との比較5基準が参考になります。
確かめ方: 契約書の案に、完成の基準・段階の切り替えの条件・運用の引き継ぎが書かれているかを確かめてください。1つでも抜けていれば、そこを書面にしてから進めます。
受託を今すぐ頼まなくていい会社と、この記事に含まれないこと
受託より先にやることが残っている会社は、受託を急がなくて構いません。当社は、次に当てはまる会社には別の手を先に勧める方針です。
- 変えたい業務がまだ決まっていない: 先に業務の棚卸しか診断です(AI 業務 棚卸し)
- 社員がAIを使えるようになることが目的: 受託でなく研修の方が合います(AI研修会社の比較・選び方)
- 作った後、自社で運用し直したい: 内製化の設計が先です(AI内製化とは?)
- 小さな業務なら、既存のAI機能を使えば足りる: 作る前に、既にある機能で試します
この記事には、特定の受託会社のランキングや推薦、個別の見積の判定、契約書の条文の法的な解釈は含まれません。扱わない内容の行き先は次のとおりです。
- 受託会社の探し方・選び方 → AI受託開発会社の選び方
- 見積の内訳の読み方 → AI受託開発の料金
- 準委任契約の著作権・中途解約 → AI準委任契約
- 任せる範囲・確認5点 → AI受託開発 外注
契約書の法的な判断は、弁護士など専門家に確認してください。当社も、すべての会社に合うわけではありません。
Summary in English
This article is a buyer’s guide for small and mid-sized companies in Japan that are considering outsourcing AI development. Its conclusion: before choosing a vendor, decide the contract type (fixed-deliverable “ukeoi” or effort-based “jun-inin”) and the stage at which you start. There are five decisions to make before requesting a quote: the goal and target task, the development stage, the contract type, the definition of “done,” and who runs the system afterwards. According to Japan’s Patent Office (IP BASE), a ukeoi contract makes the contractor legally responsible for completing the work, while a jun-inin contract makes the contractor responsible for performing the agreed work with due care but not for completion; a “result-completion” variant pays on delivery, yet what counts as complete may remain a separate question. The article proposes four stages: diagnosis, proof of concept (PoC), full development, and operation. Early stages suit jun-inin; the later build, once specifications are fixed, suits ukeoi. AI Expert’s own terms are jun-inin or ukeoi (from 300,000 yen), with example engagements of 200,000 to 360,000 yen per month, a standard period of three to four months, working once or twice a week (from 20 hours a month), and a weekly 30-to-60-minute progress review. Its AI diagnosis takes two weeks, runs without connecting to production systems, and costs 150,000 yen (light) or 300,000 yen (standard), excluding tax. In AI Expert’s survey as of July 6, 2026, public PoC prices ranged from 1 to 5 million yen over one to three months. The article also lists who should not outsource yet and offers a request template.
まとめ|段階ごとに契約を切り替える条件を決める
AI開発の受託では、診断・PoCで確かめた結果をもとに、仕様が固まった部分を請負へ切り替えるか検討します。その判断に必要な点を整理します。
- 発注前に決めるのは、目的と対象業務・開発の段階・契約形態・完成の定義・運用の担当の5つ
- 請負は完成に責任を負い、準委任は完成には責任を負わず、合意した仕事を丁寧に行う(特許庁IP BASE)。完成の姿と合格の基準が書けるなら請負、書けないなら準委任が向く
- 段階は診断・PoC・本開発・運用の4つ。前半は準委任、仕様が固まった本開発は請負が向く
- 当社のAI適用診断はライト15万円・標準30万円(税別)、PoCは2026年7月6日時点の調査で100〜500万円。本開発は個別に見積る
- 当社の提供条件は準委任または請負(30万円〜)で、月20〜36万円の案件例がある。期間の標準は3〜4ヶ月
- 業務が決まっていない、社員の習得が先、自社で運用し直したい場合は、受託の前にやることがある
段階ごとに契約を切り替える条件を決めておくと、見積の比較が「金額」だけでなく「何を約束する契約か」で行えます。ここまで決めてから会社に聞けば、答えの質で候補を絞れます。
次のアクションは、どれか1つで構いません。
- 今日: 頼みたい業務を1文で書き、請負か準委任かを表で決める
- 今週: 依頼文のテンプレートを埋めて、候補の会社に同じ文面で送る
- 今月: 返信を比べて、「診断かPoCの小さな契約から始めたい」という提案への答え方が良い会社を選ぶ
契約形態や段階の決め方で迷う点が残ったときは、自社の状況に合わせて一緒に整理することもできます。
次に読む
- 契約の中身と確認5点を知りたい → AI受託開発 外注|任せる範囲・契約形態・見積の確認5点
- 受託会社を探す段階に進む → AI受託 開発会社|探す場所3つと4タイプ・絞り込み基準5つ
- PoCの費用の内訳を知りたい → AI PoC 費用|内訳・5つの変動要因と抑える3つの方法
- 診断の費用から確認したい → AI適用診断の費用相場|15万〜30万円とPoC100万円の違い
更新履歴
- 2026-10-15: 初版公開。特許庁IP BASEの請負型・準委任型の定義、当社の契約形態と価格、診断からPoC・本開発・運用までの4段階の整理、2026年7月6日時点の相場の調査値を収録
- 次回更新予定: 2026年11月(IP BASEの記述と、当社の価格・契約形態を再確認します)
本記事は2026年10月15日時点の特許庁の公開資料と当社資料に基づきます(公開日: 2026年10月15日)。契約書の個別の条項や法的な判断は、弁護士などの専門家と、各社の契約書でご確認ください。
参考・出典
- 特許庁 IP BASE「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」 https://ipbase.go.jp/learn/point/ai/page05.php(参照日: 2026年10月15日)
- 当社資料: AI Expert事業ファクトシート(自社の契約形態・価格・期間。最終更新2026年6月12日)
- 当社調査: AI受託開発・PoCの公開相場の確認(2026年7月6日)
FAQよくある質問
- AI開発の受託とは、どこまでを任せることですか?
- 受託とは、成果物や作業を契約で決めて、外部の会社に任せる形です。任せる範囲は診断・試作(PoC)・本開発・運用の4段階のどこまでかで変わります。全部を一括で任せる必要はなく、段階ごとに契約を分けることもできます。
- AI開発の受託で、請負と準委任はどちらを選ぶべきですか?
- 完成させたいものと合格の基準を文章で書けるなら請負、書けないなら準委任が向きます。特許庁のIP BASEによると、請負は仕事の完成に法的な責任を負う契約で、準委任は完成そのものには責任を負わず、合意した仕事を善良な管理者の注意で行うことに対価が発生する契約です。AI開発は最初は完成の姿が決めにくいため、前半の段階は準委任、仕様が固まった後半は請負と、段階で分ける方法があります。
- AIコンサルと受託開発は何が違いますか?
- コンサルは、何をどう進めるかを整理し助言する仕事で、作る物の納品が目的ではありません。受託開発は、システムや仕組みを作って納める仕事です。ただし、会社によっては両方を同じ契約に含めるので、契約書で「助言までか、制作までか」を確かめます。
- AI開発の受託は、いきなり本開発から頼んでよいですか?
- 頼んでも構いませんが、対象業務と完成の基準が文章で書けている場合に限ります。書けていない状態で本開発に入ると、途中で仕様が変わって費用と期間が膨らみやすくなります。迷うときは、診断や小さな試作を先に挟んで、本開発の範囲を決めてから頼む方が安全です。
- AI開発の受託の費用は、段階ごとにどれくらいですか?
- 当社のAI適用診断は、ライト診断が15万円、標準診断が30万円(いずれも税別)です。PoC(=本番の前に小さく試す開発)は、当社が2026年7月6日時点で公開情報を調べた範囲で100〜500万円(1〜3ヶ月)、コンサル・要件定義は40〜200万円(1〜2ヶ月)でした。これは調べた範囲の相場で、確定した価格ではありません。本開発は内容で大きく変わるので、見積で確かめます。
- AI開発の受託を内製化支援と組み合わせることはできますか?
- できます。作る部分を受託に任せつつ、運用や小さな改善は自社で持てるように、作りながら使い方を引き継ぐ形です。契約の段階で「最終的に誰が運用するか」を決めておくと、納品後に自社で回せる状態になっているかを確かめやすくなります。
- PoCが終わったあとは、どう進めればよいですか?
- 道は3つです。合格の基準を満たしたなら本開発へ進み、惜しい結果ならデータや範囲を変えて小さくやり直し、基準に届かず見込みも薄いなら見送ります。どれを選ぶかはPoCの前に決めた合格の基準で判断します。基準を先に書いておくと、結果を見てから迷う場面が減ります。
- AI開発を受託に出す前に、何を準備すればよいですか?
- 頼みたい業務を1文で書き、今その業務を誰がどう行っているかを短くまとめます。加えて、どの段階から頼むか、請負か準委任か、完成の基準を何で確かめるか、納品後に誰が運用するかを決めておきます。この4点がメモに書けていれば、見積の相談を進めやすくなります。
- AI開発の受託が向かないのはどんな場合ですか?
- 対象業務がまだ決まっていない場合や、AIを使うルールが社内に無い場合、自社で小さく試せば足りる場合は、受託の前にやることがあります。業務が決まっていないなら棚卸しや診断、社員にまず使い方を身につけさせたいなら研修が先です。受託は、作る物と合格の基準が見えてから使う方が費用を無駄にしません。


