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AI受託開発 外注|任せる範囲・契約形態・見積の確認5点【2026年10月】

AI受託開発を外注する発注側向けに、任せる範囲、請負・準委任の違い、見積の読み方、契約前の確認5点を、2026年10月7日時点の特許庁の解説と当社の相場調査でまとめました。

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AI Expert 編集部運営 Orga合同会社

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AI受託開発 外注|任せる範囲・契約形態・見積の確認5点【2026年10月】

結論: AI受託開発の外注は、丸ごと任せる話ではなく、任せる範囲・契約形態・検収の3点を発注前に決める作業です。この記事では、外注すると決めた発注側が、何を任せ何を手元に残すか、請負と準委任のどちらで頼むか、見積をどう読むか、契約前に何を確かめるかを順に書きます。

この記事の要点

  • 契約形態は請負型と準委任型の2系統で、完成の責任の所在が違う。請負は「完成したものに対して払う契約」、準委任は「作業してもらうことに対して払う契約」。特許庁の解説では、請負は仕事の完成に法的な責任を負い、準委任は負わない
  • 任せる範囲は工程ごとに表で線を引く。データと業務の判断は、発注側が手元に残す
  • 見積は工程別に分けて読む。当社の調査では、コンサル・要件定義が40〜200万円、PoC(=小さく試作して使えるか確かめる工程)が100〜500万円で、調査元により幅がある
  • 「何をもって完成とするか」「検収(=納品物を受け取って合格にするか決める手続き)の基準」「保守を誰が持つか」は、契約前に文章にしてもらう
  • 確かめられない項目が残るなら、先に診断(ライト診断15万円/標準診断30万円・税別)で条件を整理する手もある

この記事は、AIの開発を社外に出すと決めた中小企業の経営者や推進担当の方に向けて書いています。発注先(受託会社)に何を任せ、どう契約し、何を手元に残すかを決めようとしている場面です。内製にするか外注にするかはすでに決めた方向けの記事なので、その比較はAIエージェント外注|内製との比較5基準とハイブリッド設計に譲ります。発注先の会社そのものの選び方と、費用の総額も別の記事に分けています。

この記事で言う「手元に残す」は、検収や運用の窓口のように「自社が担当する」場合と、元データのように「自社が保管する」場合の2つを指します。

今日やることは1つです。下の「任せる範囲と手元に残すもの」の表を紙かスプレッドシートに写し、各工程の「任せる・共同・手元に残す」を自社の案件に当てはめて書き込んでください。決められなかった工程に印を付けます。印の数が、発注先との打ち合わせで先に決めるべきことの数です。

契約前の確認は、「契約前に確認する5点」と、契約書の条項4つ(再委託・秘密保持・契約不適合責任・著作権)が中心です。「発注先に送る質問のひな形」の9問は、契約形態と見積の範囲、この5点、3つの条項(再委託・秘密保持・契約不適合責任)をまとめて聞く文面です。そのまま使えます。

外注と決めたあとに確かめる|作ったあとに回せる体制

外注と決めたあとは、「作れるか」ではなく「作ったあとに回せるか」を確かめます。AIは作る作業と運用する作業が別物で、外注しても運用の責任は発注側に残るからです。

考えておく点は次の4つです。

  • 作れることと、使い続けられることは別。外注先が作った物を、納品後に誰が直すのかを先に決める
  • 運用(=日々使うこと)と保守(=壊れたときや更新のときに直すこと)は別に決める。保守を誰が持つかは、見積の段階で聞く
  • 自社の中核になる業務の判断は、外に出さず手元に残す
  • 最初は外注でも、いずれ自社で引き継いで回せるように、手順書や設定の資料を受け取る前提にする

「作れる」と「回せる」の差は、納品した後に出ます。たとえば、使っているソフトの安全対策の更新(=不具合や弱点を直す修正)を誰もしない、動かなくなったときに見る人がいない、といった形です。作った会社が忙しくなれば、直す人がいなくなります。外注でも、納品後に誰が見るかを決めていなければ、同じことが起きます。

最初の試作(PoC)は外注に向いています。人を集める前に、使えるかどうかを短く確かめられるからです。使えると分かったあとは、運用を社内で覚えて自社で引き継ぐか、保守を契約で固定するかを早めに決めます。外注を長く続けると、業務の知識が外にたまり、乗り換えにくくなることがあります。そのため、手順書や設定の資料を受け取る前提にしておきます。

また、外注に出さず、既製のサービスを買うほうが早い領域もあります。決済、メール配信、会計のように、多くの会社が同じ使い方をする業務です。自社の独自ルールが少ないので、作るより設定して使うほうが、費用も保守の手間も小さく済みます。

内製との比較はAIエージェント外注の記事に譲り、ここでは既製のサービスで足りる場合と、受託開発が向く場合だけを表にします。

手段向く場面発注側に残る仕事確かめ方
既製のサービスを使う決済・メール配信・会計など、多くの会社が同じ使い方をする業務自社の業務に合わせた設定と運用試用で自社のデータを通せるか
受託開発(外注)自社に合わせた作りが必要で、作る人手が足りない業務の説明・データの用意・検収と運用完成の基準を文章にできるか

確かめ方は、「この業務を既製のサービスで試して、足りなかった点を3つ書けるか」です。書けるなら、受託開発に頼む理由があります。書けないなら、受託開発の見積を取る前に、既製のサービスを試す手もあります。

外注の契約形態|請負と準委任(履行割合型・成果完成型)

AI開発の外注は請負型と準委任型の2系統で、準委任はさらに2つに分かれます。違いは「完成の責任を誰が負うか」です。特許庁の IP BASE は「AIソフトウェア(学習済みモデル)の開発業務を外注する契約形式は一般的には請負型と準委任型がある」と説明しています(参照日: 2026年10月7日)。学習済みモデルとは、AIの頭脳にあたる部分のことです。

特許庁の解説をもとに、3つを表にします。

契約形態完成の責任報酬が払われる条件向く場面
請負型発注先が仕事の完成を約束し、履行(=約束を実行すること)に法的な責任を負う仕事の完成完成の基準を数値や条件で決められる本開発
準委任型(履行割合型)注意を尽くして作業するが、仕事の完成に法的な責任は負わない委任された作業をした分(=作業量に応じて払う)何ができるかを探りながら進める試作・検証
準委任型(成果完成型)同じく、仕事の完成に法的な責任は負わない成果を引き渡したとき(=成果物と引き換えに払う)成果物は決まっているが、精度の保証までは難しい場面

「完成の基準を数値や条件で決める」とは、たとえば「見本の問い合わせ100件のうち90件に正しく答える」のように、誰が確かめても同じ合否になる形にすることです。

特許庁は、AIの精度が学習用データの量と質に左右されると説明しています。初めて見る場面での当たり外れも、保証しにくいとのことです。そのため、発注先が請負に難色を示すことがあります。一方で同じ解説は、「AIだから性能保証は難しい」という固定観念にとらわれず、開発対象に合わせて条件を交渉することが大切だとも書いています。難色を示されたら、すぐ準委任に切り替える前に、完成の基準を絞った条件で交渉できないかを聞いてみてください。

外注全体の中で契約形態をどこに置くかを、図で整理します。

完成の基準を決められるかで、請負と準委任が分かれる

契約形態の判断ツリー最初の問い「完成の基準を数値や条件で決められるか」に、はいなら請負型、いいえなら準委任型へ進む図。準委任型は、稼働に応じて払う履行割合型と、成果の引き渡しで払う成果完成型に分かれる。契約形態の判断ツリー完成の基準を数値や条件で決められるかはいいいえ請負型完成の責任を受託側が負う準委任型完成の責任は負わない履行割合型履行で報酬成果完成型引き渡しで報酬

図の内容: 完成の基準を数値や条件で決められれば請負型、決められなければ準委任型で、準委任型には履行割合型と成果完成型がある。

確かめ方は、契約書の案を受け取る前に、発注先へ「この案件は請負と準委任のどちらで考えていますか。理由も教えてください」と聞くことです。理由が「AIだから」だけなら、完成の基準を絞った条件の相談ができるかも続けて聞きます。フェーズ別の選び方はAI導入の準委任と請負に詳しく書いています。

任せる範囲と手元に残すもの|工程別の線引き

任せる範囲は、工程ごとに「任せる・共同・手元に残す」を決めます。データと業務の判断は、発注側にしか持てないので手元に残します。

工程は、要件整理、データ準備、試作、本開発、検収、運用の6つに分けると線を引きやすくなります。

工程線引き発注側が出すもの確かめ方
要件整理共同現在の業務の流れと、困っている点業務を説明できる担当者を1人出せるか
データ準備共同(元データは自社が保管)学習や検証に使う資料・記録データの置き場所と持ち出しの可否を決めたか
試作任せる試作を見て、使えるかを判断する時間試作を見る日程を先に押さえたか
本開発任せる仕様変更の判断と、質問への返答返答の期限を決めたか
検収手元に残す(自社が担当)合格・不合格を決める基準と担当者基準が文章になっているか
運用手元に残す(自社が担当。保守は別に決める)日々の使い方と、直す依頼の窓口保守を誰が持つか契約に書いたか

「任せる」と書いた工程でも、発注側の時間はゼロになりません。試作を見る時間や質問への返答がなければ、外注先は先へ進めません。外注すると決めた時点で、発注側が出す時間を先に確保してください。

6つの工程のうち、検収と運用は手元に残す

工程の流れと責任の持ち場要件整理、データ準備、試作、本開発、検収、運用の6工程を左から右に並べた図。要件整理とデータ準備は共同、試作と本開発は任せる、検収と運用は手元に残す。工程ごとの持ち場要件整理共同データ準備共同試作任せる本開発任せる検収手元に残す運用手元に残す共同の工程は、元データと業務の判断を発注側が持つ任せる工程でも、試作を見る時間と質問への返答は発注側が出す運用の保守だけは、別に誰が持つか契約で決める

図の内容: 6工程のうち、要件整理とデータ準備は共同、試作と本開発は任せる、検収と運用は手元に残す。

見積の読み方|工程別に分けて比べる

見積は、総額ではなく「どの工程が含まれ、何が別契約か」で比べます。同じ金額でも、含まれる範囲が違えば比べられません。

相場は調査元によって幅があります。当社が2026年7月6日に公開記事を調べた結果では、受託開発の費用は次のとおりでした(確度は中。目安として見る数字です)。

工程目安見積で聞くこと
コンサル・要件定義40〜200万円成果物は文書だけか、試作も含むか
PoC100〜500万円何をもって「できた」とするか
AIモデル本開発月額100〜250万円×人月(1人が1か月働く量)何人月を想定しているか
総額小〜中規模で500〜1,500万円保守・運用は含まれるか

この表の数字は、あくまで調べた公開記事の幅です。自社の案件の見積は、必ず発注先に出してもらってください。総額の詳しい組み方はAI受託開発の費用相場にまとめました。

見積を並べるとき、聞く項目と、答えの良し悪しを分けると読みやすくなります。

聞く項目良い答え要確認の答え
含まれる工程要件整理・試作・本開発・検収のどこまでかを工程名で書く「開発一式」としか書かない
別契約になるもの保守・運用・追加の改修は別と書く何が別かを聞いても答えが曖昧
見積の前提用意するデータや担当者の条件を書く前提を書かず金額だけが出る
変更が出たとき仕様変更の扱いと費用の決め方を示す変更時の扱いを聞くと「そのとき相談」

見積を取る前に、現状の整理から始める手もあります。当社のAI適用診断は、2週間・本番非接続(=実際の業務システムにはつながない)で、ライト診断が15万円、標準診断が30万円(いずれも税別)です。本番化(=本番で使い始めること)と保守は別契約です。診断の中身はAI適用診断とはに書きました。確かめ方は、見積を受け取ったら、上の表の「聞く項目」を1つずつ発注先へ送り、書面で答えをもらうことです。

契約前に確認する5点|完成の定義・検収・権利・保守・中途解約

契約前に確かめるのは、完成の定義、検収の基準、成果物の権利、保守の持ち主、中途解約の5点です。この5つが文章になっていれば、あとで揉める場所を先に減らせます。

① 完成の定義

特許庁の解説は、成果完成型の準委任を選ぶ場合でも、何をもって「完成」とするかは別途問題になりうると注意しています。確かめ方は、「どの状態になったら完成と呼ぶか」を発注先に書いてもらうことです。その基準どおりに自社の見本データで試し、合格か不合格かが分かるかを見ます。

② 検収の基準

検収は、納品物を受け取って合格にする手続きです。基準を作る担当者、確認にかける日数、不合格のときの直し方を決めます。確かめ方は、「検収の期限と、不合格のときの手順」を契約書の案から探すことです。

③ 成果物の権利

作った物や学習済みのモデルの扱いは、契約で決まります。基準は、自社のデータで作った物を、契約が終わったあとも自社が使い続けられることです。当社の記事では、準委任契約の著作権と中途解約の注意をAI準委任契約にまとめています。確かめ方は、「自社のデータで作ったモデルを、契約終了後も自社が使い続けられるか」を発注先に聞くことです。

④ 保守の持ち主

納品後の直しを誰が受けるかは、開発の契約とは別に決めます。保守の考え方はAIエージェント保守に書きました。確かめ方は、「保守は同じ会社が受けるのか、手順書を受け取って自社で回すのか」を聞き、費用を分けて見積に載せてもらうことです。

⑤ 中途解約

途中でやめるときの費用と、それまでの成果物の扱いを決めます。確かめ方は、「途中でやめた場合、何が手元に残るか」を発注先に書いてもらうことです。

5点のほかに、契約書の案で見ておく条項が4つあります。条文の書き方は案件ごとに違うので、最終の文言は弁護士など専門家に確認してください。ここでは、発注側が「あるか、ないか」を探すための目安です。

条項何を決めているか確かめ方
再委託受託側が、別の会社や個人に作業を回してよいか回してよい範囲と、事前に知らせる決まりがあるか
秘密保持渡した資料やデータを、目的外に使わず、外に出さない約束契約が終わったあとも続くか、データを返す・消す手順があるか
契約不適合責任納品物が約束と違っていたときの、直しや減額の扱い請負の場合、直しを求められる期間が書かれているか
著作権の帰属作ったプログラムや資料の権利が誰に残るか自社データで作った物を、自社が使い続けられるか(③と同じ問い)

準委任の場合は、完成の責任を負わない分、契約不適合責任の扱いが請負と同じ形になるとは限りません。契約形態ごとにこの行の答えが変わるため、発注先には4つとも書面で聞き、準委任ならどう扱うかも答えてもらいます。

契約後の時間の流れを、図で確認します。

検収から引き継ぎまでを、契約前に時系列で決めておく

検収から引き継ぎまでの時系列納品、検収、合格、引き継ぎ、保守の5段階を左から右に並べた図。検収で基準に満たなければ、直しの依頼に戻る。納品のあとの流れ① 納品② 検収③ 合格④ 引き継ぎ⑤ 保守(別に決める)基準に満たなければ、直しの依頼へ戻る① 完成の定義と ② 検収の基準は、契約前に文章にする④ 手順書や設定の資料を受け取る⑤ 保守は同じ会社か自社かを決め、費用を分けて見積に載せる

図の内容: 納品、検収、合格、引き継ぎ、保守の順に進み、検収で基準に満たなければ直しの依頼に戻る。

外注が向かないケースと、よくある失敗の読み替え

外注が向かないのは、業務の説明を出せる人がいない、データが用意できない、完成の基準を決められない、の3つのどれかのときです。外注先は作業を進められても、業務の判断は代われません。

  • 業務の説明を出せる人がいない: 要件整理が進まず、試作が自社の業務に合わない物になりやすい。確かめ方は、現場の担当者を1人、週に決まった時間だけ出せるかを決めること
  • データが用意できない: AIは、学習や検証に使うデータの量と質に精度が依存するとされています。確かめ方は、使いたいデータの置き場所と、社外に出してよいかを先に調べること
  • 完成の基準を決められない: 請負にも準委任にも決められず、検収で揉めやすい。確かめ方は、「うまくいったと言える状態」を一文で書いてみること
  • 保守の人手を確保できない: 納品後に誰も直せない物が残る。確かめ方は、納品後に直す担当者を決めておくこと

よくある失敗は、次の3つに読み替えると避けやすくなります。「一式」で頼んで範囲が広がる失敗は、工程別に見積を出してもらえば防げます。「できたはずが使えない」パターンは、完成と検収の基準を文章にすることで防げます。「納品したら誰も触れない」パターンは、引き継ぎと保守を契約に入れることで防げます。導入が使われなかった原因の整理はAIを試したが使い物にならなかった原因は3つに書きました。

発注側の社内体制|外注しても社内で決める人は3人いる

外注しても、社内で決める役割は最低3つ必要です。業務の説明をする人、データの持ち主、合格を決める人です。1人が兼ねても構いませんが、役割は分けて書いておきます。

  • 業務の説明をする人: 今の仕事の流れと、困っている点を話せる現場の担当者です。要件整理と試作の確認に付き合います
  • データの持ち主: 学習や検証に使う資料や記録の置き場所を知り、社外に出してよいかを判断できる人です。情報システムの担当者や総務の責任者が持つ場合もあります。担当者がいない会社では、経営者が持ちます
  • 合格を決める人: 検収で「合格」と言える立場の人です。現場の担当者だけに任せると、予算の判断が必要なときに止まります

たとえば、経営者が合格を決め、現場の責任者が業務の説明をし、情報管理の担当者がデータを預かる形があります。人数の少ない会社では、経営者が3つを兼ねる場合もあります。その場合は、経営者が週に何時間使えるかを、先に発注先へ伝えてください。伝えておかないと、発注先は返答にかかる時間を見込んだ日程を組めません。

確かめ方は、3つの役割に名前を入れた表を作り、発注先との最初の打ち合わせで見せることです。名前が入らない役割があれば、外注より前に、その役割を誰が持つか決める必要があります。

外注開始から検収までの段取り|打ち合わせで決めること

外注の段取りは、契約の前、契約の直後、試作の前後、検収の前の4つの節目で決めることが違います。それぞれの節目で、発注側が確かめることを並べます。

節目決めること発注側が出すもの確かめ方
契約の前契約形態・完成の定義・検収の基準・保守の持ち主完成の基準の案と、社内の3つの役割の名前契約書の案に、5点が文章で入っているか
契約の直後連絡の窓口・打ち合わせの頻度・データの受け渡し方法窓口の担当者とデータの置き場所受け渡しの方法が、情報管理の決まりに合うか
試作の前後試作の評価の仕方・仕様を変える条件試作を見る日程と、使えるかの感想評価の基準が、完成の定義につながっているか
検収の前検収の日程・不合格のときの直し方・引き継ぎの資料検収の担当者と確認の時間手順書や設定の資料が、納品物に含まれるか

最初の打ち合わせで、発注先に聞くことを3つ決めておくと、準備が進みます。1つ目は「この案件で、先に決めておいてほしいことは何か」。2つ目は「過去の案件で、発注側の準備不足で遅れた点は何か」。3つ目は「この案件で、準委任か請負かを決める条件は何か」です。答えを書面でもらい、自社の体制の表と照らし合わせます。

仕様の変更が出たときの扱いは、契約の前に決めておくと揉めにくくなります。変更の依頼を誰が出し、費用と期間がどう変わるかを、見積の段階で聞いておいてください。「そのとき相談」とだけ書かれているなら、変更のたびに交渉が始まります。確かめ方は、「試作を見たあとで、機能を1つ足したい場合の手順と費用の決め方」を発注先に書いてもらうことです。

発注先に送る質問のひな形

発注先への質問は、1通にまとめて送ると、答えの具体性を比べやすくなります。次の文面は、そのまま使えるひな形です。自社の案件に合わせて、[ ]の中を書き換えてください。

質問テンプレ(メール文面)
お世話になっております。[会社名]の[氏名]です。
[業務名]のAI開発についてお見積をお願いする前に、次の9点を書面でご回答ください。

1. 契約形態は請負と準委任のどちらをご提案されますか。理由もお知らせください。
2. 「完成」とみなす状態を、どのような条件でお示しいただけますか。
3. 検収の期限、担当者、不合格のときの手順をお知らせください。
4. 見積に含まれる工程と、別契約になるもの(保守・追加の改修など)をお知らせください。
5. 当社のデータで作った成果物について、当社が使い続けられる条件をお知らせください。
6. 納品後の保守は、貴社が受ける場合と、当社が資料を受け取って回す場合の両方の費用をお知らせください。
7. 途中でやめる場合の費用と、そのときに当社の手元に残る物をお知らせください。
8. 作業を別の会社に回す(再委託)場合の条件と、秘密保持の範囲・期間をお知らせください。
9. 納品物が約束と違っていた場合の直しの扱いと、その期間をお知らせください。

1〜7は、早見表と同じ項目です。8と9は、5点の外にある条項(再委託・秘密保持・契約不適合責任)の確認です。同じ質問を複数の発注先に送れば、答えを横に並べて比べられます。返事が速いことより、答えが具体的であることを見てください。「ご相談しながら決めます」と返ってくる項目は、契約の前にまだ決まっていない項目です。その項目は追加で聞いてください。

確かめ方は、返ってきた答えに、数字・期限・担当者のどれかが入っているかを見ることです。入っていない答えは、もう一度聞き直します。聞き直しても具体的にならない項目は、契約書の案で文章にしてもらうか、その項目を契約の対象から外す相談をします。

業種の読み替え|自社の業務に当てはめるとき

業種が違っても、任せる範囲の考え方は変わりません。変わるのは、手元に残すデータの種類と、検収の基準の置き方です。

たとえば、次の3つの例に読み替えられます。

  • 問い合わせ対応を自動化する場合: 手元に残すのは、過去の問い合わせの記録と、回答してよい範囲の判断です。検収の基準は、決めた範囲の問い合わせに、決めた形式で答えられるか、で書けます
  • 書類の作成や整理を自動化する場合: 手元に残すのは、元の書類と、最終の確認です。検収の基準は、用意した見本の書類で、合意した項目が正しく出るか、で書けます
  • 社内の資料を探せるようにする場合: 手元に残すのは、資料の置き場所の整理と、見せてよい範囲の判断です。検収の基準は、決めた質問に、決めた資料が見つかるか、で書けます

どの場合も、完成の基準は「用意した見本で、合意した条件を満たすこと」の形にすると、請負でも準委任でも検収に使えます。AIは、学習用データの量と質に精度が依存するため、見本のデータを発注側が用意し、基準もその見本で決めるのが現実的です。

確かめ方は、自社の業務を1つ選び、上の3つの例のどれに近いかを書き出すことです。近い例の「手元に残すもの」と「検収の基準」を、そのまま自社の言葉に直して、任せる範囲の表に書き込めます。

早見表|外注前の確認項目と良い答え/要確認の答え

契約前の確認項目は、次の1表で見直せます。要確認の答えが2つ以上あれば、契約の前にもう一度発注先へ質問を送ってください。

確認項目良い答え要確認の答え
契約形態請負か準委任か、理由つきで答える「どちらでも」で理由がない
完成の定義数値や条件で書く「納品できたら完成」だけ
検収の基準期限・担当者・不合格時の手順がある基準が書かれていない
見積の範囲工程名で書き、別契約も書く「開発一式」
成果物の権利自社データで作った物の扱いを書く質問すると「後で」
保守持ち主と費用が分かれて書いてある納品後の話が出てこない
中途解約途中でやめた場合の成果物の扱いがある解約の条件が書かれていない
再委託・秘密保持回してよい範囲と、データを返す・消す手順がある再委託の有無を聞くと「問題ありません」だけ
契約不適合責任約束と違ったときの直しの扱いと期間がある納品後の直しの話が出てこない

今すぐ外注の契約を詰めなくていい会社と、この記事に含まれないこと

次の3つのどれかに当てはまる会社は、今すぐ契約の中身を詰めなくて構いません。

  • 外注の範囲を決める前の段階で、何を自動化するかがまだ決まっていない
  • 完成の基準や、使うデータが決まっておらず、先に現状を整理したい(診断やPoCを先に挟むほうが安全です)
  • 発注先の候補がまだ1社もない

この記事に含まれないことは、次の4つです。

会社が決まった後で、契約の前に確かめることを書いたのがこの記事です。会社選びの段階にいる方は、AI受託開発会社の選び方から読んでください。

Summary in English

Outsourcing AI custom development is not about handing everything to a vendor. It is about deciding three things before signing: the scope you delegate, the contract type, and the acceptance criteria.

According to the Japan Patent Office’s IP BASE (checked on October 7, 2026), outsourced AI development is generally contracted in one of two forms. A contract for work (ukeoi) makes the contractor legally responsible for completing the work. A quasi-mandate contract (jun-inin) is carried out under a duty of due care, without legal responsibility for completion, and pays either for work performed or for delivery of results. IP BASE also notes that what counts as “complete” can still be disputed.

Split the work into six steps: requirements, data preparation, prototype, development, acceptance and operation. Keep business judgment, data and acceptance with the buyer. In an AI Expert survey of public articles on July 6, 2026 (medium confidence), consulting and requirements cost 400,000 to 2,000,000 yen, a PoC cost 1,000,000 to 5,000,000 yen, and totals for small to mid-size projects were 5,000,000 to 15,000,000 yen. The range varies by source.

Before contracting, confirm five points: the definition of completion, acceptance criteria, rights to deliverables, who maintains the system, and early termination. If these cannot be settled, start with a diagnosis. AI Expert’s two-week, non-production diagnosis costs 150,000 yen (light) or 300,000 yen (standard), excluding tax.

まとめ|外注は「範囲・契約・検収」を先に決めた会社が失敗しにくい

外注は、作業を任せることではなく、決める項目を先に文章にすることから始まります。この記事の結論を、5つに絞ります。

  • 契約形態は請負型と準委任型の2系統で、完成の責任の所在が違う。完成の基準を決められるかで選ぶ
  • 任せる範囲は工程別に表にする。データ・業務の判断・検収・運用の窓口は手元に残す
  • 見積は工程別に読み、別契約になるもの(保守など)を先に聞く。相場は調査元で幅がある
  • 契約前に、完成の定義・検収の基準・成果物の権利・保守・中途解約の5点を文章にする
  • 業務の説明・データ・完成の基準のどれかが決まらないなら、外注の前に診断やPoCで整理する

次のアクションは、3つのうちどれか1つで構いません。

  • 今日: 「任せる範囲の表」に、自社の案件の「任せる・共同・手元に残す」を書き込む
  • 今週: 発注先の候補に、「質問のひな形」の項目を送り、書面で答えをもらう
  • 今月: 完成の定義と検収の基準を文章にして、契約書の案と照らし合わせる

任せる範囲の線引きや、請負と準委任のどちらで頼むかで迷ったときは、無料相談で案件の状況をお聞かせください。

次に読む

更新履歴

  • 2026-10-07: 初版公開。特許庁 IP BASE の契約方式の解説と、当社の相場調査を反映
  • 次回更新予定: 2026年11月(特許庁ページの内容と、当社の価格・診断の条件の再確認)

本記事は2026年10月7日時点の特許庁 IP BASE の解説と、当社の事業情報・相場調査に基づきます(公開日: 2026年10月7日)。契約書の文言や権利の扱いは、弁護士など専門家に確認してください。

参考・出典

  • 特許庁「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」(IP BASE) https://ipbase.go.jp/learn/point/ai/page05.php(参照日: 2026年10月7日)
  • 当社調査: 受託開発の段階別費用の相場(公開記事の調査、2026年7月6日)

FAQよくある質問

AI受託開発を外注するとき、何を任せて何を手元に残すべきですか?
試作や本開発の作業は任せてよく、業務の判断とデータは手元に残します。何を自動化するか、どこまでを合格とするか、学習や検証に使うデータを用意することは、発注側にしか決められないからです。要件整理とデータ準備は共同、検収と運用の窓口は発注側が持つ、という線を契約前に表にしておくと、後で揉めにくくなります。
AI受託開発の外注は、請負と準委任のどちらで頼むのがよいですか?
完成の基準を数値や条件で決められるなら請負、決められないなら準委任が向きます。特許庁の解説では、請負は仕事の完成に法的な責任を負い、準委任は完成に法的な責任を負わない契約です。AIは精度の保証が難しい面があるため、最初の試作は準委任、基準が固まった後の本開発は請負、と分ける頼み方もあります。
成果完成型の準委任とは何ですか?
準委任の一種で、成果の引き渡しと引き換えに報酬の支払義務が生じる型です。特許庁の解説は、準委任を「履行割合型」と「成果完成型」に分けており、履行割合型は委任された事務を履行した場合に報酬が発生します。成果完成型でも受任者は仕事の完成に法的な責任を負わないため、何をもって成果とするかを契約書に書く必要があります。
AI受託開発の外注費用は、どの工程でいくらかかりますか?
当社が2026年7月6日に調べた公開記事では、コンサル・要件定義が40〜200万円、PoC(=小さく試作して可否を確かめる工程)が100〜500万円、AIモデルの本開発が月額100〜250万円×人月(=1人が1か月働く量)、総額は小〜中規模で500〜1,500万円でした。確度は中で、調査元によって幅があります。見積では、どの工程までが含まれるかを先に確かめてください。
AI開発の外注で「完成」はどう決めればよいですか?
「何ができたら検収に進むか」を、数値や条件で契約前に書いておきます。特許庁の解説は、成果完成型の準委任を選ぶ場合でも、何をもって「完成」とするかは別途問題になりうると注意しています。たとえば「用意した検証用データで、合意した基準を満たすこと」のように、誰が見ても同じ判定になる形にします。
AI受託開発を外注すると、納品後の保守は誰が持ちますか?
契約に書かなければ決まりません。納品物の運用や修正を誰が受けるかは、開発の契約とは別の話になることが多く、当社のAI適用診断でも本番化と保守は別契約です。外注の前に、保守を同じ会社が受けるのか、手順書を受け取って自社で回すのかを決め、見積に保守費用を分けて載せてもらってください。
AI開発の外注が向かないのは、どんな場合ですか?
業務の内容を説明できる担当者がいない、学習や検証に使うデータが用意できない、完成の基準を決められない、の3つのどれかに当てはまるときです。外注先は作業を進められても、業務の判断は代われません。この3つが残っているなら、契約の前に診断やPoCで条件を整理するほうが先です。
AI受託開発の契約書で、再委託・秘密保持・契約不適合責任・著作権はどこを見ればよいですか?
再委託は回してよい範囲と事前連絡の決まり、秘密保持は契約終了後も続くかとデータを返す・消す手順、契約不適合責任は約束と違ったときの直しの扱いと期間、著作権は自社データで作った物を自社が使い続けられるか、を見ます。契約形態で扱いが変わる項目もあるため、最終の文言は弁護士など専門家に確認してください。
AI受託開発は、試作だけ外注して、あとは社内で運用してもよいですか?
できます。最初の試作(PoC)は外注して使えるかを短く確かめ、使えると分かった後に自社で引き継いで回すか、保守を契約で決めるかを選ぶ形です。引き継ぐ場合は、手順書や設定の資料を納品物に入れてもらうことが条件になります。納品後に誰も直せない状態を避けるため、見積の段階で引き継ぎの資料と保守を分けて聞いてください。
外注の前に診断やPoCを挟む必要はありますか?
完成の基準やデータの状態が決まっていないなら、挟むほうが安全です。当社のAI適用診断は2週間・本番非接続(=実際の業務システムにはつながない)で、ライト診断が15万円、標準診断が30万円(いずれも税別)です。診断の後に本番化へ進むかは別契約なので、診断の結果を見てから外注の範囲と契約形態を決められます。

Writerこの記事を書いた人

AI Expert 編集部運営: Orga合同会社

非エンジニアの運営者が、自社の営業(リスト作成・文面・送付・資料・日報)をAIで毎日動かしながら書いています。中小企業のAI適用診断・実務題材型AI研修・プロAI人材のマッチングを提供。

この記事の検証方法: 数字・価格・仕様は一次情報(公式ドキュメント・公式料金ページ)か自社の実測だけを使い、出典に参照日を付けています。公開前に機械検証(verify_post)と、書き手とは別のAIによる事実照合を通しています。

この記事の検証環境: 契約形態の定義と「完成」の扱いは、特許庁 IP BASE の解説ページ(AI開発を受託する際の契約方式の選び方)を2026年10月7日に開いて原文と照合しました。自社の契約形態・価格・診断の条件は当社の事業ファクトシート、相場は2026年7月6日の当社調査に基づきます。公開前に、書き手とは別のAIが本文を出典と1つずつ照らし合わせました。