
結論: AI研修のカリキュラムは、科目の一覧ではなく「誰が・どの段階で・何をできるようにするか」を決めた設計表です。この記事では、対象者3層×学習3段階の設計表の組み方、段階ごとの科目と到達目標、時間配分の考え方、形式の割り振り、研修会社に渡す依頼シートを書きます。
この記事の要点
- IPA(情報処理推進機構)のデジタルスキル標準は、全てのビジネスパーソン向けと、DXを推進する人材向けの二本立て。後者は6つの類型に分かれる。研修の対象者を一括りにしない根拠になる
- カリキュラムは「全社員・管理職と企画・運用と開発」の3層×「基礎・業務適用・定着・運用」の3段階の表で組む。科目名の羅列では、自社に合うかを判断できない
- 助成金を使うなら、訓練時間数10時間以上・職務に直接関連・形式の条件がカリキュラムに直接効く。後から足すと組み直しになる
- 10時間は助成金を使う場合の下限。基礎・業務適用・振り返りへの割り振りは当社の想定値で、実測ではない
この記事は、自社の社員向けにAI研修を行いたい中小企業の経営者、人事、AI活用の推進担当に向けて書いています。AI研修をやること自体は決まっている前提で、「誰に、どの順で、何時間で、どこまでを教えるか」の骨組みを決める場面を想定しています。研修会社の選び方はAI研修会社の比較・選び方に、見積の比べ方はAI研修の相見積もりに書きました。この記事は、その前に決めておく「中身の設計」だけを扱います。
今日やることは1つです。下の「対象者別の設計表」の「対象者」と「到達目標」の2列を、自社の3層ぶん埋めてください。科目や時間は、その後で決められます。
AI研修のカリキュラムとは|科目の一覧ではなく「誰が・何を・どこまで」の設計図
AI研修のカリキュラムとは、受講者ごとに「何を学び、終わったあと何ができるか」を決めた計画のことです。コース名の一覧は商品の目録であり、カリキュラムとは別の物です。
| 見るもの | カタログ型(コース名の羅列) | 設計表型(対象者×段階) |
|---|---|---|
| 並べ方 | 講座名・期間・価格が並ぶ | 対象者の行と学習段階の列で整理する |
| 受講者の決め方 | 興味のある人が選ぶ | 業務の役割から、誰がどの段階まで進むかを決める |
| ゴール | 「受講した」で終わる | 「研修後に一人で何ができるか」を1文で書く |
| 向く場面 | 個人が学びたい講座を探す | 会社として、誰にどこまで教えるかを決める |
確かめ方は簡単です。手元の研修案内を見て、「この研修を終えた経理担当は、翌週に何ができるようになるか」と聞いてみてください。答えが1文で返らなければ、まだ設計表になっていません。
組む前に決める3つ|対象者・業務題材・到達目標
組む前に決めるのは、対象者・業務題材・到達目標の3つです。この3つが決まれば、科目は後から選べます。
① 対象者
誰が受けるかを、役割で書きます。「全社員」のままでは粗いので、次の3つに分けて数えてください。
- 全社員
- 管理職・企画担当
- 運用・開発の担当(=情報システムの担当や、AIツールの設定・試作を任される人)
確かめ方は、人事台帳か部署一覧を開き、3つの層にそれぞれ何人いるかを書き出すことです。0人の層があれば、その層の設計は後回しにして構いません。運用・開発の担当がいない会社は、全社員と管理職・企画担当の2層から始めて大丈夫です。
② 業務題材
研修で練習する、自社の具体的な業務です。「文書作成全般」ではなく「見積書の送付メールの下書き」のように、1つの作業まで絞ります。題材を選ぶ前の業務の棚卸しはAI 業務 棚卸しに書いたので、ここでは棚卸表から1つ選ぶだけにします。
③ 到達目標
「研修後に、一人で何ができるか」を1文で書きます。例は「週1回の定例会議の議事録を、AIの下書きから30分以内に仕上げられる」です。30分は書き方の見本なので、自社の今の所要時間を測って決めてください。「AIへの理解を深める」では、終わったか判断できません。確かめ方は、その1文を研修後に受講者本人へ見せ、「今ならできる」と答えてもらえるかを聞くことです。
対象者別の設計表|全社員・管理職と企画・運用と開発の3層×3段階
3層に分ける根拠は、IPAのデジタルスキル標準にあります。この標準は、層ごとに目指す姿が違うことを前提にしているからです。
IPAは同標準を二本立てで紹介しています。1つ目は、ビジネスパーソンがDXに関するリテラシーを身につけ変革に向けて行動できるようになるための「DXリテラシー標準(DSS-L)」、2つ目は、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルを定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」です(IPA「デジタルスキル標準」)。DSS-Lは「全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準」で、構成は「Why」「What」「How」と「マインド・スタンス」です。DSS-Pは、DX推進に必要な主な役割を6つの「類型」に分けています。ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、データマネジメント、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの6つです。略称は覚えなくて構いません。以降は「全社員向けの標準」「推進人材向けの標準」と呼びます。
IPAの標準は全社員向けと推進人材向けの二本立てで、後者は6類型です。この記事の3層は、IPAの区分とは別に、当社が中小企業の研修向けに組みやすく整理した分け方です。IPAが3層を定めているわけではありません。
次の2つの表は、3層×3段階の9マスを「学ぶこと」と「到達目標」に分けたものです。3段階は、基礎、業務適用、定着・運用です。
| 対象者 | 基礎段階で学ぶこと | 業務適用段階で学ぶこと | 定着・運用段階で学ぶこと |
|---|---|---|---|
| 全社員 | AIの仕組みの見取り図、使ってよい情報と禁止情報、プロンプト(=AIへの指示文)の基本 | 自分の業務の文書で下書きを作って直す | 出力の確かめ方、社内の相談窓口の使い方 |
| 管理職・企画担当 | 全社員の基礎に加え、何をAIに任せ何を人が見るかの考え方 | 棚卸表から対象業務を選び、効果の測り方を決める | 試行の進行管理、止める基準の決め方 |
| 運用・開発の担当 | 扱うデータの区分とセキュリティの基本 | 自社業務の題材で試作する | 運用と保守、エージェントなどの開発 |
| 対象者 | 基礎段階の到達目標 | 業務適用段階の到達目標 | 定着・運用段階の到達目標 |
|---|---|---|---|
| 全社員 | 禁止情報を入れずに、AIへの指示を書ける | 定型作業を1つ、AIの下書きから始められる | 出力を確かめ、迷ったら窓口に相談できる |
| 管理職・企画担当 | 部下の「使ってよいか」の質問に答えられる | 対象業務を1つ選び、確認方法を1文で書ける | 試行の続行か中止かを、根拠つきで決められる |
| 運用・開発の担当 | 扱うデータの区分を説明できる | 1業務の試作を動かし、記録を残せる | 作った試作を、運用手順書をつけて現場が使える状態にし、担当者へ渡せる |
設計表は3層×3段階の9マス。全員が全段階へ進む必要はない
図の内容: 対象者3層×学習3段階の9マスに、各マスの到達目標の要点を置いた設計表。
まず、9マスのうち自社で今年埋めるマスに印を付けてください。全部を埋める必要はありません。全社員の基礎と業務適用、管理職の業務適用の3マスだけで始める会社も、設計としては成り立ちます。
① 経営層向けの研修はどこに入れるか
経営層は、管理職・企画担当の行に入れて設計します。別の行を足すより、到達目標を変えるほうが簡単だからです。経営層の到達目標は、使い方の習熟より「どの業務に投資し、どの時点で止めるかを決められる」に置きます。基礎段階は短く済ませ、業務適用段階で棚卸表を見ながら対象業務を選ぶ時間に当てます。
② 専門領域の分け方|6類型を研修の科目に置き換える
運用・開発の行は、さらに専門領域で分けると科目を決めやすくなります。専門の担当がいない会社は、この節を読み飛ばして構いません。分け方の元は、IPAのDX推進スキル標準の6類型です。次の表は、6類型を研修の科目に置き換えた当社の例で、IPAが科目を定めているわけではありません。
| IPAの類型 | 運用・開発の担当に置く科目の例 |
|---|---|
| ビジネスアーキテクト | 対象業務の選定、効果の測り方、進行管理 |
| デザイナー | 利用者の使い方の観察、画面や手順の見直し |
| データサイエンティスト | AIシステムの設計・実装・運用の基本 |
| データマネジメント | データの区分、保管と廃棄のルール |
| ソフトウェアエンジニア | 試作の実装、保守、記録の残し方 |
| サイバーセキュリティ | 入力してよい情報の管理、事故時の連絡手順 |
6類型の担当者を全部そろえる必要はありません。自社に実際にいる役割の行だけを使います。該当する役割がいなければ、運用・開発の行は後回しにして構いません。
③ 人材像シートのひな形|誰がどこまで進むかを1枚で持つ
9マスを、社員ごとの計画に落とすと運用しやすくなります。次の1枚を人数ぶん作ります。人数が少なければ、1枚の表に全員をまとめて構いません。
| 氏名・層 | 進む段階(基礎/業務適用/定着・運用ごとに) | 今年の到達目標(1文) |
|---|---|---|
| (社員名)全社員/管理職・企画/運用・開発 | 済・予定・不要 | 研修後に一人で何ができるか |
「予定」が付いたマスのすべてに、到達目標の1文があるかを見てください。目標が空なら、そのマスの科目はまだ決められません。
④ 資格との対応|試験を使うなら基礎段階の確認に置く
資格は、基礎段階の確認方法の1つとして使えます。社員全員に受けさせる必要はありません。IPAのDSS-L概要ページには、全社員向けの標準に有用な情報処理技術者試験が載っています。ITパスポート試験は「特に有用」、情報セキュリティマネジメント試験は「有用」です。ほかの資格は、本記事では対応を確認していないので扱いません。
資格を取ることと、自社の業務で使えることは別です。試験は基礎段階の確認に置き、業務適用段階の到達目標は、自社の題材で作った下書きで確かめてください。
⑤ 規模や状況ごとの組み方の例
会社の状態によって、先に埋めるマスは変わります。次は当社の想定で、人数ではなく状態で選んでください。
| 状況 | 先に埋めるマス | 後回しにするマス |
|---|---|---|
| AIの担当が兼務で、専門の部署も情報システムの担当もいない | 全社員の基礎、全社員の業務適用 | 運用・開発の担当の3マス |
| 部署が複数あり、管理職が試行を進める | 全社員の基礎、管理職の業務適用 | 運用・開発の担当の定着・運用 |
| 情報システムの担当がいる | 運用・開発の担当の基礎(データの区分)、全社員の基礎 | 管理職の定着・運用 |
段階別の中身|3段階の科目と到達目標
段階は、基礎で共通の言葉を持ち、業務適用で自分の仕事に使い、定着・運用で続ける形に分けます。 この順を飛ばすと、基礎だけで終わるか、いきなり作り込みに入って現場がついてこないかのどちらかになります。
① 基礎段階
科目は3つです。AIの仕組みの見取り図、使ってよい情報と禁止情報(例: 顧客の個人情報、未公開の取引条件)、プロンプトの基本です。IPAのDSS-L概要ページには、生成AIに関する記載を追加した改訂が載っており、標準の側でも生成AIを前提にした整理が進んでいます。確認は、禁止情報の例をいくつか挙げてもらい、その場でAIへの指示を1つ書いてもらいます。
② 業務適用段階
自社の業務の題材で、AIの下書きを作って直します。題材の入れ方は後の「実務題材の入れ方」で書きます。終わったと判断する確認方法は、受講者が自分の業務で作った下書きと、直した後の版を並べて見ることです。直した箇所を説明できれば、出力を鵜呑みにしていないと分かります。
③ 定着・運用段階
研修で覚えたことを、現場で続けて使うための段階です。全社員は出力の確かめ方と相談窓口の使い方を学びます。運用・開発の担当は、データの運用、試作の保守、エージェント(=AIが手順を自分で進める仕組み)の開発まで進みます。エージェント研修の中身はAIエージェント研修の選び方に任せ、ここでは運用・開発の担当の科目の1つとして置くだけにします。確認は、運用手順書を第三者が読んで、同じ操作を再現できるか試します。
時間配分の考え方|10時間以上の条件と、想定の割り振り例
時間は、助成金を使うなら10時間以上が下限です。使わない場合は、自社の到達目標が達成できる時間から逆算して決めます。
厚生労働省の詳細版資料(令和8年8月3日版)は、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の要件に「訓練時間数が10時間以上の訓練であること」を挙げています。概要リーフレット(令和8年4月8日版)には、OFF-JT(=業務の現場から離れて受ける訓練)であることも要件として書かれています。この助成金は令和4年から8年度の期間限定で、令和8年度末以降の継続は資料から確認できません。来年度以降も使えるかは未確認なので、使う予定があるなら早めに社労士へ相談してください。
下の割り振りは、全社員向けの基礎・業務適用・振り返りを10時間とした当社の作業感覚に基づく想定値で、実測ではありません。定着・運用段階は別枠で考えます。実際の時間は、事業者や対象者の人数、扱う題材で変わります。
| 区分 | 時間(想定) | 中身 |
|---|---|---|
| 基礎 | 3時間 | 仕組みの見取り図、使ってよい情報と禁止情報、プロンプトの基本 |
| 業務適用 | 5時間 | 自社の1業務の題材で、下書きを作って直す演習と講師の講評 |
| 振り返り | 2時間 | 研修後の使い方の宣言、到達目標の確認、社内ルールの見直し点の洗い出し |
組み方の順番は4ステップです。対象者を決め、到達目標を1文で書き、段階に科目を割り、最後に時間と形式を決めます。時間を先に決めると、科目の数に合わせて中身が削られるので、順番は変えないでください。
組む順番は、対象者→到達目標→科目→時間と形式。時間は最後に決める
図の内容: 対象者、到達目標、科目、時間と形式の順に組む4ステップの流れ。
研修会社の費用は、この記事では扱いません。費用の幅はAI研修の費用相場で確かめてください。「1人の講師が受講者の手元を見られるのは何人までか」を研修会社に聞き、業務適用の演習がその人数で回るかを見てください。
実務題材の入れ方|教材の例題でなく、自社の1業務で作る
業務適用段階では、教材の例題ではなく、自社の1業務で作ります。例題は答えが決まっているので、自分の仕事に置き換える練習にはなりにくいからです。
題材の選び方は3条件です。
| 条件 | 見るもの | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 頻度が高い | 月に何回その作業をするか | 作業の記録か、担当者への聞き取りで回数を出す |
| 入力が文書で揃う | AIに渡す材料が、メモや書類の形で既にあるか | 材料を研修の前に集められるかを、担当者に確認する |
| 失敗しても被害が小さい | 出力が社外へ出る前に、人が確認できるか | 誰が、どの時点で確認するかを1文で書く |
3条件に当てはまるのは、議事録の下書き、問い合わせ返信の下書き、社内向け報告書の要約などです。研修を発注する側が「自社の題材で演習できるか」を条件にしてよい、と覚えておいてください。当社のAI研修のオプションにも、実務題材型(助成金活用の相談可)があります。当社の支援の種類はAI導入支援に書きました。
研修を、いつか自社だけで回せる状態へつなげたい場合は、卒業を前提に科目を並べる考え方が役に立ちます。この考え方はAI内製化とはに書きました。研修後に自社で続けるなら、業務適用段階の題材を担当者が自分で選べるようになることが、科目の到達目標になります。
形式の使い分け|科目をどの形式に割り振るか
科目は、基礎を動画やeラーニング、業務適用を集合か同時双方向のオンラインに割り振るのが基本です。助成金を使う場合は、形式の条件にも注意が必要です。
| 形式 | 向く科目 | 助成金上の扱い |
|---|---|---|
| 集合(通学制=会場に集まる) | 業務適用の演習、講評、振り返り | 事業内訓練で助成の対象となる形式 |
| 同時双方向のオンライン(=講師と受講者がその場でやり取りする) | 業務適用の演習、遠隔拠点との合同研修 | 事業内訓練で「同時双方向型の通信訓練」として対象となる形式 |
| eラーニング・通信制・定額制サービス | 基礎の知識部分、復習 | 事業内訓練では対象にならない(厚生労働省の詳細版資料) |
厚生労働省の詳細版資料(令和8年8月3日版)は、事業内訓練について「通学制・同時双方向型の通信訓練に限り助成します。eラーニング・通信制・定額制サービスによる訓練は対象となりません。」と書いています。概要リーフレット(令和8年4月8日版)には、eラーニング、通信制、定額制サービスは「経費助成のみです。賃金助成は対象外です。」という記載があります。2つの資料で書き方が異なるので、どの訓練の区分で申請するかによって扱いが変わります。その区分は、研修会社か社労士と一緒に確かめれば足ります。設計表を作る段階では、区分を自分で決める必要はありません。最終判断は労働局か社労士で確認してください。
助成金を使うなら、事業内訓練では集合か同時双方向に寄せて設計する
図の内容: 事業内訓練では集合と同時双方向のオンラインが助成の対象で、eラーニング等は対象にならないという分岐。
eラーニングの所要時間は、会社ごとに違うので、この記事では目安の数字を置きません。研修会社に「1本あたりの再生時間と、受講に必要な合計時間」を聞き、設計表の基礎段階に入る時間と合うかを見てください。助成金を使う場合は、その時間が10時間の数に入るかも、労働局か社労士に確かめてください。
助成金の申請手順は、この記事には書きません。対象条件と申請5ステップはAI研修 助成金の対象条件と申請5ステップで確かめてください。この記事で押さえるのは、カリキュラムの設計に効く3点、つまり10時間以上・職務に直接関連・形式、です。職務に直接関連する訓練であることは、厚生労働省の詳細版資料の要件に挙がっています。確かめ方は、設計表の各マスの到達目標が、対象者の担当業務の言葉で書かれているかを見ることです。
研修会社に渡す依頼シート|カリキュラムの条件を5項目で伝える
研修会社には、5項目を埋めた依頼シートを渡します。会社ごとに提案の前提が揃い、見積や提案を同じ条件で比べやすくなります。決められない項目は、空欄にせず「相談したい」と書いて構いません。
【AI研修の依頼シート】
1. 対象者: (例)営業部12名と管理職3名。全社員向けの基礎と、営業部の業務適用
2. 業務題材: (例)見積書の送付メールの下書き。月に約30回発生する作業
3. 到達目標: (例)研修後に、見積送付メールの下書きをAIで作り、自分で直して送れる
4. 時間と形式: (例)合計10時間以上。演習は集合か同時双方向のオンライン
5. 確認方法: (例)研修の最後に、受講者が自分の題材で作った下書きと直した版を講師が確認する
お願い: 上の5項目に対して、貴社の提案で変えたい点と、その理由を教えてください。例の数字は書き方の見本で、自社の値に置き換えてください。会社選びと見積の並べ方はAI研修の相見積もりの質問テンプレが使えます。確かめ方は、返ってきた提案書の中に、5項目のうち書き換えられた箇所があるかを見ることです。書き換えがあれば理由を聞き、納得できなければ元の条件で見積を求めてください。
早見表|良いカリキュラムと弱いカリキュラム
| 項目 | 良い答え | NGの答え |
|---|---|---|
| 対象者 | 役割で3層に分けて人数を書いている | 「全社員」とだけ書いている |
| 到達目標 | 「研修後に一人で何ができるか」を1文で書いている | 「AIへの理解を深める」で終わっている |
| 業務題材 | 自社の1つの作業まで絞っている | 教材の例題だけで演習している |
| 時間 | 段階ごとに時間を割り、前提を説明している | 総時間だけで、内訳がない |
| 形式 | 科目ごとに集合・オンライン・eラーニングを割り振っている | 全科目が同じ形式 |
| 助成金 | 10時間以上・職務関連・形式を設計に入れている | 申請の直前に条件を調べ直す |
| 確認方法 | 受講者の成果物で確かめる | 満足度アンケートだけ |
今すぐカリキュラムを組まなくていい会社と、この記事に含まれないこと
次の会社は、先に決めることがあります。
- 生成AIの社内利用ルール(=AIに入れてよい情報を決めた1枚の文書)がまだ無い会社は、ルールの整備が先です。基礎段階の「禁止情報」を教える土台になります。→ AI ガイドライン
- 業務の棚卸しが終わっていない会社は、題材を選べないので棚卸しが先です。→ AI 業務 棚卸し
- 全社員がすでに基礎を終えている会社は、業務適用段階から組めば足ります。→ ② 業務適用段階
- 研修をやるかどうか、内製か外部かがまだ決まっていない会社は、先にその判断を。→ AI導入の進め方
この記事に含まれないことは次の4つです。
- 研修会社の比較と選び方 → AI研修会社の比較・選び方
- 助成金の対象条件と申請手順 → AI研修 助成金
- 研修費用の相場 → AI研修の費用相場
- 講師の選び方 → AI研修 講師
Summary in English
An AI training curriculum for a small or midsize company is not a list of course names. It is a design table that fixes who learns what, at which stage, and what each person can do alone afterwards. This article builds that table in three steps. First, decide the audience, one work task for practice, and a one-sentence goal. Second, split learners into three layers (all employees, managers and planners, operators and developers) and three stages (basics, work application, operation and development), giving nine cells.
The three layers are our own reading of the Digital Skill Standards published by IPA (Information-technology Promotion Agency, Japan). IPA splits the standards into the DX Literacy Standard (DSS-L) for all business people and the DX Promotion Skill Standard (DSS-P), which defines six roles. IPA does not define the three layers itself.
For time, the Ministry of Health, Labour and Welfare states that training under the human resources development subsidy (reskilling support course) must be at least 10 hours, directly related to the employee’s duties, and off-the-job. For in-house training, the detailed guide of August 3, 2026 says only classroom or simultaneous two-way online training is subsidized, while e-learning, correspondence and flat-rate services are not. A 10-hour split of 3 hours of basics, 5 hours of work application and 2 hours of review is our own assumption, not a measured value. The subsidy is limited to Reiwa 4 to 8 fiscal years, and continuation after that is not confirmed. Confirm eligibility with the labour bureau or a labour consultant before applying.
まとめ|科目を並べる前に、誰がどこまでできるようにするかを決める
- IPAのデジタルスキル標準は全社員向けと推進人材向けの二本立てで、後者は6類型。対象者を一括りにしない根拠になる
- カリキュラムは対象者3層×学習3段階の9マスの設計表で組む。コース名の羅列では判断できない
- 組む順番は、対象者→到達目標→科目→時間と形式。時間は最後に決める
- 助成金を使うなら、10時間以上・職務に直接関連・形式(事業内訓練はeラーニング等が対象外)を設計に入れる
- 業務適用は教材の例題でなく、自社の1業務の題材で行う
- 研修会社には、対象者・業務題材・到達目標・時間と形式・確認方法の5項目を渡す
次のアクションは、3つのうちどれか1つで構いません。
- 今日: 「対象者別の設計表」の「対象者」と「到達目標」の2列を、自社の3層ぶん埋める
- 今週: 棚卸表から、3条件に合う業務題材を1つ決める
- 今月: 依頼シートを埋め、研修会社の候補に同じ文面で送る
設計表の埋め方や、研修・試作・実装のどれから進めるかで迷うときは、当社の初回相談(無料・30分)で一緒に整理できます。
次に読む
- 研修会社の違いを知りたい → AI研修会社の比較・選び方【2026】eラーニング型と伴走型の違い
- 候補を並べて比べたい → AI研修の相見積もり|3社を比べる10項目と質問テンプレ5本
- 助成金の対象条件を確かめたい → AI研修 助成金|対象条件と申請5ステップ・向かない4ケース
- 業務題材を選びたい → AI 業務 棚卸し|5列の棚卸表と業務を選ぶ3ステップ
更新履歴
- 2026-10-20: 初版公開。IPAデジタルスキル標準(ver2.0公開に伴う更新は2026年4月16日)と厚生労働省の令和8年8月3日版資料を反映
- 次回更新予定: 2027年1月(助成金コースの令和8年度末までの期間限定と、IPA標準の改訂を再確認)
本記事は2026年10月20日時点のIPAと厚生労働省の公開資料に基づきます(公開日: 2026年10月20日)。IPAのデジタルスキル標準ver2.0の個別の改訂内容は、概要ページに記載がなく確認できていません。助成金の対象可否は、労働局または社労士で確認してください。
参考・出典
- 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準」 https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/index.html(参照日: 2026年10月20日)
- IPA「DXリテラシー標準(DSS-L)概要」 https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/about_dss-l.html(参照日: 2026年10月20日)
- IPA「DX推進スキル標準(DSS-P)概要」 https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/about_dss-p.html(参照日: 2026年10月20日)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf(参照日: 2026年10月20日)
- 厚生労働省 概要リーフレット 令和8年4月8日版 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001687619.pdf(参照日: 2026年10月20日)
FAQよくある質問
- AI研修のカリキュラムは何から決めればよいですか?
- 科目より先に、対象者・業務題材・到達目標の3つを決めます。誰が受けるのか、どの業務の題材で練習するのか、研修のあとに一人で何ができるようになってほしいのか、の3つです。この3つが決まると、必要な科目と順番は自然に絞れます。逆に科目の一覧から選ぶと、受講者の仕事とずれた内容になりやすいです。
- AI研修のカリキュラムは対象者別にどう分けますか?
- 全社員、管理職と企画担当、運用と開発の担当の3層に分けるのが組みやすい形です。IPA(情報処理推進機構)のデジタルスキル標準は、全てのビジネスパーソン向けのDXリテラシー標準(DSS-L)と、DXを推進する人材向けのDX推進スキル標準(DSS-P)の二本立てで、後者は6つの類型に分かれています。3層はこの考え方を中小企業向けに整理した当社の分け方で、IPAが定めた区分ではありません。
- 生成AI研修のカリキュラムには何を入れればよいですか?
- 基礎、業務適用、定着・運用の3段階に分けて入れます。基礎は仕組みの見取り図、使ってよい情報と禁止情報、プロンプトの基本です。業務適用は自社の業務の題材で、AIの下書きを作って直す練習です。定着・運用は、出力の確かめ方や相談窓口の使い方で、担当者は運用や保守まで進みます。全員が3段階すべてを受ける必要はありません。
- 初心者向けのAI研修は、どんな内容と順番が向いていますか?
- 基礎段階から始め、早めに自分の業務の題材へ移る順番が向いています。最初は、AIが何をするものか、入れてはいけない情報は何か、指示の書き方の基本を押さえます。そのあと、自分の定型作業を1つ選び、AIの下書きを作って直す練習に進みます。知識だけで終えると、研修後に使われないまま終わりやすいです。
- eラーニングと集合研修は、カリキュラムの中でどう使い分けますか?
- 知識を伝える基礎の部分はeラーニング、自社業務の題材で作って直す部分は集合か同時双方向のオンラインに振る分け方があります。助成金を使う場合は注意が必要です。厚生労働省の詳細版資料は、事業内訓練について通学制・同時双方向型の通信訓練に限り助成し、eラーニング・通信制・定額制サービスによる訓練は対象にならないとしています。最終判断は労働局か社労士に確かめてください。
- 無料の生成AI研修や動画だけで足りますか?
- 基礎段階は足りる場合があります。仕組みの見取り図や基本的な指示の書き方は、無料の教材や動画でも学べます。ただ、自社の業務の題材で作って直す練習と、使ってよい情報の社内ルールは、動画では身につきません。基礎は無料教材、業務適用は自社の題材で、と分けて考えると判断しやすくなります。
- 助成金を使うとき、カリキュラムに条件はありますか?
- あります。厚生労働省の詳細版資料(令和8年8月3日版)は、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の要件に、対象労働者の職務に直接関連する訓練であること、訓練時間数が10時間以上であることを挙げています。計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ出します。個別の科目が対象になるかは労働局の審査で決まるので、申請の可否は労働局か社労士に確かめてください。
- AI研修のカリキュラムは何時間が目安ですか?
- 助成金を使うなら、厚生労働省の詳細版資料(令和8年8月3日版)が挙げる10時間以上が下限です。使わない場合は、自社の到達目標が達成できる時間から逆算して決めます。10時間を基礎3時間・業務適用5時間・振り返り2時間に割る案は、当社の想定値で実測ではありません。
- 資格取得はAI研修のカリキュラムに入れるべきですか?
- 必須ではありません。基礎段階の確認方法の1つとして使えます。IPAのDSS-L概要ページは、ITパスポート試験を「特に有用」、情報セキュリティマネジメント試験を「有用」としています。ただ、資格で確かめられるのは基礎の知識までです。業務で使えるかは、自社の題材で作った下書きで確かめてください。
- 企業向けAI研修を研修会社に頼むとき、何を先に伝えればよいですか?
- 対象者、業務題材、到達目標、時間と形式、確認方法の5点です。誰が受けるのか、どの業務で練習するのか、研修後に一人で何ができるようになってほしいのか、何時間をどの形式で受けるのか、できるようになったことをどう確かめるのかを書いて渡します。この5点が揃うと、会社ごとの提案を同じ条件で比べやすくなります。


