
結論: AI導入のロードマップは、計画書ではなく6つの段階を、期間・担当・次に進む条件つきで並べた1枚の表です。この記事では、6段階の道筋、段階ごとの完了条件、最初の診断2週間での切り分け、止める判断の早見表、補助金を計画に入れるときの注意を書きます。
この記事の要点
- 道筋は「目的と1業務→診断→試作→ルールと環境→本番化→定着と見直し」の6段階。環境は「AIを使う場所と、入れる情報の範囲」、本番化は「試作を実際の業務で使い始めること」を指す。段階ごとに、期間・担当・次に進む条件を表に書く
- 最初の診断(=現場で業務を見て、次の進み方を決める調査)は2週間。診断のあとに選ぶ進み方(出口)は、今はやらない・研修・試作・実装の4つで、本番開発へ費用をかける前に切り分ける
- 各段階に「進む/戻る/止める」の条件を先に書く。止める基準がない道筋は、PoC(=小さく試作して確かめること)が終わらない原因になる
- 公開情報の当社調査では、要件定義が40〜200万円(1〜2ヶ月)、PoCが100〜500万円(1〜3ヶ月)が目安。他社記事を集めた参考値で、保証ではない
- 補助金は交付決定前に発注・契約・支払いをすると交付されない。締切は2026年10月30日(金)17:00、交付決定は12月10日(木)(予定)。補助対象にしたい契約は、交付決定のあとに発注できるか先に確かめる
この記事は、AIを業務に入れる方針は決めたものの、進める順番と止める場所を決められない方に向けた内容です。中小企業の経営者や推進担当が、社内に出す導入計画の骨組みを作る場面を想定しています。「AIを入れる」と決めたところまでは済んでいる前提です。
1業務を回す6つの手順の詳細はAI 導入 進め方|担当・成果物・止める基準で見る6つの手順に、複数年の計画書に書く項目はAIロードマップ策定の進め方に書きました。この記事は、その手前にある「時間順の道筋と、止める基準を1枚にする」ところに絞ります。
今日やることは1つです。「段階別の期間・担当・完了条件の表」で、いま自社がいる段階の完了条件を1行で書いてください。まだ何も始めていなければ①の段階として、目的を1文で書きます。
AI導入のロードマップとは|計画書でなく「進む条件つきの道筋」
AI導入のロードマップとは、導入を時間順の段階に分け、段階ごとに期間・担当・次に進む条件を並べたものです。目標や理想像を書く文書ではなく、「ここまで確かめたら次へ進む」「満たせなければ戻る、または止める」を決めておく表です。
AIロードマップ策定の進め方は、複数年の期間軸や体制、予算配分を計画書に書く方法です。この記事はそれより小さく、対象業務の道筋を6段階の表にして、すぐ社内で回せる形にします。
公的な資料も確認しておきます。総務省の「AI事業者ガイドライン」の掲載ページは、本編や確認用の資料を探す入口です。最新版と自社に関係する項目を確認してください。段階④のルール作りでこれらを見に行く、という位置づけで使います。
ここでいう表は、社内の相談で更新できる作業用の資料です。最初から先の段階を細かく決め切る必要はありません。対象業務が定まっていない段階なら、まず業務を選ぶ担当と、選ぶために見る材料を記入します。試作が済んでいるなら、実際の結果を確認して本番化の条件へ進みます。
完成日だけを決めても、途中で判断が止まる理由は分かりません。たとえば「問い合わせ対応にAIを入れる」と決めても、回答案を作るだけか、顧客へ送信までするかは決まっていません。ロードマップには、どこまで任せるかと、人が確認する場所を書き添えてください。対象が変われば、必要な準備も変わるためです。
確かめ方: 自社の資料に「期間」「担当」「次に進む条件」の3つが段階ごとに書いてあるかを見てください。空欄があれば、次の判断に必要な情報として埋めてください。
6段階の全体図|どこから始めて、どこで止めるか
道筋は、①目的と1業務を決める、②診断(2週間)、③試作、④ルールと環境、⑤本番化、⑥定着と見直し、の6段階です。各段階の出口で「進む」「戻る」「止める」のどれかを選びます。
6段階は上段から下段へ進み、各段階の出口で進む・戻る・止めるを選びます
図の内容: 6段階が上段3つ・下段3つの順に並び、各段階の出口で進む・戻る・止めるを選ぶことを示す図。
確かめ方: 自社の計画を6つの箱に当てはめて、箱が足りない段階(たとえば④ルールと環境)がないかを確認してください。抜けている段階は、着手前に担当と進め方を決めておきます。
段階別の期間・担当・完了条件の表
期間は、公的な標準値が確認できていないため、診断の2週間以外は「自社で期日を決める」が基本です。担当と次に進む条件は、次の表のように先に書きます。社内に出すときは、この表をコピーして自社の言葉で埋めてください。
| 段階 | 期間の考え方 | 担当 | 次に進む条件 |
|---|---|---|---|
| ① 目的と1業務 | 自社で期日を決める | 経営者と推進担当 | 目的が1文、対象が1業務に絞られた状態 |
| ② 診断 | 当社の診断は2週間 | 推進担当と現場、診断の担当者 | 出口4択(今はやらない/研修/試作/実装)のどれかが決まった状態 |
| ③ 試作 | 当社調査の参考値はPoC(試作)で1〜3ヶ月。自社で上限を決める | 推進担当と現場の確認者 | 「動いたか」「誰が確認するか」「止める条件」の3点が埋まった状態 |
| ④ ルールと環境 | 自社で期日を決める | 推進担当(必要なら管理部門) | 入力してよい情報と、確認の担当が文書になった状態 |
| ⑤ 本番化 | つなぐ範囲と使う条件(人数・時間帯など)で個別に決める。診断とは別契約 | 推進担当と開発側 | 保守の担当と、止まったときの連絡先が決まった状態 |
| ⑥ 定着と見直し | 見直しの周期を自社で決める | 現場のリーダー | 使われているかを測る方法と、見直しの日付が決まった状態 |
当社調査の目安は、公開されている相場記事(2026年6月28日更新分ほか)をもとにした数字です。他社の公開記事を集めた参考値でばらつきが大きく、納期や金額を保証するものではありません。
表を社内用に直すときは、期間だけでなく着手できる条件も書き足します。たとえば試作担当の予定が空いていても、使う資料の持ち出しが認められていなければ始められません。社内の確認待ちを開発の遅れと混同しないよう、待っている判断と、その判断をする役割を残してください。
全体の期間と費用の目安は、次の表のとおりです。診断以外は、公開されている相場記事をもとにした当社調査の数字です。
| 工程 | 期間の目安 | 費用の目安 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 診断(ライト/標準) | 2週間 | 15万円/30万円(税別) | 当社の設計・料金 |
| コンサル・要件定義 | 1〜2ヶ月 | 40〜200万円 | 当社調査(参考値) |
| PoC(試作) | 1〜3ヶ月 | 100〜500万円 | 当社調査(参考値) |
| 本番化・保守 | 社内システムとつなぐ範囲と運用条件で個別に決める | 診断とは別契約 | 個別見積 |
診断から試作までを順に進めた場合の目安は、診断2週間のあとに、要件定義とPoCの期間が続く形です。工程どうしが重なる場合もあり、合計は案件ごとに変わります。総額の組み方はAIロードマップの費用に書きました。
担当欄の「推進担当と現場」も、そのままでは広すぎます。推進担当は進行を管理し、現場は結果が業務で使えるかを確かめます。費用や業務範囲を変える判断は、決裁できる人へ戻します。同じ人が兼ねても構いませんが、何を決める役割なのかは分けて書くと、依頼が止まったときの相談先が分かります。
完了条件には、判断に使った資料の置き場所を添えます。「試作完了」とだけ書くより、「確認した出力と修正記録を現場責任者が見て、継続を判断した」と書くほうが、引き継ぎに使えます。表に資料の本文まで貼る必要はありません。最新版への参照を残し、機密情報を広く共有しない形にしてください。
予定を変えるときは、日付だけを後ろへずらさないようにします。何が終わっていないのか、次は何を確かめるのか、待つ間に費用が発生するのかを合わせて確認します。理由を説明できない延期が続くなら、期間の調整より先に、対象業務や完了条件の見直しが必要です。
確かめ方: 表の「担当」の列に、社内の人の役割名を入れてみてください。入らない行は、外部の専門家に頼む候補です。当社の専門家レンタルには、週1〜2回・月20時間〜、標準期間3〜4ヶ月、月20〜36万円の案件例があります。初期費用は0円です。
各段階の中身を、受け取る物・渡す物・次へ進む条件まで工程単位で確かめたいときは、AI導入のプロセス7工程の受け渡しと進めてよい条件の表も合わせて見てください。
段階①②|最初の2週間で「やらない」も含めて切り分ける
最初の2週間でやることは、1業務に絞り、診断で「今はやらない/研修/試作/実装」のどれに進むかを決めることです。「今はやらない」を出口に入れておくと、本番開発へ費用をかける前に止められます。
①では、業務を洗い出して1つに絞ります。絞る目安は、週に何度も起きる作業、手順が決まっている作業、間違えても影響が小さい作業です。洗い出しの方法はAI 業務 棚卸し|5列の棚卸表と業務を選ぶ3ステップに書きました。
②の診断(=現場で業務を見て、次の進み方を決める調査)を外部の診断サービスに頼むときは、発注側が次の3条件を求めてかまいません。社内で診断する場合も、同じ3点を先に決めます。
- 期間が決まっている(当社の設計は2週間)
- 本番システムに接続しない
- 診断の担当者が現場に同席する
当社のAI適用診断は、この3条件で設計しています。料金はライト診断15万円、標準診断30万円(いずれも税別)で、本番化と保守は別契約です。診断で何が分かり、何が分からないかはAI適用診断とは?30万円を払う前に「分かること・分からないこと」に書きました。
診断後の判断は4つ、「今はやらない」も選択肢です
図の内容: 診断2週間の結果が、今はやらない・研修・試作・実装の4つの出口に分かれることを示す図。
次の表は、診断後に発注側が判断するための整理例です。出口(=診断のあとに選ぶ進み方)のうち、実装は⑤本番化に進むことです。当社の診断は研修・試作・実装のどれで進むかを切り分けますが、発注側は見送る判断も含めて検討してください。
| 出口 | 選ぶ目安 | 次にやること |
|---|---|---|
| 今はやらない | 対象業務が決まらない、または現場に任せる余力がない | 時期を決めて①に戻る |
| 研修 | 道具は決まっているが、使う人の力が足りない | 対象の業務で演習できる研修を探す |
| 試作 | 対象業務は決まっており、動くかどうかが分からない | ③で確認の3点を決める |
| 実装(⑤本番化に進む) | 動くことは確認済みで、本番で使う条件が見えている | ④⑤の担当と契約を決める |
診断に持ち込む資料は、理想の業務フローだけでは足りません。実際に作業が始まるきっかけ、担当者が見る入力、作業後に残る成果物をそろえます。手順書と現場の動きが違う場合は、その違いも説明してください。資料を外部へ渡す際は、共有できる範囲を社内で確認し、必要に応じて架空の例に置き換えます。
たとえば、請求書の内容を転記する作業を考えます。読み取れれば終わりなのか、取引先ごとの表記を直す必要があるのかで、試す内容は変わります。これは進め方を説明するための例で、導入実績ではありません。現場同席では、普段どこで迷い、誰に聞き、どう直しているかまで確認すると、AIに任せる範囲を絞れます。
「今はやらない」を選ぶ場合も、判断の理由を残してください。資料が集まらないのか、確認する人がいないのか、改善したい困りごとが曖昧なのかで、再開に必要な準備が違います。単に見送りと書くより、何がそろえば再検討するかまで書くと、同じ説明を繰り返さずに済みます。
研修を選ぶなら、受講後にどの業務を自分で試せるようにしたいかを決めます。試作を選ぶなら、まだ分かっていないことを質問の形にします。実装を選ぶ場合も、既存の試作結果が本番の入力や利用条件に合うかを確認してください。診断の結論が出たことだけで、本番への接続を許可したことにはなりません。
確かめ方: 診断の見積を取るときに「出口4択のうち、どれかを必ず決める成果物か」を聞いてください。「提案書を出します」だけなら、出口が決まる保証がありません。
段階③④|試作とルールは、本番の前に揃える
③の試作と④のルール作りは、どちらも本番の前に終わらせます。試作は「動いたか」「誰が確認するか」「止める条件」の3点を決めて回し、ルールは入力してよい情報と確認の担当を文書にします。
試作の3点と費用
試作では、3点を次のように書きます。
- 動いたか: 1業務の中の、決めた作業が決めた形で終わったか。たとえば「10件中◯件が、直さずに使えた」のように書く。◯は自社で決める
- 誰が確認するか: 現場の確認者の名前と、確認する頻度
- 止める条件: たとえば「確認者が直した箇所が多く、手作業より時間がかかる」「確認者が、これでは使えないと判断した」のように、文章で書く
試作の期間と費用は、当社の公開情報の調査ではPoCが100〜500万円、1〜3ヶ月が目安でした。他社記事を集めた参考値でばらつきが大きく、保証ではありません。当社の診断はライト15万円・標準30万円(税別)ですが、動く試作品を作るPoCとは依頼の範囲が違います。安価なPoCの代わりと考えず、何を判断するための費用かを分けてください。期間の設定はAI PoCの期間設定、費用はAI PoC 費用を見てください。
評価の記録
試作の評価では、見栄えのよい出力だけを選ばず、普段の業務で扱う入力を使います。読みづらい資料や情報が欠けた問い合わせなど、担当者が判断に迷う例も含めてください。実データを使えない場合は、共有可能な資料や架空データで確かめ、まだ検証できていない範囲を記録します。
比較するのは、AIが返答するまでの速さだけではありません。入力を整える手間、出力を確認する手間、修正して次の担当者へ渡す手間まで見ます。生成は速くても確認が増えるなら、対象を狭めるか、AIの役割を下書きまでにとどめる判断ができます。実測していない削減率を、稟議の効果として書かないでください。
評価の記録は、次のように分けると現場と開発側で話しやすくなります。数値の合格基準を置く場合は、自社の現在の作業を測り、確認者と合意してから決めます。
| 見る場面 | 残す記録 | 判断への使い方 |
|---|---|---|
| 入力を用意する | 資料を探す手間や、加工が必要だった箇所 | 準備の負担が増えすぎないかを見る |
| AIの結果を確かめる | 誤り、抜け、根拠を確認できなかった内容 | 任せてよい作業の範囲を絞る |
| 人が直して使う | 修正した内容と、判断に迷った理由 | 現場が引き受けられる確認作業かを見る |
| 通常の手順へ戻す | 戻す際に必要な資料と操作 | AIが使えなくても業務を続けられるかを見る |
うまくいかなかった例を集める目的は、試作の担当者を責めることではありません。直せる問題と、用途そのものを変えるべき問題を分けるためです。入力の書式をそろえれば改善するのか、正解を判断する資料自体がないのかを区別します。後者なら、AIの調整を続ける前に、業務のルールを整理する必要があります。
利用ルール
④のルールの作り方はAI利用ガイドライン|作り方5ステップとひな型の入手先に書きました。総務省のAI事業者ガイドラインにはチェックリストとワークシートが別添で公開されているので、自社のルールを作るときの確認用に使えます。ただし、本編の項目はこの記事では取り扱いません。
利用ルールは、本番化の直前にまとめて考えるのではなく、試作で資料を使う前から必要です。入力できる情報、共有してよい相手、結果を保存する場所を決めてから試します。段階④では、その仮のルールを本番の利用者と業務に合わせて整えます。情報の扱いに合意がないまま試作を急がないでください。
使う人向けの案内には、禁止事項だけでなく、迷ったときの相談先も載せます。「顧客情報を入れない」と書くだけでは、どの資料なら使えるかが分からない場合があります。使える資料の例と、判断を止めて確認する例を並べておくと、利用者が自己判断で範囲を広げるのを防ぎやすくなります。
道具の選び方とリスク
試作の前に、使うAIの種類と置き場所も決めます。種類は3つあります。文章を作るAI、社内資料を検索して答えるしくみ(RAG=資料を探してから答える方式)、AIエージェント(=決めた手順を自分で進めるAI)です。置き場所は、既製のAIサービスをそのまま使う型と、社内資料や保存先を自社用に整えた使い場所を作る型があります。迷ったら、次の軸で選びます。
| 選ぶ軸 | 既製のサービスを使う型 | 自社用の使い場所を作る型 |
|---|---|---|
| 始めやすさ | 契約してすぐ試せる | 設計と構築の期間が要る |
| 情報の扱い | 提供元の規約と設定に従う | 保存先や接続先を自社で決められる |
| 業務への合わせ込み | 設定できる範囲に限られる | 自社の資料や手順に合わせやすい |
| 保守の担当 | 提供元が機能を更新する | 直す人と費用を自社で決める |
最初の試作は、既製のサービスで足りるかを先に確かめると、費用をかけすぎずに済みます。資料の検索や手順の自動化が必要と分かった時点で、自社用の使い場所を検討してください。
導入のメリットとリスクは、次の表で整理しておくと社内に説明しやすくなります。リスクの対策は、④のルールに入れます。
| 論点 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 作業の効率化(メリット) | 下書きや転記の手間を減らせる場合がある | 試作で、確認の手間を含めて手作業と比べる |
| ハルシネーション(=もっともらしい誤り) | 事実と違う内容が自然な文章で出る | 人が確認する場面と、根拠を示す手順を決める |
| 情報漏洩 | 入力した顧客情報や社外秘が意図せず外に出る | 入力してよい情報を文書にし、使う環境の規約と設定を確かめる |
| 著作権 | 出力が他者の著作物に似る、他者の資料を無断で入力する | 公開前に権利を確かめ、入力できる資料を限る |
確かめ方: 試作を始める前に「止める条件」を紙に1行で書き、現場の確認者にも見せて合意をもらってください。後から条件を足すと、止められなくなります。
段階⑤⑥|本番化と定着では、保守と見直しの担当を先に決める
本番化は診断とは別の契約です。保守と見直しの担当を先に決めておかないと、使われなくなっても誰も気づきません。
⑤で外部の導入支援会社に頼むなら、見積を取る前に次の5点を聞いてください。書面で答えが出ない項目が多ければ、理由を聞いたうえで他社と比べてください。
| 聞くこと | 良い答えの例 |
|---|---|
| 最初の成果物は何か | 出口の判断に使える資料が、納品物として決まっている |
| 本番に接続する前に何を確かめるか | 本番に接続しない試作の段階と、止める条件がある |
| 保守は誰が担当するか | 範囲・費用・連絡先が書面にある |
| 情報の扱いをどう決めるか | 預ける資料の範囲と、保管・削除の方法を示せる |
| 担当者が替わったら | 引き継ぎの手順と、現場への説明の場がある |
⑤では、診断の費用に本番化と保守は含まれないことを確認します。そのうえで、止まったときに連絡する人、直す人、使い方を教える人を決めます。保守の考え方はAIエージェント保守とはにも書きました。
本番化の打ち合わせでは、正常に動く場面と、止まった場面の両方を確認します。社内のシステムとつながらない日、回答に根拠が付かないとき、確認する人が休みの日について、誰が何をするかを決めます。担当者が口頭で知っているだけなら、代わりの人でもたどれる短い手順に直してください。
保守の依頼範囲も、作った側がすべて引き受けるとは限りません。障害を調べる作業、回答内容を改善する作業、社内資料を更新する作業を分け、誰に頼むかを相談します。業務の変更を保守に含めるのか、追加の見積が必要なのかも確認しておくと、使い始めてからの認識違いを減らせます。
引き渡しでは、説明を聞いたことと、自分で操作できることを分けます。現場の担当者が実際に入力し、結果を確認し、問題がある場合は止めて相談するところまで試してください。開発側の画面で動くことを見ただけでは、現場の権限や保存場所で使えるかは分かりません。
⑥では、使われているかを測る方法と、見直しの周期を自社で決めます。測る候補は、週に使った人数、1件あたりの作業時間の変化、確認者が直した件数です。周期の数字は業務によって違うため、この記事では決めません。
導入したのに社員が使わないときは、次の表で戻る段階を決めます。
| 症状 | 戻る段階 | 確かめること |
|---|---|---|
| 使い方が分からないと言われる | ④ ルールと環境 | 使ってよい場面と、入力してよい情報が1枚にまとまっているか |
| 手作業のほうが早いと言われる | ① 目的と1業務 | 対象の業務が、AIに向く作業か |
| 結果の確認者が決まっていない | ⑤ 本番化 | 確認の担当と頻度が決まっているか |
| 最初は使ったが、減ってきた | ⑥ 定着と見直し | 見直しの日付が決まっているか |
定着を見るときは、利用回数だけで良し悪しを決めないようにします。対象業務そのものが少なかったのか、使いたいのに操作で止まったのかでは、対応が違うからです。使わなかった業務の状況と、使ったときの修正の負担を聞きます。そこから、研修を足すか、仕組みを直すかを決められます。
見直しの担当には、変更を決める範囲も伝えます。入力例の追加なら現場で直せても、送信先や扱う情報を変えるなら管理部門の確認が必要になることがあります。便利にするための変更で、最初に合意した利用範囲まで広げないよう、変更内容を記録してから次の担当者へ渡してください。
確かめ方: 現場で使う担当者に「最後に使ったのはいつか、使わなかった理由は何か」を聞いてください。理由が表の症状のどれに近いかで、戻る段階が決まります。
補助金は計画のどこに入れるか|交付決定前の発注に注意
補助金を計画に入れるときは、発注や契約の日付が交付決定より前にならないように、段階の順番を決めます。事務局サイトは、交付決定前に発注・契約・支払い等を行った場合は補助金の交付を受けられない、と注意しています。
デジタル化・AI導入補助金を検討する場合は、対象となる事業者・ツール・経費と、利用する募集回の日程を公式案内で確認します。診断、研修、試作、本番化をまとめて「AI導入」と呼んでいても、同じ条件で対象になるとは限りません。事務局サイトの通常枠の記載は、次のとおりです(年度・回で変わるため、申請前に公式で確認してください。ほかの枠はAI 導入 補助金を見てください)。
| 項目 | 事務局サイトの記載 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内、2/3以内 |
| 補助額(1プロセス以上) | 5万円以上150万円未満 |
| 補助額(4プロセス以上) | 150万円以上450万円以下 |
| 締切 | 2026年10月30日(金)17:00 |
| 交付決定日 | 2026年12月10日(木)(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定~2027年5月31日(月)17:00(予定) |
この表の日付は2026年10月17日時点の掲載で、「予定」は確定ではありません。事務局サイトによると、補助金の目的は中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上です。対象は、事前に事務局の審査を受けて登録されたITツールです。プロセスの数え方は、AI 導入 補助金と事務局の公式案内で確認してください。
診断や試作が対象になるかは、この記事では判断できません。事務局の公式サイトの案内か、申請を手伝う事業者に、次のように聞いてください。「診断と試作の費用は、補助の対象経費になりますか。発注と契約は、交付決定の何日後からできますか。」
計画表には、社内で作業を進めたい時点と、制度上その契約や支払いができる時点を分けて記入します。申請したことと、交付決定を受けたことは区別してください。発注先には見積の対象を分けてもらい、どの作業を、いつ依頼するのかを確認してから契約します。
交付決定の前に、発注・契約・支払いをしてはいけません
図の内容: 申請の締切、交付決定日、事業実施期間の終了を並べ、交付決定より前の発注・契約・支払いが対象外になることを示す図。
計画では、対象業務の整理を進めながら、補助対象にしたい契約ごとに、いつから発注できるかを確認します。診断や試作も対象に含めたいなら、その契約前に確認します。補助金の枠や申請の流れはAI 導入 補助金|2026年度の5枠と補助額・申請の流れに書きました。補助金に合わせて計画を急ぐと、診断や試作の段階を飛ばしてしまい、途中で止める判断ができなくなります。不採択だった場合は、自己負担で続けるか、範囲を縮めるか、見送るかを社内で決めておいてください。
確かめ方: 発注先に「契約日と発注日は、交付決定のあとにできますか」と聞いてください。補助金の対象になるかどうかは、事務局の公式サイトで確認します。
早見表|止める判断は段階ごとの条件で決める
止める判断は、段階ごとに「続ける目安」と「止める・戻る目安」を条件の文で先に書いておきます。測定結果と、現場で確かめられる条件を組み合わせるのがコツです。
| 段階 | 続ける目安 | 止める・戻る目安 |
|---|---|---|
| ① 目的と1業務 | 目的が1文、対象が1業務に絞られた | 目的が人によって違う(営業は問い合わせ対応、経理は請求書、と各部の期待が別)。対象業務が合意なく広がる |
| ② 診断 | 出口4択のどれかが決まった | 出口が決まらない。現場の協力が得られない |
| ③ 試作 | 動いたか・誰が確認するか・止める条件の3点が埋まった | 確認者の手直しが多く、手作業より時間がかかる |
| ④ ルールと環境 | 入力してよい情報と確認の担当が文書になった | 情報の扱いについて、社内で合意が取れない |
| ⑤ 本番化 | 保守の担当と連絡先が決まった | 保守の担当が決まらない。契約の範囲が曖昧 |
| ⑥ 定着と見直し | 使われている状況を測れて、見直しの日付がある | 使われなくなっても、誰も気づかない |
止めると決めたら、止める範囲も具体的にします。外部への送信だけを止めるのか、利用を休止するのか、追加の開発を発注しないのかでは、現場への案内が変わります。止める判断をした人、対象の作業、代わりに使う手順を残し、関係する担当者に伝えてください。
再開条件には、問題が消えたことを誰が確かめるかを書きます。「改善したら再開」では、作った側と使う側の判断がずれることがあります。修正した出力を現場が確認する、共有する資料の範囲を管理部門が認める、といった確認の場面に直すと、再開の判断ができます。
すでに費用を払ったことは、次の費用をかける根拠にはなりません。判断に迷うときは、これから解消したい問題と、追加で頼む作業を並べてください。試作で分かった限界や使えない条件も成果として残せば、別の業務や道具を検討するときに生かせます。
確かめ方: この表を印刷して、各段階の「止める・戻る目安」を自社の言葉に直してください。直せない行は、その段階の前提がまだ固まっていません。
このロードマップを今すぐ使わなくていい会社と、この記事に含まれないこと
次の3つに当てはまる会社は、この6段階の表を今すぐ作らなくて構いません。
- AIを業務に入れる方針がまだ決まっていない。まずAI導入診断などで、現在地を知るところからで足ります
- 1つの業務だけ試せば足り、段階を分けるほどではない。AI 導入 進め方の6手順で足ります
- すでに本番で動いている。⑥の見直しの周期と止める基準だけを足してください。保守の考え方はAIエージェント保守とはにあります
この記事に含まれないことも書いておきます。
- 複数年の計画書に書く項目(期間軸・体制・予算配分・KPI)は、AIロードマップ策定の進め方にあります
- ロードマップ全体の費用と総額の組み方は、AIロードマップの費用にあります
- 補助金の申請手順と書類は、AI 導入 補助金にあります
- 診断の中身(分かること・分からないこと)は、AI適用診断とは?30万円を払う前に「分かること・分からないこと」にあります
導入事例は載せていません。当社が公開できる実績の数値がないためです。診断の設計と、発注側が求めてよい条件だけを書いています。
確かめ方: 3つの条件のうち当てはまる行があるかを、1つずつ見てください。1つも当てはまらなければ、この記事の6段階の表を作ってください。
Summary in English
An AI adoption roadmap is not a plan document. It is one table that lists six stages in time order, each with a duration, an owner and a condition for moving on. The six stages are: (1) decide the purpose and pick one business process, (2) a two-week diagnosis, (3) a prototype, (4) rules and environment, (5) production rollout, and (6) adoption and review. At the end of every stage the team chooses one of three outcomes: move forward, go back, or stop.
The first two weeks decide the path. In our company’s AI diagnosis, which lasts two weeks, is not connected to production systems and is done with the team on site, the client considers training, a prototype, or implementation, and may also decide to stop for now. Our diagnosis costs 150,000 yen (light) or 300,000 yen (standard), both excluding tax; production rollout and maintenance are separate contracts.
For subsidies, the operator of the Digital and AI Adoption Subsidy states that ordering, contracting or paying before the grant decision makes the project ineligible. Check the applicable application round and eligible expenses before committing to a purchase. Do not rush the plan to fit the subsidy; check the latest schedule on the official site.
まとめ|道筋は、止める基準まで書いて初めて使える
- ロードマップは計画書ではなく、6段階を期間・担当・次に進む条件つきで並べた1枚の表
- 道筋は、目的と1業務、診断、試作、ルールと環境、本番化、定着と見直しの6段階
- 最初の診断2週間で、今はやらない・研修・試作・実装のどれに進むかを切り分ける
- 試作は「動いたか」「誰が確認するか」「止める条件」の3点を先に決める
- 本番化は別契約になるため、保守と見直しの担当を先に決める
- 補助金は交付決定前に発注・契約・支払いをしない。補助金に合わせて計画を急がない
次のアクションは、3つのうちどれか1つで構いません。
- 今日: 6段階の表で、いま自社がいる段階に印をつけ、その段階の完了条件を1行で書く
- 今週: 全6段階の「止める・戻る目安」を自社の言葉に直し、現場の確認者に見せる
- 今月: 診断の見積を取るときに、出口4択を決める成果物かを確かめる
6段階のどこから手をつけるか、あるいは止める基準をどう置くか迷うときは、無料相談で状況をお聞かせください。
次に読む
- 1業務を回す具体的な手順を知りたい → AI 導入 進め方|担当・成果物・止める基準で見る6つの手順
- 複数年の計画書を作りたい → AIロードマップ策定の進め方
- 診断の中身を知りたい → AI適用診断とは?30万円を払う前に「分かること・分からないこと」
- 診断・試作・実装・定着の5ステップを見たい → AI導入の進め方を5ステップで解説
更新履歴
- 2026-10-17: 初版公開。段階別の完了条件、期間と費用の目安、試作の評価記録、リスクと対策、導入支援会社への質問、停止と再開の判断、補助金の補助率・補助額・日程と発注順を整理
- 次回更新予定: 2026年11月(診断の提供条件と、補助金の次の締切回・交付決定日を再確認)
本記事は2026年10月17日時点の公開情報に基づきます(公開日: 2026年10月17日)。補助金の日程と補助額、AI事業者ガイドラインの内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。
参考・出典
- 総務省「AI事業者ガイドライン」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html(参照日: 2026年10月17日)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業 事務局「デジタル化・AI導入補助金について」 https://it-shien.smrj.go.jp/about/(参照日: 2026年10月17日)
- 同事務局「通常枠」 https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/(参照日: 2026年10月17日)
- 同事務局「交付決定後の注意事項」 https://it-shien.smrj.go.jp/aftergrantdecision/measures/(参照日: 2026年10月17日)
- 同事務局「スケジュール」 https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/(参照日: 2026年10月17日)
- 当社調査: 段階別相場の公開情報(2026年6月28日更新分ほか)
- 当社調査: 事業ファクトシート(2026年6月12日更新)
FAQよくある質問
- AI導入のロードマップとは何ですか?
- AI導入のロードマップは、導入を時間順の段階に分け、段階ごとの期間・担当・次に進む条件を並べた1枚の表です。目標を書き並べた計画書ではなく、途中で止める基準まで書いてあるものを指します。この記事では、目的と1業務を決める、診断、試作、ルールと環境、本番化、定着と見直しの6段階で組みます。
- AI導入は、どの順番で進めればよいですか?
- 順番は、①目的と1業務を決める、②診断、③試作、④ルールと環境、⑤本番化、⑥定着と見直しです。いきなり本番化に進まず、最初の診断で「今はやらない」「研修」「試作」「実装」のどれに進むかを切り分けます。各段階の終わりに、進む・戻る・止めるを決める条件を置きます。
- AI導入の期間と費用の目安はどれくらいですか?
- 公的な標準値は確認できていません。当社の診断は2週間で、費用はライト15万円、標準30万円(いずれも税別)です。当社が公開されている相場記事を調べた目安では、コンサル・要件定義が40〜200万円で1〜2ヶ月、PoC(=小さく試作して確かめること)が100〜500万円で1〜3ヶ月です。他社記事を集めた参考値でばらつきが大きく、金額や納期の保証ではありません。自社の期日は、段階ごとに自分たちで決めます。
- 小さな会社でも、導入ロードマップは作ったほうがよいですか?
- 作ったほうがよいですが、複数年の計画書までは要りません。1業務だけ試す会社なら、6段階の表に「いまの段階」と「次に進む条件」を1行ずつ書けば足ります。大事なのは、どこで止めるかを先に決めておくことです。
- ロードマップの最初に診断を入れる意味は何ですか?
- 診断を最初に入れると、研修・試作・実装のどれから始めるか、あるいは今はやらないかを、本番開発へ費用をかける前に切り分けられます。当社のAI適用診断は2週間で、本番システムには接続せず、現場に同席して見ます。料金はライト診断15万円、標準診断30万円(いずれも税別)で、本番化と保守は別契約です。
- AIの診断は、社内でやるのと外部に頼むのと、どちらがよいですか?
- どちらがよいかは、社内に現場を見て進め方を切り分けられる人がいるかで決まります。外部に頼む場合も社内でやる場合も、期間を決める、本番システムに接続しない、現場に同席して見る、の3点は同じです。当社の診断は2週間で、この3条件で設計しています。
- 補助金を使うなら、ロードマップのどこに注意が必要ですか?
- 交付決定前に発注・契約・支払いをしないことです。事務局サイトは、交付決定前にこれらを行うと補助金の交付を受けられないと注意しています。補助金の締切や交付決定日は回ごとに変わるため、最新の日程は事務局の公式サイトで確認し、補助金に合わせて計画を急がないでください。
- 導入しても社員が使わないときは、どの段階に戻りますか?
- 原因によって戻る段階が違います。使い方が分からないなら④のルールと環境、そもそも業務に合っていないなら①の1業務の選び直し、確認の担当が決まっていないなら⑤本番化の担当決めに戻ります。戻る先は、現場に「どの場面で止まったか」を聞いて決めます。
- AI導入で気をつけるリスクは何ですか?
- 代表的なリスクは、もっともらしい誤りを出す(ハルシネーション)、入力した情報が外に出る(情報漏洩)、出力が他者の著作物に似る(著作権)の3つです。対策は、人が確認する場面を決める、入力してよい情報を文書にする、公開前に権利を確かめる、の3点です。いずれも本番化の前、試作とルール作りの段階で決めておきます。
- ロードマップの途中で止める判断は、何を基準にしますか?
- 段階ごとに、先に書いた完了条件を満たせなかったかどうかで決めます。たとえば試作で「動いたか」「誰が確認するか」「止める条件」の3点が埋まらなければ、本番化には進みません。止めることは失敗ではなく、本番開発へ費用をかける前に分かったという成果として扱います。


