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AI PoCの期間設定|審査込みで決める5つの見方【2026年10月】

AIのPoC期間を、審査込みで決める見方を整理。期間を区切る5工程、延長と中止の判断表、審査前のチェック表を載せました。東京都の公開資料と当社の2週間診断の条件を2026年10月9日時点で反映。

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AI Expert 編集部運営 Orga合同会社

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AI PoCの期間設定|審査込みで決める5つの見方【2026年10月】

結論: AI PoCの期間は、検証の日数だけで決めるものではなく、情報の分類・権限の設計・社内審査・検証・判断の5工程の日数を足して決めます。この記事では、期間を5工程に区切る方法、審査を検証より先に始める理由、延長と中止を開始前に決める判断表、審査前に集める情報のチェック表を書きます。

この記事の要点

  • PoC(=本番前に小さく試すこと)の期間は、検証だけでなく審査と判断の日数まで足して決める。期間は5工程に区切る(編集部の整理)
  • 審査は検証と並行して先に始める。データ整理や評価指標の決定は審査中でも進められ、外部AI(=社外のサービスで動くAI)への実データの入力だけは審査後にする
  • 延長と中止の基準は、開始前に「評価指標(=成功と言える基準)・上限日数・承認者」として文書にしておく。決めずに始めると、試作だけが続いて費用がかさむ「PoC貧乏」になりやすい
  • 入力してよい情報など5つを決めることが、審査の対象になる。東京都産業労働局の資料が、この5つを挙げている
  • 本番に触れない2週間の診断を前に挟む選択肢もある

この記事は、AIのPoCを社内で稟議にかけようとしている中小企業の情シス・推進担当・経営者に向けて書いています。セキュリティ審査を通しながら、期間を何週間にするかを決めたい場面を想定しています。PoCをやること自体は決めた方が対象です。PoCの費用の中身はAI PoC 費用の記事、PoCの一般的な手順はPoCの進め方に書いたので、ここでは扱いません。

今日やることは1つです。自社の審査担当に「PoCで使う情報の分類と、その承認者は誰か」を1行で聞いてください。審査担当がいなければ情報管理の責任者に聞きます。それもいない小さな会社は、社長自身が決める前提で「誰が承認するか」を書き出します。この返事で、期間の最初の工程にどれだけかかるかが見えます。

AI PoCのセキュリティ審査とは|期間設定で何が変わるか

セキュリティ審査とは、PoCで入力する情報・使う権限・残すログを、社内で承認してもらう手続きです。これを期間に入れ忘れると、検証が始まる前に予定が崩れます。

PoCは、本番に入れる前に小さな範囲で試す取り組みです。似た言葉にPoV(価値の検証)やMVP(最小限の製品)がありますが、本記事の対象はPoCだけです。違いはPoCの進め方にあります。PoCでもAIに実際の業務情報を入れる場面があり、入れる以上、本番と同じ種類の事故が起こり得ます。

東京都産業労働局の資料(運営: アデコ株式会社)は、2026年7月16日に公開された「フロンティアAI時代の生成AIセキュリティ」で、次のように述べています。

AI導入時は、入力してよい情報、接続ツールの権限、実行できる操作、ログ保存、出力の承認者を決めます。

この5つが、審査の対象です。それぞれ、次のようなことを指します。

  • 接続ツールの権限: AIがつなぐ先と、読める・書ける範囲。例: 社内のファイルサーバーを読む
  • 実行できる操作: AIにさせてよい動き。例: メールを自動で送る
  • ログ保存: AIに何を入れ、何が出たかの記録をどこに、どれだけ残すか

同じ資料は、外部のAIに情報を入れる場面についても書いています。

本番コードや機密情報を外部AIへ入力する場合は、契約条件、データ保持、学習利用の有無を事前に確認します。

3語は、契約条件(=使う条件が自社の決まりに合うか)、データ保持(=入れた情報が相手側に残るか)、学習利用の有無(=入れた内容がAIの改良に使われるか)の意味です。PoCの前に決めることは、検証の日数とは別にあります。ここで注意があります。この資料に「PoC」という語は出てきません。PoCの期間について、公的な目安は見つけられませんでした。この記事の期間の区切り方は、資料の5項目をPoCに当てはめた編集部の整理で、官公庁が定めた基準ではありません。

確かめ方は、PoCの計画書に「入力する情報の分類」「接続するツールの権限」「実行できる操作」「ログの保存先」「出力の承認者」の5行があるかを見ることです。1行でも空欄なら、期間の見積もりはまだ早い状態です。

PoCの期間を決める5工程|検証だけでは足りない理由

PoCの期間は、情報の分類・権限と接続の設計・社内審査と契約確認・検証・判断と引き継ぎの5工程に分けて、それぞれ日数を置きます。検証だけで期間を決めると、前後の工程が予定の外に出て、あとから延長になります。

期間は検証だけでなく、前の3工程と後ろの1工程を足して決める

PoC期間を決める5工程上段は、1 情報の分類と範囲決め、2 権限と接続の設計、3 社内審査と契約確認の3工程。下段は、4 検証、5 判断と引き継ぎの2工程。検証は3工程が済んだあとに外部AIへ実データを入れる工程で、判断では続ける・延長する・止めるを決める。 1 情報の分類と範囲入れてよい情報を決める出すもの: 情報の分類表 2 権限と接続の設計ツールの権限・操作・ログ出すもの: 権限の一覧 3 社内審査と契約確認承認者の決裁・契約条件の確認出すもの: 承認の記録 4 検証ここで初めて外部AIへ実データを入れる出すもの: 評価指標の結果 5 判断と引き継ぎ続ける・延長する・止めるを決める出すもの: 判断の記録と、次の担当への引き継ぎ

図の内容: PoCの期間を決める5工程。情報の分類、権限と接続の設計、社内審査と契約確認を終えてから検証に入り、最後に判断と引き継ぎを置く。

審査の申請書づくりは、工程③ではなく工程①から始めます。分類表と権限の一覧が、そのまま申請書の中身になるためです。

工程ごとに、誰が何を出し、どこで止まりやすいかを表にします。日数の数字は書いていません。出典のある一般的な日数が見つからないためで、代わりに自社で確かめる質問を置きました。

工程出すもの(担当)止まりやすい点自社で確かめる質問
① 情報の分類と範囲決め入れてよい情報の分類表(情シス・現場)現場が「何を入れるか」を言語化できず、分類が決まらない「PoCで扱う情報は、公開・社内限り・機密のどれですか」
② 権限と接続の設計接続するツールと権限の一覧(情シス)既存の業務システムにつなぐ際の権限が広すぎる「AIが読める範囲と、書き込める範囲は別に決めましたか」
③ 社内審査と契約確認承認の記録・契約条件の確認結果(審査担当・法務)審査の窓口が決まっておらず、申請が止まる「審査の申請から結果までに、通常どれだけかかりますか」
④ 検証評価指標の結果(現場・推進担当)審査が終わる前に検証を始めて、中断する「外部AIに実データを入れる日は、承認の記録のあとになっていますか」
⑤ 判断と引き継ぎ判断の記録・引き継ぎ資料(経営者・推進担当)評価指標が曖昧で、続けるか止めるかが決まらない「判断する人と、判断する日は決まっていますか」

①の「情報の分類表」は、3行あれば始められます。

分類意味例
公開社外に出ても困らない自社サイトに載せている会社案内
社内限り社外には出したくない社内の手順書
機密漏れると取引や信用に響く顧客名簿、原価

③の「承認の記録」は、あとで見返せる形なら足ります。社長や責任者のメール返信でも、稟議書でも構いません。審査の仕組みがまだない会社は、このメール1通を最小の審査にします。

体制は、最低でも4つの役割を名前で埋めます。

役割担うこと空欄だと止まる工程
推進担当予定表を持ち、各工程の進みを見る全体
現場の担当入れる情報を挙げ、検証の結果を使って確かめる①④
情シス・審査担当権限・ログ・審査の申請を見る②③
承認者(経営者・責任者)続ける・延長する・止めるを決める⑤

兼任で構いません。社長1人と数名の会社なら、1人が2役、3役を持つ形でも、空欄を作らないことが条件です。

期間を人に伝えるときは、1つの日数ではなく幅で書き、前提を添えます。たとえば「審査が差し戻しなしで通る場合の最短」と「1回差し戻された場合の最長」の2本です。前提が書かれていない日数は、あとで根拠を聞かれて崩れます。

「結局何週間か」を自社で出す手順は、次のとおりです。

  1. 5工程それぞれに、担当者と出すものを書く
  2. 各工程の日数を、担当者に聞いて幅で置く
  3. 検証の前に審査待ちを、検証のあとに判断の日を置いて、合計する

数字を置くときに使える出典付きの数字は、本番に触れない当社の診断の2週間だけです。③の「審査にどれだけかかるか」は、この記事では数字を書けません。自社の審査担当に聞くのが確実です。聞くときは、申請から結果までの日数と、不備があった場合の差し戻しにかかる日数を分けて聞いてください。

5工程のうち、期間の見積もりから漏れやすいのは①と⑤です。①は「PoCを始める前の準備」と見なされ、⑤は「終わったあとの話」と見なされるためです。どちらも、PoCの予定表の中に日付を置きます。

一般の会社なら、①は情報の棚卸しに近い作業です。製造業なら図面や顧客名簿、士業なら顧問先の資料のように、現場が当たり前に扱っている情報から先に拾います。拾い漏れは審査のやり直しになります。現場の担当者と短い時間を取り、普段AIに貼り付けたくなる情報を声に出して挙げてもらうと、拾い漏れが減ります。

審査を検証の前に始める理由と、並行できる範囲

審査は、検証が始まる前に申請します。待ち時間を検証の準備に使えるためです。審査と並行できる作業と、できない作業ははっきり分かれます。

審査待ちで検証が止まる構造は単純です。外部AIに実データ(=本物の業務情報)を入れる作業は、契約条件・データ保持・学習利用の有無が確認できるまで始められません。東京都産業労働局の資料も、本番コードや機密情報を外部AIへ入力する場合は、この3点を事前に確認するとしています。検証を始めても、承認が出るまで実データは入れられず、PoCの期間だけが過ぎていきます。

審査の待ち時間にできる作業と、できない作業を分けると、次のとおりです。

区分作業理由
審査と並行できるデータの整理と、入れてよい情報への絞り込み社内で完結し、外部のAIに触れない
審査と並行できる評価指標と判断の基準の文書化判断のための物差しで、審査の結果に左右されない
審査と並行できる検証に使うサンプルの準備(公開情報・ダミーデータ=架空の見本データ)機密を含まない形なら、審査前でも使える場面がある
審査後にする外部AIへの実データの入力契約条件・データ保持・学習利用の確認が先
審査後にする業務システムへの接続権限と操作の承認が先

PoCの予定表で「外部AIに実データを入れる日」に印を付け、その日より前の行に承認の記録があるかを見てください。なければ、その日付は動きます。

もう1つの選択肢は、PoCの前に本番に触れない段階を挟むことです。当社のAI適用診断は、業務を見て適用の可否と範囲を整理するサービスです。条件は、2週間・本番非接続(=実際に使っているシステムにはつながない)・現場同席です。診断の期間の考え方はAI適用診断の期間に書きました。診断のあとにPoCや本番に進むときの条件は、AI適用診断の本番接続を見てください。

期間の目安と費用の見方|相場と診断との違い

PoCの期間と費用は、当社が複数の資料から集めた相場では100〜500万円・1〜3ヶ月が一例です。ただし、この相場に審査の日数が含まれているかは分かりません。

この数字は、AI受託開発のPoCについて、当社が調べた相場の一例です(確度は中。複数の資料をもとにした目安として見てください)。審査の日数や、社内側の準備の日数が内訳に入っているかは出典から読み取れません。相場の「1〜3ヶ月」を、そのまま自社の期間にしないでください。見積を受け取ったら、次の質問を添えて返します。

質問テンプレ(メール文面)
PoCの見積書について、次の3点をご確認ください。
1. 見積の期間には、弊社の情報分類・権限の設計・社内審査の日数は含まれていますか。
2. 外部AIに実データを入れる開始日は、何を条件に決まりますか(承認の記録、契約条件の確認など)。
3. 上限日数に達した場合、延長するか止めるかは、誰がいつ判断する想定ですか。

費用の内訳はAI PoC 費用の記事にまとめています。ここでは費用表は作りません。

PoCを決めた方が診断を挟むかどうかを比べられるよう、2つを並べます。診断は、必ず選ぶものではなく、選択肢の1つです。

選択肢期間本番との関係費用
AI適用診断(ライト・標準)2週間本番非接続。現場同席で業務を見るライト15万円・標準30万円(税別)。本番化・保守は別契約
PoC(AI受託開発の相場の一例)1〜3ヶ月検証の内容によって、本番の情報に触れる100〜500万円(確度: 中。審査日数の内訳は不明)

診断で範囲を絞ってからPoCに入ると、PoCの期間のうち①②の工程が短くなる場合があります。ただし、短くなる日数は案件ごとに違うため、この記事では数字を書きません。

診断を挟むかどうかは、次の基準で決めます。次のどれかに当てはまるなら、挟む価値があります。扱う情報の範囲がまだ決まらない。本番のシステムに触れる想定がある。審査の窓口がない。3つとも当てはまらないなら、PoCにそのまま進んで構いません。

診断を入れた場合と入れない場合の2通りで、PoCの工程表を書いてみてください。①②の行が実際に短くなるかを見ます。短くならないなら、診断を挟む理由は「本番に触れずに範囲を絞れること」だけになります。

延びる・止めるの判断表|開始前に決めておく基準

PoCを続けるか、延長するか、止めるかは、開始前に決めた「評価指標・上限日数・承認者」で判断します。始めてから基準を作ると、延長が重なり、試作だけが続く状態になります。

試作を繰り返すだけで本番に進まず、費用だけがかさむ状態を「PoC貧乏」と呼ぶことがあります。避けるには、開始前に次の3つを文書にします。

  • 評価指標(=成功と言える基準): 何がどこまで達成できたら「効いた」と言うか。たとえば「作業時間が3割減る」のように書く(この3割は書き方の例で、仮置きの数字)。AIの答えを見る業務なら、次の2つの角度を分けて決める。間違いの少なさ(出した答えのうち正しかった割合)と、見落としの少なさ(拾うべきもののうち実際に拾えた割合)である。請求書の読み取りなら、「読み違えた請求書が少ないか」と「読み取れなかった請求書が少ないか」で見る
  • 上限日数: 延長を含めて、何日で判断するか
  • 承認者: 続ける・延長する・止めるを決める人

PoCが本番に進まず終わる原因は、一般には次の3つに分けられます(編集部の整理)。どれも、開始前の文書で防げます。

  1. 目的が曖昧: 何のためのPoCかが人によって違う。評価指標で防ぐ
  2. 本番と条件が違う: 試した環境や情報が本番と違い、結果が使えない。①の分類表と②の権限の一覧で防ぐ
  3. 現場と承認者が不在: 結果を使う人と決める人が途中で抜ける。体制の表で防ぐ

判断の流れを図にします。

延長してよいのは、上限日数の範囲内で、原因が検証の外にあるときだけ

PoCを続ける・延長する・止めるの判断最初に、評価指標に届いたかを見る。届いたなら本番に進む判断をする。届かないときは、原因が審査待ちや情報の整備のように検証の外にあり、かつ上限日数の範囲内なら延長する。それ以外は止めて判断し直す。 評価指標に届いたか開始前に決めた指標で見る 届いた 続ける(本番に進む判断へ)承認者が判断し、記録を残す 届かない 原因は審査待ちなど検証以外かかつ、上限日数の内か 延長するどちらも満たすとき 止めるそれ以外は判断し直す

図の内容: 評価指標に届いたら続ける。届かないときは、原因が検証の外にあり上限日数の範囲内なら延長し、それ以外は止めて判断し直す。

図の分岐を、表にして状況別に整理します。基準の数値は書きません。自社の評価指標と上限日数に置き換えて使ってください。

状況続ける延長する条件止める条件
評価指標に届いた承認者が本番に進む判断をする延長しない届いても、本番に必要な権限や契約が整わないなら、そこで止めて整える
届かず、原因が審査待ち・情報の整備—上限日数の範囲内で、待ち時間が解消される見込みがあるとき上限日数を超えるとき
届かず、原因が検証の中(AIの精度など)—延長しない。原因を直す案があっても、別のPoCとして計画し直す評価指標に届く見込みが立たないとき
承認者(社長など)が審査で承認しなかった—延長しない止めて、扱う情報の範囲を見直してから計画し直す

「続ける」と決めたあと、全社に広げる前に、次の点を確認します。PoCで許した情報と権限の範囲を、本番でも同じにするか。ログの保存先と期間を、本番の規模で足りる形にするか。出力の承認者を、本番の担当者に引き継ぐか。広げる範囲が大きいほど、もう一度審査が要ります。本番に進む条件はAI適用診断の本番接続も参考になります。

「検証の中の原因」で延長しない点は、迷いやすいところです。AIの精度が足りないときに日数を足しても、同じ条件で試す限り結果は変わりません。条件を変えるなら、別の計画として承認者の判断を取り直します。

確かめ方は、PoCの計画書に「上限日数」と「承認者の名前」が書いてあるかを見ることです。書いてなければ、始める前に書きます。この2行があるだけで、延長の相談が「いつまでに誰が決めるか」の話になります。

審査前に集める情報のチェック表

審査の申請を出す前に、5項目に契約関係の3項目を足した8項目を集めます。ここが埋まっていると、審査の差し戻しが減り、期間の②③が読みやすくなります。

東京都産業労働局の資料の5要素(入力してよい情報、接続ツールの権限、実行できる操作、ログ保存、出力の承認者)に、外部AIを使う場合の契約条件・データ保持・学習利用の有無を足しました。

確認項目誰に聞くか答えの例なぜ期間に響くか
入力してよい情報情シス・現場の担当社内の手順書は可、顧客名簿は不可決まらないと、検証用のデータが準備できない
接続ツールの権限情シス共有フォルダの読み取りのみ権限が広すぎると審査で差し戻される
実行できる操作情シス・業務の責任者下書きの作成まで。メールの送信はしないAIに書き込みや送信をさせるかで、審査の重さが変わる
ログ保存情シス・審査担当入力と出力を社内のフォルダに残す保存先と期間が決まらないと、承認が出ない
出力の承認者業務の責任者部長が使う前に目を通す出力を使う前に誰が確認するかが空欄だと、検証が止まる
契約条件法務・購買利用規約を読み、社内の決まりと照らす外部AIの契約が済んでいないと、実データを入れられない
データ保持外部AIの提供元入れた情報が相手側に残るか、残る期間入れた情報が保持されるかで、入れてよい情報の範囲が変わる
学習利用の有無外部AIの提供元入れた内容がAIの改良に使われるか学習に使われるなら、機密を入れる前提が崩れる

どの情報を入れてはいけないかの詳しい整理は、中小企業の生成AIセキュリティにあります。利用ルールそのものを作る手順はAI利用ガイドラインを見てください。この記事では、期間に響く確認項目だけを扱います。

審査担当や外部AIの提供元に、そのまま送れる質問テンプレを置きます。

質問テンプレ(メール文面)
AIのPoCを予定しています。審査のために、次の点を教えてください。
1. PoCで入力する情報は、次の分類を想定しています: (公開/社内限り/機密のどれか)
2. 接続したいツールと、AIに許したい操作(読み取りのみ/書き込みあり)は次のとおりです: (記入)
3. ログの保存先と保存期間の条件を教えてください。
4. 出力の承認者は次の担当を想定しています: (記入)
5. 外部AIを使う場合、契約条件・データ保持・学習利用の有無を教えてください。
6. 申請から結果までの通常の日数と、不備があった場合の差し戻しの流れを教えてください。

確かめ方は、8項目のうち空欄がいくつあるかを数えることです。空欄が1つでもあれば、申請を出す前に埋めます。返事が曖昧な項目は、その工程の日数に余裕を持たせます。返事が来ない項目は、期間の見積もりから外せません。

期間を決めても延びる場合|この記事が言えないこと

5工程に区切って期間を決めても、延びることはあります。5工程は予定の分け方です。延びたときに原因を探す軸は別にあり、情報・権限・契約・体制の4つです。

正直に書いておきます。審査にかかる日数や検証にかかる日数について、出典のある公的資料は見つかりませんでした。当社のPoCの実施件数や、PoCにかかった実績の日数も、この記事では書きません。規模別の期間と費用の表、他社の公開事例の成果の数字も、確かめられる出典がないため載せていません。見積や事例を見るときは、規模・扱う情報・審査の有無が自社と近いかを先に確かめてください。この記事の5工程と判断表は、実績ではなく編集部の整理です。発注側が要求してよい条件として示しています。

期間が延びる原因は、情報・権限・契約・体制の4つに分けて探す

PoCの期間が延びる4つの原因延びる原因は4つに分類できる。情報は入れてよい範囲が決まらない、権限は接続の権限が広すぎる、契約は外部AIの条件が確認できない、体制は承認者や窓口が決まっていない。 情報入れてよい範囲が決まらない聞くこと: 情報の分類表はあるか 権限接続の権限が広すぎて差し戻される聞くこと: 読める範囲と書ける範囲は別か 契約外部AIの条件が確認できない聞くこと: データ保持と学習利用の答えはあるか 体制承認者や審査の窓口が決まっていない聞くこと: 承認者の名前と判断日はあるか

図の内容: PoCの期間が延びる原因を、情報・権限・契約・体制の4つに分けた図。それぞれに、延びたときに最初に聞く質問を添えている。

4つのうち、編集部の整理では、体制が最も見落とされやすい原因です。承認者の名前と判断日が決まっていないと、他の3つが解決しても最後の判断で止まります。情報・権限・契約は、集めるべき項目が前の節の表にあります。体制は、人の名前で決まる問題なので、表にしにくく、後回しになりがちです。

延びそうだと気づいた日に、4つの分類のどれが原因かを1行で書いてください。1行で書けなければ、原因がまだ分かっていません。そのまま延長せず、原因を特定する作業を先に予定に入れます。

業種ごとの読み替え|情報の分類で迷う場面

5工程は業種を問わず使えますが、①の「どの情報が機密か」は業種で変わります。ここでは例を挙げて、迷う場面を読み替えます。

  • 製造業: 図面・原価・取引先の仕様書が機密になりやすい。PoCは、公開された仕様書や、社外に出してよい範囲の作業手順から始めると、①が短くなる場面があります
  • 士業・事務所: 顧問先の資料と個人情報が中心です。PoCの対象を、社内の手順書や過去の自社文書に限ると、審査の論点が絞れます
  • 人材・営業: 候補者や顧客の個人情報を扱います。氏名や連絡先を伏せた形でPoCを組めるかを、①で先に決めます

どの業種でも、迷ったら「その情報が社外に出ても困らないか」を現場の担当者に聞きます。困ると答えた情報は、PoCの最初の範囲から外します。線を引く最終判断は承認者です。範囲を狭くして始め、判断のあとに広げる方が、審査は通りやすくなります。

①の分類表に、業種に固有の情報(図面・顧問先資料・候補者情報など)が行として入っているかを見てください。一般的な「機密」「社内限り」の2行だけでは、現場が迷います。

早見表|期間を決める前の確認

期間を決める前に、次の表で自社の答えを確かめます。左の項目に「良い答え」が返らなければ、期間の見積もりはまだ早い状態です。

確認する項目良い答えNGの答え
PoCで扱う情報の分類公開・社内限り・機密のどれか、分類表にある「現場がうまくやる」と言う
接続の権限読める範囲と書ける範囲を分けて一覧にある管理者権限でつなぐ想定
審査の申請先窓口と担当者の名前がある誰に出すか決まっていない
外部AIの契約条件契約条件・データ保持・学習利用の答えがある提供元に聞いていない
評価指標開始前に文書で決めてある終わってから決める
上限日数と承認者延長を含む上限日数と、判断者の名前がある状況を見て決める
本番に進む条件続ける・延長する・止めるの基準を決めてあるPoCが終わってから考える

NGが3つ以上ある場合は、PoCの前に診断のような本番に触れない段階を挟む案も比べてください。この「3つ以上」は目安で、編集部の整理です。公的な基準ではありません。その場合はAI適用診断の期間を見て、診断の2週間を先に入れる案を検討します。

今すぐPoCの期間を決めなくていい会社と、この記事に含まれないこと

次のどれかに当てはまる会社は、今すぐ期間を決めなくて構いません。

  • 社内の稟議がまだ先の会社: 申請の時期が決まってから、5工程の日数を置けば足ります。先に分類表だけ作っておくと、稟議が早く進みます
  • 扱う情報が公開情報だけ: 機密を入れないなら、審査の工程は軽くなります。①②③の日数は小さく見積もれます
  • すでに審査の枠組みがある: 申請先・承認者・基準が決まっている会社は、その枠組みに沿って日数を置けば足ります

この記事で扱わないことは、次のとおりです。

Summary in English

Conclusion: An AI proof of concept (PoC) period should not be set by the length of the testing alone. It should be built from five stages: classifying the information, designing permissions and connections, internal security review and contract checks, testing, and a decision with handover. This is an editorial framework for buyers, not an official standard.

The Tokyo Metropolitan Government’s industrial labor bureau, in its document published on July 16, 2026, says that when introducing AI, organizations should decide which information may be entered, the permissions of connected tools, the operations allowed, log retention, and who approves outputs. For external AI, it says to confirm contract terms, data retention, and whether inputs are used for training. The document does not mention PoCs, so we found no public guideline for PoC duration.

Start the review before testing. Data preparation and evaluation criteria can run in parallel, but real data should enter an external AI only after approval. Before starting, fix evaluation criteria, a maximum number of days, and the approver. Extend only when the cause lies outside the test, within the maximum days; otherwise stop and decide again.

For reference, our market research gives contract AI PoCs as 1 to 5 million yen and 1 to 3 months as one example (medium confidence). Our two-week AI applicability assessment stays disconnected from production systems; Light is 150,000 yen and Standard is 300,000 yen, excluding tax.

まとめ|期間は「検証の長さ」でなく「審査や判断で止まる工程の日数」まで足して決める

PoCの期間は、検証の長さではなく、審査や判断で止まりやすい工程の日数を先に置いて決めます。

  • 期間は、情報の分類・権限と接続の設計・社内審査と契約確認・検証・判断と引き継ぎの5工程に区切る(編集部の整理)
  • 審査は検証より先に申請する。データ整理と評価指標の決定は並行でき、外部AIへの実データの入力は審査のあとにする
  • 公的資料にPoC期間の目安は見つからなかった。当社の相場調査の1〜3ヶ月(目安)は、審査の日数が含まれるか分からない
  • 延長と中止は、開始前に評価指標・上限日数・承認者を文書にして決める。延長してよいのは、原因が検証の外にあり、上限日数の範囲内のときだけ
  • 範囲を絞りたいときは、2週間・本番非接続の診断を前に挟む選択肢がある

次のアクションは、今日・今週・今月のどれか1つからで構いません。

  • 今日: 審査担当(いなければ責任者、社長自身でも可)に「PoCで使う情報の分類と承認者」を1行で聞く
  • 今週: 早見表の7項目に自社の答えを書き、NGの項目を洗い出す
  • 今月: 5工程の予定表に日付を置き、上限日数と承認者をPoCの計画書に書く

審査の窓口づくりやPoCの区切り方で迷う場合は、当社の無料相談で現状を聞かせてください。

次に読む

更新履歴

  • 2026-10-09: 初版公開。東京都産業労働局の公開資料と、当社の診断条件を反映
  • 次回更新予定: 2026年11月(東京都資料の更新と、PoC期間に関する公的資料の追加の有無を再確認)

本記事は2026年10月9日時点の東京都産業労働局の公開資料と当社の事業情報・相場調査に基づきます(公開日: 2026年10月9日)。PoCの期間と審査の手順は、自社の審査担当・情報管理の責任者・契約先に確認してください。

参考・出典

  • 東京都産業労働局(運営: アデコ株式会社)「フロンティアAI時代の生成AIセキュリティ~ 防御に使うAIと、悪用されるAIエージェントへの備え ~」 https://cybersecurity-taisaku.metro.tokyo.lg.jp/know_more/2026-%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB3-3/(参照日: 2026年10月9日)
  • 当社調査: AI Expert事業ファクトシート(AI適用診断の条件・料金)、2026年10月9日確認
  • 当社調査: AI受託開発・PoCの相場調査、2026年10月9日確認

FAQよくある質問

PoCの期間はどれくらいですか?
公的資料に、PoCの期間の目安は見つかりませんでした。当社が複数の資料から集めた相場では、AI受託開発のPoCは100〜500万円・1〜3ヶ月が一例です(目安として見てください。審査の日数が含まれるかは不明)。期間は検証の日数だけで決めず、情報の分類・権限の設計・社内審査・判断の日数を足して決めます。
AIのPoCとは何ですか?
PoC(Proof of Concept)は、本番に入れる前に、小さな範囲でAIが自社の業務に効くかを試すことです。大きな開発や契約に進む前に、効果と問題点を確かめるために行います。セキュリティ審査込みで考えると、試す範囲に入れてよい情報や権限も一緒に決めることになります。
セキュリティのPoCとは何ですか?
ここでは「AIのPoCを、セキュリティ審査を通しながら行うこと」を指します。東京都産業労働局の資料は、AI導入時に入力してよい情報、接続ツールの権限、実行できる操作、ログ保存、出力の承認者を決めるとしています。PoCの前にこの5つを決めておくと、検証が審査待ちで止まりにくくなります。
「PoC貧乏」とはどういう意味ですか?
試作を繰り返すだけで本番に進まず、費用だけがかさむ状態を指す言い方です。開始前に評価指標・上限日数・承認者を決めておかないと、延長が続いて起きやすくなります。延長してよい条件と止める条件を先に文書にしておくのが、いちばん手軽な予防策です。
セキュリティ審査はPoCのいつから始めるべきですか?
検証を始める前、情報の分類を決める段階から始めます。審査と並行して進められるのは、データの整理や評価指標の決定などです。外部のAIに実データを入れる作業は、審査と契約条件の確認が終わってからにします。
PoCの期間が延びそうなときは続けてよいですか?
開始前に決めた上限日数の範囲内で、原因が審査待ちや情報の整備のように検証の外にあるときだけ延長します。上限日数を超える、または評価指標に届く見込みが立たないときは止めて判断し直します。延長を無制限に続けないために、延長の条件と止める条件は開始前に文書にしておきます。
PoCの審査には何を準備すればよいですか?
準備するのは8項目です。入力する情報の分類、接続するツールの権限、実行できる操作、ログ(=AIに何を入れ何が出たかの記録)の保存方法、出力の承認者の5つに加えて、外部のAIを使うなら契約条件・データ保持・学習利用の有無(入れた内容がAIの改良に使われるか)を確かめます。8項目を審査担当に渡し、空欄があれば申請の前に埋めます。
PoCの前に本番に触れない段階を挟む方法はありますか?
あります。当社のAI適用診断は、2週間・本番非接続(=実際に使っているシステムにはつながない)・現場同席の条件で、業務を見て適用の可否を整理します。ライト診断が15万円、標準診断が30万円(いずれも税別)で、本番化と保守は別契約です。PoCで本番の情報に触れる前に、範囲を絞る選択肢になります。

Writerこの記事を書いた人

AI Expert 編集部運営: Orga合同会社

非エンジニアの運営者が、自社の営業(リスト作成・文面・送付・資料・日報)をAIで毎日動かしながら書いています。中小企業のAI適用診断・実務題材型AI研修・プロAI人材のマッチングを提供。

この記事の検証方法: 数字・価格・仕様は一次情報(公式ドキュメント・公式料金ページ)か自社の実測だけを使い、出典に参照日を付けています。公開前に機械検証(verify_post)と、書き手とは別のAIによる事実照合を通しています。

この記事の検証環境: 東京都産業労働局の資料「フロンティアAI時代の生成AIセキュリティ」の原文を2026年10月9日に開き、本文で引用した2か所と見出しを照合しました。診断の条件(2週間・本番非接続・現場同席、ライト15万円/標準30万円・税別)は当社の事業ファクトシート、PoCの相場は当社の相場調査(確度: 中)で確かめています。公開前に、書き手とは別のAIが出典と1つずつ照らし合わせました。