
結論: 問い合わせの分類は、AIに「仕分けと理由の記録」まで任せ、送信と判断を人に残す設計から始めます。この記事では、4つの設計基準(任せる範囲、カテゴリ、優先度と人に戻す基準=AIに任せず人が先に確認する条件、導入手段3種の違い)と、誤分類の確かめ方、個人情報の入力前の確認を順に書きます。
この記事の要点
- AIに任せるのは「分類・優先度・理由の記録」の3つ。返信の送信や、お客様への約束は人が決める。分類は間違えても直せるが、送った文面は戻せないため
- カテゴリは5〜7個と「その他」から始める。これは当社の設計上の想定で、実測ではない。分け方の基準は、担当者の動きが同じかどうか
- 優先度は「緊急・通常・後回し可」の3段階。AIの確信が低い件、複数カテゴリが混ざる件、個人情報や苦情の語を含む件は、人が先に読む
- 導入手段は、ルール(=語で振り分ける方法)・既存のヘルプデスク機能・生成AIの依頼文(=AIに打ち込む指示の文章)の3種。問い合わせの種類が固定か、文面が自由かで選ぶ
- 個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、個人情報を含むプロンプト(=AIへの入力文)の入力前に、利用目的の範囲と機械学習への利用を確かめるよう求めている
この記事は、社内に届く問い合わせ(メール・入力フォーム・電話のメモ)が増えて、AIで分類し担当に振り分けたい方に向けて書いています。対象は中小企業の経営者や業務担当の方です。「AIで問い合わせに対応する」と決めた方が対象です。その先の「何をAIに任せ、どこで人が確認し、どの方法で始めるか」を決める記事です。
なお「AIの分類」と検索すると、AIの種類の分け方が出てきます。この記事は、そちらではなく、届いた問い合わせを仕分ける業務の話です。返信の自動化を含む全体の進め方は問い合わせ対応の自動化に書きました。ここでは分類の設計だけに絞ります。製品の比較は書きません。
今日やることは1つです。自社の直近の問い合わせを20件、紙に書き出して、担当者の動きが同じものどうしで仲間分けしてください。書き出しは、件名だけを写す、メールを印刷する、のどちらでも構いません。次にやる作業が同じ件を同じ山に置きます。できた仲間の数と名前が、カテゴリ案になります。
AIに任せる範囲|分類・優先度・理由の記録まで
AIに任せるのは、分類・優先度の仮付け(=人が確認する前の、とりあえずの振り分け)・その理由の記録の3つまでです。 送信と、お客様への約束は人が決めます。
分類は間違えても、人が見て直せます。送ってしまった返信は取り消せません。この差が、線を引く場所の理由です。表1に、作業ごとの線引きをまとめました。
表1 AIに任せる作業/人が決める作業
| 作業 | 任せる? | 理由 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| カテゴリの仮付け | AIに任せる | 間違えても人が一覧で直せる | 一覧の「AIの分類」と「人の確認」の列がずれた件を数える |
| 優先度の仮付け | AIに任せる | 並べ替えの材料にとどまり、対応は人が決める | 緊急の件がAIの判定で後回しになっていないか、週に1度見る |
| 分類の理由の記録 | AIに任せる | 理由が読めると、人の確認が速くなる | 理由が本文の言葉を引いているか、数件ずつ見る |
| 返信の送信 | 人が決める | 取り消せない。約束や謝罪の判断が入る | AIに送信の権限を渡さず、AIの出力を担当者が自分でコピーして使う形か確かめる |
| 返金・契約・例外対応の判断 | 人が決める | 会社の責任に関わる | 返金や例外は誰が決めるかを社内メモに1行書き、AIの出力は決定ではないと添える |
| カテゴリ定義の見直し | 人が決める | 業務の変化は、現場の人にしか分からない | 定義を直した日と理由を記録に残す |
AIが動くのは、受信から人の確認まで。返信は人が送る
図の内容: 受信、AIが分類・優先度・理由を仮付け、人が確認、人が返信という4段階で、AIが担当するのは2段階目だけ。
確かめ方は、導入前に「送信の操作を誰が持つか」を1行で書くことです。「AIの出力は担当者が自分でコピーして貼る」「送信は担当者の画面で押す」のように、操作の持ち主を決めておきます。この1行がない運用は、後から自動送信に広がりやすいです。
分類カテゴリの決め方|5〜7個から始める理由
カテゴリは、担当者の動きが同じ問い合わせを1つにまとめて作ります。 当社の設計上の想定では、まず5〜7個と「その他」で始め、足りなければ増やします。この数字は実測ではなく、始めるときの目安です。
理由は、カテゴリが増えるほど、AIも人も境目で迷う件が増えるからです。迷う件が増えると、人の確認が追いつかなくなります。逆に少なすぎると、一覧を見ても担当を決められません。
① 担当者の動きで分ける
「商品への質問」「不具合の報告」のように、話題で分けたくなりますが、基準は「誰が、何をするか」です。折り返し電話をする、原因を調べる、請求書を確認する、のように、次にやる作業が同じなら同じカテゴリです。
たとえば、営業担当が折り返す件と、サポート担当が調べる件と、経理が確認する件は、話題が似ていても別のカテゴリにします。逆に、話題が違っても同じ担当が同じ動きをする件は、1つにまとめられます。担当が1〜2人の会社でも、分け方の基準は「次にやる作業」のままです。1人が複数の担当を兼ねて構いません。
② 「その他」を必ず置く
どれにも当たらない件を受ける場所が要ります。「その他」の件が多い月は、カテゴリの見直しの合図です。「その他」が空になるまで細かく分ける必要はありません。
③ 複数カテゴリが付く件
1通のメールに「見積がほしい」と「不具合も出ている」が入っている場合があります。この場合は、主なカテゴリを1つ決め、副のカテゴリを別の列に書く形が扱いやすいです。主は「人が最初に何をするか」で決めます。複数に当たる件は、次の節の通り、人が先に読みます。
架空の文面で見ると、次のようになります。
「先週から管理画面にログインできません(架空)。この機会に、プランを上げた場合の見積もいただけますか。」
この1通は、ログインできないという「利用中の不具合・トラブル」と、プラン変更の「見積・購入の相談」が混ざっています。人が最初にすることは、業務を止めている不具合の確認です。主は「利用中の不具合・トラブル」、副は「見積・購入の相談」とします。人に戻す条件の「複数カテゴリが混ざる」に当てはまるため、人が先に読みます。
表2 カテゴリ定義の書き方(ひな形)
| カテゴリ名 | 判断基準 | 判断に迷う例 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 見積・購入の相談 | 買う前の質問、金額や納期の問い合わせ | 見積の後に仕様を変えたいという連絡は、この区分か、契約中の相談かで迷う | 営業担当 |
| 利用中の不具合・トラブル | 使えない、動かない、間違っているという報告 | 使い方が分からないだけの質問と区別がつかない | サポート担当 |
| 使い方の質問 | 手順や設定を知りたいという内容 | 不具合の疑いが混ざる | サポート担当 |
| 請求・支払・契約 | 請求書、入金、解約、契約内容の確認 | 解約の相談に苦情が混ざる | 経理・契約担当 |
| 苦情・強い不満 | 怒りや不満が主な内容 | 不具合の報告に不満が添えられている | 責任者 |
| 取材・提携・営業の持ち込み | 自社に何かを提案してくる連絡 | 顧客からの紹介との区別 | 経営者・広報 |
| その他 | 上のどれにも当たらない | — | 受付担当 |
上の7行は、一般の会社を想定したひな形です。実在する企業の数字や実例ではありません。自社に合わせて、名前と担当を書き換えてください。
業種ごとの読み替えも書いておきます。企業を相手に売る会社なら「見積・購入の相談」が厚くなります。通販なら「配送・返品」が独立して要ります。士業や少人数の事務所なら、「新規のご相談」と「既存のお客様の連絡」を分けるだけで、担当の動きがはっきりします。
表2を使って分類した結果は、一覧では次のような形になります。文面は、すべて架空の想定です。実際に動かした結果ではありません。
表3 分類結果の見本(架空の5件)
| 問い合わせ(架空) | カテゴリ(主/副) | 優先度と、人が先に読むか | 理由の例 |
|---|---|---|---|
| 「見積をお願いします。納期は来月末希望です」 | 見積・購入の相談/— | 通常(先読みなし) | 「見積」「納期」とあり、買う前の相談 |
| 「ログインできず、今日の業務が止まっています」 | 利用中の不具合・トラブル/— | 緊急(先読みなし) | 「ログインできず」「業務が止まって」とあり、作業が止まっている |
| 「請求額が契約と違います。対応に不満です」 | 請求・支払・契約/苦情・強い不満 | 緊急(人が先に読む:複数カテゴリ・苦情の語) | 「請求額が契約と違う」は支払に関わる。「不満」の語もある |
| 「設定の手順を教えてください」 | 使い方の質問/— | 通常(先読みなし) | 「手順を教えて」とあり、手順を知りたい内容 |
| 「ご挨拶をかねて、協業のご提案をしたく」 | 取材・提携・営業の持ち込み/— | 後回し可(先読みなし) | 自社への提案の連絡で、急ぎの言葉がない |
確かめるには、表2を埋めたあとで、冒頭の20件を1件ずつ当てはめます。迷った件の数を数えてください。20件のうち迷う件が多ければ、判断基準の文言を直します。
優先度の決め方|3段階と「人に戻す」基準
優先度は、まず「緊急・通常・後回し可」の3段階で始めます。 加えて、AIの確信が低い件などは、優先度とは別に、人が先に読む対象(=人に戻す件)にします。緊急が多すぎて並べ替えの役に立たないときは、緊急の定義を絞ります。
表4 優先度の定義
| 段階 | 目安 | 例(想定) |
|---|---|---|
| 緊急 | 利用者の作業が止まっている/支払や契約に関わる | 「システムにログインできず業務が止まっている」「請求金額が契約と違う」 |
| 通常 | 対応は要るが、数日の幅がある | 「見積を出してほしい」「設定のやり方を教えてほしい」 |
| 後回し可 | 急がない案内、要望、感想 | 「こういう機能があるといい」 |
例の文面は、架空の一般的なものです。実際の問い合わせから取った文ではありません。
① 人に戻す3つの条件
次の3つのどれかに当たる件は、優先度が何であっても、人が最初に読みます。
- AIの確信が低い(依頼文でAIに確信を「高・中・低」で答えさせ、「低」の件。または、分類の理由を書かせても本文の言葉を引けていない件)
- 複数のカテゴリが混ざっている
- 個人情報(口座番号・病歴など、扱いに注意が要る情報)や苦情の語(例: 「不満」「返金してほしい」「解約したい」)を含んでいる
この3つは、AIの分類が外れやすく、外れたときの影響が大きい件です。優先度は、人が並べる順番の材料にとどまります。
3つの条件に当たる件は人が先に読み、残りは優先度の順に確認する
図の内容: AIが分類した1件のうち、確信が低い・複数カテゴリが混ざる・個人情報や苦情の語を含む件は人が最初に読み、それ以外は緊急・通常・後回し可の順に人が確認する。
② 優先度の見落とし
「緊急」を見落とさないために、AIが「後回し可」と付けた件も、週に一度は人が一覧で眺めます。見るのは件名と理由の列だけで構いません。後回しに入っていた緊急の件が見つかったら、その件の文面を表2の「判断に迷う例」に足します。
確かめ方: 優先度ごとに、人が最初に見る時刻を決めておきます。「緊急は受信後すぐ、通常は当日中」のように、会社の体制に合う形で書き、守れる間隔にします。
AIへの指示の書き方と、一覧に残す項目
AIへの依頼は、「カテゴリの一覧と判断基準」「優先度の定義」「人に戻す条件」「出力の形」の4つを渡せば、分類の材料はそろいます。 会社ごとに中身が変わるため、全文ではなく、貼って書き換えられる骨組みを載せます。
- 渡す物: 表2のカテゴリ名と判断基準、表4の優先度の定義、人に戻す3つの条件
- 出す物: カテゴリ(主と副)、優先度、確信(高・中・低)、理由(本文のどの言葉を根拠にしたか)、人に戻す条件に当たるか
- 禁じる物: 返信文の作成と送信、お客様への約束、返金や例外の判断、カテゴリ一覧にない名前を作ること
依頼文の骨組みは、次のとおりです。【 】の中を自社の内容に書き換えて使います。
あなたは問い合わせの仕分け係です。次の問い合わせを分類してください。 【カテゴリ】表2のカテゴリ名と判断基準をここに貼る。どれにも当たらない件は「その他」にする。 【優先度】緊急・通常・後回し可。定義は表4をここに貼る。 【出力】カテゴリ(主・副)、優先度、確信(高・中・低)、理由(本文のどの言葉を根拠にしたか)、人が先に読むべきか(確信が低い/複数カテゴリが混ざる/個人情報や苦情の語がある、のどれかに当たれば「はい」)。 【禁止】返信文の作成と送信、お客様への約束、返金や例外の判断、上のカテゴリ一覧にない名前を作ること。 【問い合わせ】ここに1件を貼る。
道具を使い慣れていない方は、次の3手順で試せます。生成AI(=文章で指示を打ち込むと答えを返すAI)は、チャット形式の画面で使います。
- 表計算に、表5の列(受信日時・件名・カテゴリ・優先度・理由・人の確認結果)を作る
- 生成AIのチャット画面に、上の依頼文を貼り、最後の【問い合わせ】に1件を入れて送る
- 返ってきた分類・優先度・理由を一覧に写し、「人の確認結果」の列に、合っていたか直したかを書く
この段階では、プログラムも自動化の設定も要りません。試す件には、氏名や会社名を架空の値に置き換えたものを使います(置き換え方は「個人情報の扱い」の節に書きました)。
出力は一覧表にそろえます。一覧に残す項目は表5のとおりです。
表5 一覧に残す項目
| 列 | 中身 | 誰が書く |
|---|---|---|
| 受信日時・件名 | 届いた時刻と件名 | 自動 |
| カテゴリ(主・副) | AIの仮付け | AI |
| 優先度 | AIの仮付け | AI |
| 理由 | 本文のどの言葉を根拠にしたか。確信(高・中・低)も添える | AI |
| 人の確認結果 | 合っていた/直した(直した先を記入) | 人 |
「人の確認結果」の列が、次の節で使う誤分類の記録になります。この列を最初から作っておくと、後から精度を見直す材料が自然に溜まります。
確かめ方: AIの出力に「理由」の列が必ずあるかを見ます。理由が空の行が出るなら、依頼の条件に「理由は本文の言葉を引いて書く」と足します。
導入手段3種の違い|ルール・既存機能・生成AIの依頼文
導入手段は、「ルールベース」「既存のヘルプデスク機能」「生成AIの依頼文」の3種で、問い合わせの種類が固定か、文面が自由か、件数と更新頻度で選びます。 この記事では製品名を出さず、一般名で比べます。
表6 導入手段3種の比較
| 方法 | 向く場面 | 向かない場面 | 始めるまでの重さ |
|---|---|---|---|
| ルールベース(=「この語があればこの担当」と決める方法) | 種類が固定で、件名や選択式のフォームで区別できる | 文面が自由で、言い回しがばらつく | 軽い。語の一覧と担当を決めれば始められる |
| 既存のヘルプデスク機能(CRM=顧客情報の管理ソフトや、メール管理のソフトに組み込まれた分類機能) | すでにその道具で問い合わせを受けている | 道具を使っておらず、これから入れる | 中程度。契約や設定の確認が要る |
| 生成AIの依頼文(カテゴリと条件を文章で渡して分類させる) | 文面が自由で、カテゴリが変わりやすい | 個人情報の扱いが未定、件数が多く自動で流す仕組みが要る | 軽い〜中程度。試すだけなら依頼文だけで始められる |
選び方の目安は3つです。
- 問い合わせの種類が固定で、フォームの選択式や件名で区別できるなら、ルールベースで足ります
- 普段、メールや問い合わせの管理に使っているソフトに仕分けの機能があるなら、その分類機能を先に試します
- 文面が自由で、カテゴリを見直す頻度が高いなら、生成AIの依頼文が向きます。件数が増えて自動で流したい段階で、仕組みづくりを検討します
迷ったら、まず生成AIの依頼文で5件ほど試し、種類が固定でルールで足りると分かれば、ルールに切り替えます。
3種は排他ではありません。「選択式のフォームはルールで振り分け、自由記述だけを生成AIに見せる」という組み合わせもできます。
① 受託開発との切り分け
分類を仕組みとして作り込む段階では、受託開発(=外部の会社に作ってもらうこと)に出す選択肢があります。ただし、どの手段が合うかを決める前に出すと、作る物がずれやすくなります。当社には、2週間で進める「AI適用診断」があります。実際の業務のシステムにはつながず、現場に同席して進めます。ライト診断が15万円、標準診断が30万円(どちらも税別)で、研修・試作・実装のどれで進むかを切り分ける入口です。実際の業務で動かす段階(本番化)と保守(=動かし続けるための世話)は別の契約になります。診断の中身はAI適用診断とはに書きました。
チャットボットとして作る場合は、分類とは別の設計になります。作り方はAIチャットボットの作り方を見てください。
確かめるには、手段を選ぶ前に、直近1か月の問い合わせの「種類の数」と「文面のばらつき」を表にします。種類が少なく文面がそろっていれば、ルールだけで足りる場合があります。
誤分類を防ぐ確認の仕方
誤分類は、本番(=実際に問い合わせを流し始めること)の前に少数の実物で試し、人の分類と照らし、ずれ方を記録して直す、という繰り返しで防ぎます。 ここで書くのは測り方だけで、精度の数字は載せません。当社には問い合わせ分類を行った実績がなく、示せる測定値がないためです。
手順は4つです。
- 過去の問い合わせから、各カテゴリが入るように、合計20件前後の実物を選ぶ(当社の目安で、実測ではない。冒頭の仲間分けと同じ件を使ってよい)
- 先に人が分類を付けておき、AIの分類と照らす
- ずれた件を「どんなパターンのずれか」で記録する(例: 不具合と使い方の取り違え)
- パターンごとに、カテゴリの判断基準や依頼の条件を直し、同じ件で再度試す
試す→照らす→記録する→直す。この流れを、実際に流し始めた後も繰り返す
図の内容: 少数の実物で試す、人の分類と照らす、ずれ方を記録する、定義と条件を直す、の4段階を繰り返し、直したら再び試す。
記録は、次の枠で足ります。件数は自社で数えて入れてください。
表7 誤分類の記録ひな形
| 確認した回 | 試した件数 | 人と一致した件数 | ずれのパターン(取り違えの種類) |
|---|---|---|---|
| 1回目 | ( )件 | ( )件 | 例: 不具合と使い方の取り違え |
| 2回目(定義を直した後) | ( )件 | ( )件 | 例: 解約の相談と苦情の取り違え |
理由欄にも効果があります。AIが理由を書くと、人は分類の正否を、本文を最初から読み直さずに確かめられます。理由が本文と噛み合っていない件は、分類も怪しいと見て、優先して見直します。
確かめ方は、最初の確認を「一致した件数」でなく「ずれたパターンの数」で見ることです。ずれが1つのパターンに集まっていれば、判断基準の一文を直すだけで済みます。
個人情報の扱い|入力前に確かめる3点
確かめるのは、利用目的の範囲・機械学習に使われないか・利用規約とプライバシーポリシーの3点です。 問い合わせの文面には、氏名・連絡先・契約の内容が入りやすく、AIに入力する前に確認が要ります。個人情報保護委員会は、令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、事業者と利用者に確認を求めています。
同文書の「(1)個人情報取扱事業者における注意点」の①は、次のとおりです。なお、引用中の「プロンプト」は、AIへの入力文のことです。
個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。
問い合わせ分類に読み替えると、「問い合わせに対応するため」に集めた氏名や連絡先を分類に使うことが、その目的の範囲内かを、先に確かめます。
同じく②は、入力した内容がAIの事業者の学習に使われないかを確かめるよう求める部分です。次の記述があります。
個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ることなく生成 AI サービスに個人データを含むプロンプトを入力し、当該個人データが当該プロンプトに対する応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、当該個人情報取扱事業者は個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある。そのため、このようなプロンプトの入力を行う場合には、当該生成 AI サービスを提供する事業者が、当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること。
読み替えると、問い合わせの文面をそのままAIに入れるなら、入力した内容がサービス側の機械学習に使われないかを確かめます。
「(3)一般の利用者における留意点」の③も引いておきます。
生成 AI サービスの利用者においては、生成 AI サービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を十分に確認し、入力する情報の内容等を踏まえ、生成 AI サービスの利用について適切に判断すること。
3つの引用から、入力前に確かめる点は次の3つになります。
- 利用目的の範囲: 分類に使うことが、問い合わせの対応という目的の範囲に入っているか
- 機械学習に使われない設定か: サービスの事業者が、入力した内容を自社のAIの学習材料にしない扱いになっているか
- 利用規約とプライバシーポリシー: 入力する情報の内容に照らして、規約が許す使い方か
確認が取れない間は、氏名と連絡先を伏せてから入れる、または個人情報の含まれる問い合わせは入れない、という運用にします。試す段階では、次のように架空の値へ置き換えると、分類に必要な内容を残せます。
表8 検証用の置き換え例(架空)
| 元の文面 | 置き換え後 |
|---|---|
| 山田太郎です。株式会社○○の経理を担当しています。 | 顧客Aです。会社Bの経理を担当しています。 |
| 契約番号12345の請求額が違います。 | 契約Xの請求額が違います。 |
| 折り返しは090-0000-0000までお願いします。 | 折り返しは【電話番号】までお願いします。 |
「何に困っているか」の部分は変えずに、人や会社を特定できる語だけを置き換えます。置き換えの対応表は社内だけで持ち、AIには渡しません。
試す費用の面では、利用料の相場をこの記事では示せません。先に規約と料金表で、使うサービスの料金と無料で使える範囲を確かめてください。「入力内容を学習に使わない」と書いてある契約・プランかどうかも見ます(探し方は、この節の最後の「確かめ方」に書きました)。少数の件を手で試す段階は、新しい仕組みを買う前の確認にあたります。ここに書いたのは、上の文書の引用と、その読み替えです。実際の判断は、公式の資料と、必要に応じて専門家(弁護士など)で確かめてください。
生成AI全般の入力ルールは中小企業の生成AIセキュリティに書きました。
確かめ方は、使うサービスの利用規約とプライバシーポリシーを開き、「入力内容の学習への利用」の項目を探して、結果を1行で社内の記録に残すことです。見つからないときは、事業者に問い合わせます。
早見表|始める前の確認項目
始める前に確かめることを、1表にまとめました。 「良い答え」が返らない項目が1つでもあれば、そこから先に整えます。
表9 始める前の確認項目
| 確認項目 | 良い答え | NGの答え |
|---|---|---|
| AIに任せる範囲 | 分類・優先度・理由の記録まで。送信は人 | 返信の送信までAIが行う前提になっている |
| カテゴリ | 担当者の動きで分けた5〜7個と「その他」 | 話題ごとに細かく分けて10個を超えている |
| 優先度 | 3段階の定義が文章になっている | 担当者の勘で付けている |
| 人に戻す条件 | 確信の低さ・複数カテゴリ・個人情報や苦情の語が決まっている | 全件をAIに任せ、戻す条件がない |
| 導入手段 | 種類の固定/文面の自由さで選んでいる | 他社が使っているから、という理由だけで選んでいる |
| 誤分類の確認 | 少数の実物で、人の分類と照らした記録がある | 試さずに本番に流した |
| 個人情報 | 利用目的・学習への利用・規約を確認し、記録した | 確認せずに文面をそのまま入力している |
今すぐ分類を入れなくていい会社と、この記事に含まれないこと
次の会社は、AIによる分類を今すぐ入れなくて構いません。
- 問い合わせが週に数件程度で、担当者が毎日全件を読み、その日のうちに振り分けられる
- 問い合わせの種類がほぼ1つで、振り分ける先が分かれない
- 個人情報の取り扱いがまだ決まっていない。AI利用の入力ルールを先に整えてください
この記事に含まれないことも書いておきます。
- 製品の比較: 製品名を挙げた比較は書いていません。自社の業務の棚卸しから始めたい方は、AI業務診断を見てください
- 返信の自動送信と、問い合わせ対応の全体: AI 問い合わせ 自動化で、任せる範囲と5ステップを書いています
- チャットボットの構築: 作り方はAIチャットボットの作り方にあります
- 電話の音声認識: 電話対応は電話対応AIで扱っています。この記事は、文字になった問い合わせだけが対象です
Summary in English
Classifying inquiries with AI works best when AI handles sorting and recording the reason, while people keep the sending and the decisions. Sorting errors can be corrected by a person, but a sent reply cannot be taken back.
This article gives four design criteria. First, limit AI to three tasks: category, priority, and a written reason. Second, start with five to seven categories plus “other”. This number is our design assumption, not a measured figure. Split categories by what the person in charge does next, not by topic. Third, use three priority levels: urgent, normal, and can wait. Route to a person first any item where the AI is unsure, where several categories are mixed, or where personal information or complaint wording appears. Fourth, choose the method by how fixed the inquiry types are: rule-based sorting, the classification feature of an existing help-desk tool, or a prompt given to a generative AI.
To catch misclassification, test a small set of real past inquiries, compare the AI result with a person’s, record the type of each mismatch, and fix the definitions. We have no measured accuracy of our own for inquiry classification, so none is given.
On personal information, the Personal Information Protection Commission of Japan, in its notice on generative AI services dated June 2, Reiwa 5, asks businesses to confirm that input stays within the stated purpose of use and that the provider does not use personal data for machine learning. Check this before entering inquiry text. The first action: write down your latest 20 inquiries and group them by what the responsible person does.
まとめ|分類は仕分けまで、送信は人に残す
分類の設計は、4つの基準(任せる範囲、カテゴリ、優先度と人に戻す基準、導入手段)と、確認2点(誤分類、個人情報)を、順に決めれば始められます。
- AIに任せるのは、分類・優先度・理由の記録の3つ。送信と約束は人が決める
- カテゴリは、担当者の動きで分けた5〜7個と「その他」から始める(当社の想定で、実測ではない)
- 優先度は緊急・通常・後回し可の3段階。確信が低い・複数カテゴリが混ざる・個人情報や苦情の語を含む件は、人が先に読む
- 導入手段は、ルール・既存のヘルプデスク機能・生成AIの依頼文から、種類の固定さと文面の自由さで選ぶ
- 誤分類は、少数の実物で人の分類と照らし、ずれ方を記録して直す繰り返しで防ぐ
- 個人情報は、利用目的・機械学習への利用・規約を、入力する前に確かめる
次のアクションは、3つのうちどれか1つで構いません。
- 今日: 直近の問い合わせ20件を紙に書き出し、担当者の動きで仲間分けする
- 今週: 表2と表4を自社の言葉で埋め、使うサービスの規約で「入力内容の学習への利用」を確かめる
- 今月: 少数の実物で試し、表7にずれ方を記録して、定義を1回直す
分類を始める前に、自社に合う進め方や手段を切り分けたいときは、無料の初回相談(30分)で整理することもできます。
次に読む
- 返信まで含めた問い合わせ対応の全体を知りたい → AI 問い合わせ 自動化|任せる範囲の線引きと5ステップ
- 分類の前に、自社の業務のどこにAIが合うかを見たい → AI業務診断|自社でできる4ステップと有料診断の中身
- 文面をAIに入れる前のルールを整えたい → 中小企業の生成AIセキュリティ|入力してはいけない情報と設計の3原則
- 手段を決める前に、診断で切り分けたい → AI適用診断とは?30万円を払う前に「分かること・分からないこと」
更新履歴
- 2026-10-10: 初版公開。個人情報保護委員会の令和5年6月2日付の文書を反映
- 次回更新予定: 2027年1月(同文書の改訂有無・本文の表記を再確認)
本記事は2026年10月10日時点の個人情報保護委員会の資料に基づきます(公開日: 2026年10月10日)。個人情報の取り扱いの最終判断は、公式の資料と専門家で確認してください。
参考・出典
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日) https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf(参照日: 2026年10月10日)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(入口ページ) https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/(参照日: 2026年10月10日)
- 当社調査: AI適用診断の条件と価格は、当社(AI Expert・運営Orga合同会社)の案内資料による(2026年10月10日時点)
FAQよくある質問
- AIの分類と、問い合わせの分類は何が違いますか?
- 「AIの4分類」などの話は、AIそのものの種類の分け方です。問い合わせの分類は、届いた問い合わせを内容ごとに仕分け、担当と優先度を決める業務の話で、別の問題です。この記事で扱うのは後者で、AIには仕分けと理由の記録を任せ、送信と判断は人に残す設計を書いています。
- 問い合わせはいくつのカテゴリに分けるのがよいですか?
- 当社の設計上の想定では、5〜7個から始めます。実測した数字ではありません。担当者の動きが同じ問い合わせを1つにまとめ、どれにも当たらない件のために「その他」を必ず置きます。細かく分けすぎると、AIも人も迷う件が増えます。
- 優先度はどう決めればよいですか?
- 3段階が扱いやすいです。利用者の作業が止まっている件や、支払・契約に関わる件を「緊急」、それ以外を「通常」、急がない案内や要望を「後回し可」とします。AIの確信が低い件、複数のカテゴリが混ざる件、個人情報や苦情の語を含む件は、優先度に関係なく人が先に読みます。
- AIが分類を間違えたときは、どう防ぎ、どう気づけますか?
- 本番(=実際に問い合わせを流し始めること)の前に、少数の実物でAIの分類と人の分類を照らし合わせます。ずれた件は、どの種類の件でずれたかを記録し、カテゴリの定義や条件を直します。本番でも、分類の理由をAIに書かせて人が確認し、定期的に抜き取りで見直すと、間違いに気づきやすくなります。
- 問い合わせに個人情報が含まれていてもAIに入力してよいですか?
- 利用目的の範囲内か、サービスの事業者が機械学習に使わないかを確かめてから入力します。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、これらを十分に確認するよう求めています。確認できないうちは、氏名や連絡先を伏せてから入れるか、入れない運用にしてください。最終判断は公式の資料か専門家で確かめます。
- ルールベース・既存のヘルプデスク機能・生成AIの依頼文は、どう使い分けますか?
- 問い合わせの種類が固定で文面が決まっているならルールベース(=「この語があればこの担当」と決める方法)が軽く済みます。すでにヘルプデスク機能を使っているなら、その機能の分類から試します。文面が自由で種類が変わりやすい場合は、生成AIに渡す依頼文で分類と理由を出させる方法が向きます。件数と更新の頻度でも選べます。
- 分類から返信の自動送信までAIに任せてよいですか?
- 最初は任せない前提を勧めます。分類は間違えても人が直せますが、送信した文面は取り消せません。返信の自動化は、分類の確認で誤りの型が出尽くし、送ってよい範囲を人が決めてから別に検討します。
- エンジニアがいなくても、問い合わせの分類を試せますか?
- 試せます。表計算の一覧に問い合わせを1件ずつ貼り、チャット形式の生成AIに依頼文と1件を渡して、返ってきた分類・優先度・理由を一覧に写します。仕組みを作らず、手で5件ほど試す段階なら、プログラムは要りません。件数が増えて自動で流したくなった段階で、仕組みづくりを考えます。
- 試すのにどのくらい費用がかかりますか?
- 利用料は、使うサービスと契約の種類で変わります。この記事に載せられる相場の数字はありません。少数の件を手で試す段階では、新しい仕組みを買わずに、すでに契約している生成AIや無料の範囲で足りるか、先に規約と料金を確かめてください。本番に流す仕組みを作る段階は、別に見積もりを取ります。
- 検証用に問い合わせを使うとき、氏名や会社名はどう伏せればよいですか?
- 氏名・会社名・契約番号・連絡先を、架空の値に置き換えてから入力します。たとえば「山田太郎」は「顧客A」、「株式会社○○」は「会社B」、契約番号は「契約X」にします。置き換えても、分類に必要な「何を困っているか」の部分は残るため、試す目的には足ります。置き換えの対応表は、社内だけで持ちます。
- 問い合わせ分類を始める前に、何から準備すればよいですか?
- 直近の問い合わせを20件ほど紙に書き出し、担当者の動きで仲間分けしてカテゴリ案を付けます。同時に、個人情報の扱いと、人に戻す条件を決めます。ここまでは道具を選ぶ前にできる作業です。


