
結論: AI導入の相談は、窓口を選ぶことではなく、相談前に決めた3点(課題・今の業務の流れ・予算と期限)を持ち込むことで答えの精度が上がります。この記事では、相談前の準備、公的窓口の使い方、当日の聞き方、相談後の判断を、5ステップと質問7つにして書きます。
この記事の要点
- 相談で持ち込むのは、課題1行・今の業務の流れ・予算と期限の3点。3点を1行ずつ書いた紙1枚(相談メモ)で足りる
- 公的窓口のよろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所で、全国に窓口がある。何度でも無料で相談できる(中小企業基盤整備機構の公式サイトより)
- 当日は、売り込みに偏っていないかを確かめる質問を7つ聞く。答えが具体的かどうかは、相談先の中身を知る判断材料の1つになる
- 相談後は「そのまま進む」「別窓口で裏を取る(=別の窓口にも同じ質問をして、答えが合うか確かめる)」「見送る(=今回は進めず、社内で整理して出直す)」の3つから決める。その場で契約しなくてよい
この記事は、AI導入を考え始め、相談窓口を探してきた中小企業の経営者や推進担当の方に向けて書いています。「どの種類の窓口に相談するか」は、すでに決めた方が対象です。公的無料・民間有償・ベンダー(=AI製品を売る会社)の違いと選び方は、AI導入の相談窓口|公的無料と民間有償の違いに書きました。この記事は、窓口を決めたあとの「相談前の準備・当日の聞き方・相談後の判断」だけを扱います。
今日やることは1つです。次の3項目を、紙かメモアプリに1行ずつ書いてください。「解きたい課題(1行)」「今の業務の流れ(誰が何をどの順で)」「使える予算と期限の目安」です。この紙を、この記事では「相談メモ」と呼びます(書類を3つ作る意味ではありません)。この相談メモがあると、一般的なAIの説明から自社の作業の話へ進みやすくなります。
AI導入の相談窓口とは|まず決めたい3点
AI導入の相談窓口とは、自社のどの業務にAIを使うか、何から始めるかを、外部の人に相談できる入口のことです。国の無料の経営相談所もあれば、民間の有償・無償の相談もあります。種類の違いは前掲の記事に任せ、ここでは、相談メモに書く3点の中身を表にします。
| 決める点 | 中身 | 決まっていないとどうなるか |
|---|---|---|
| 課題 | 何が困っているかを1行で。「AIを入れたい」ではなく「見積書の転記に毎週時間を取られている」のように業務の名前で書く | 窓口側は一般的なAIの説明しかできず、相談が雑談で終わる |
| 今の業務の流れ | 誰が何を受け取り、どこで転記・確認し、誰へ渡しているか | 時間がかかる作業や、人の確認を残す場所(=AIの結果を人が確かめる工程)が伝わらない |
| 予算と期限 | 初期と継続で使える予算の目安、いつまでに何が動いてほしいか。未定なら社内で決める人と時期を書く | 提案が大きくなりすぎたり、希望時期とのずれが見積後に分かったりする |
確かめ方は簡単です。3つとも、他の人に読み上げて、聞いた人が内容を言い直せるかを試してください。読み上げる相手がいなければ、翌朝に自分で読み返して、一言で言えるかを見てください。言い直せなければ、まだ相談の準備が足りていません。
窓口の使い方5ステップ(全体地図)
窓口の使い方は、相談前に3つ、当日に1つ、相談後に1つの計5ステップです。順番に確認し、相談の終わりに「次に何をするか」を持ち帰ることを目指します。すでに民間の窓口に決めた方は、③を読み飛ばして④へ進めます。
窓口を使う流れは5ステップ。準備の3つが終われば、当日はほぼ聞くだけになる
図の内容: 相談前の3ステップ(相談メモ、出す情報、公的窓口の予約と確認)、当日の質問7つ、相談後の3つの判断という、窓口を使う5ステップの順番。
| ステップ | やること | 終わりの目安 |
|---|---|---|
| ① 相談メモを作る | 課題1行・今の業務の流れ・予算と期限を紙1枚に書く | 他の人に読み上げて、言い直してもらえる |
| ② 出す情報を決める | 社外に出して困る情報を洗い出し、伏せ字にする方針を決める | 「これは見せない」の一覧が1行でもある |
| ③ 公的窓口を予約する | よろず支援拠点に無料相談を予約し、AI相談の可否を聞く。補助金の手続きは事務局のコールセンターへ | 公的窓口の連絡方法が手元に控えてある |
| ④ 当日の質問を聞く | 質問7つを順に聞き、答えをメモする | 7つのうち、答えが具体的だったものに印が付いている |
| ⑤ 相談後に決める | 相談後の判断表で「進む・裏を取る・見送る」を選ぶ | 次にやることと担当が1行で書ける |
なお、ここでの「5ステップ」は相談の手順で、後に出てくる当社の「導入5ステップ」(契約後までの流れ)とは別の話です。
① 相談前|相談メモ(3項目)を作る
持ち込むのは、課題・今の業務の流れ・使える予算と期限の3項目を書いた、紙1枚の相談メモです。まずはこのメモから始め、追加資料が必要かは予約時に確かめてください。
書き方は次のとおりです。課題は業務の名前で、1行にします。 流れは「誰が・何を使って・どの順で」を短く書きます。予算と期限は目安で構いません。診断(=AIが合う業務かを調べる有料の調査)や試作(=小さく試しに作ること)の段階で使える額で足ります。下のひな形は、そのままコピーして埋められます。必須なのは、ひな形の3項目と「聞きたいこと」だけです。
【相談メモ】(社外に出して困る情報は伏せ字で)
1. 解きたい課題(1行):
例: 毎週の見積書づくりで、過去の見積から転記する作業が長い
2. 今の業務の流れ(誰が・何を使って・どの順で):
例: 営業担当が過去の見積を表計算ソフトから探す → 新しい見積に貼る → 上長が確認
3. 予算と期限の目安:
例: まず診断や試作の段階で使える予算の上限 / いつまでに動かしたいか
聞きたいこと: 自社の課題にAIが向いているか、向いていない場合は何をすべきか確かめ方は、書いたメモを「AIを知らない社内の人」に見せて、課題を一言で言い直してもらうことです。言い直せないなら、課題の書き方が広すぎます。「業務を効率化したい」ではなく「何の業務の、どの作業か」まで落としてください。
業種が変わっても、3項目の形は同じです。製造業なら課題は「検査記録の転記」、士業なら「依頼書類の下調べ」のように、いつもの作業の名前で書きます。AIの名前や技術用語は、メモに書かなくて構いません。
予算が決まっていない場合は、無理に金額を作る必要はありません。「診断だけなら出せる」「月にこの程度までなら続けられる」といった感覚で十分です。ただ、予算の感覚がまったく無いと、相談相手は上限を探るところから始めることになり、相談の時間が減ります。社内で一度、経理や経営者に「試すのにいくらまでなら動かせそうか」を聞いてから行くと、当日の話が進みます。診断の費用の例は、後の「自社の無料相談の場合」に当社の仕様として書いています。
ここまでが必須の内容です。以下は、余裕があれば相談メモに書き足す内容です。
メモには、困っている作業と、その先にある困り事を分けて書きます。たとえば見積の転記が遅いなら、「返事が遅れる」「確認が夜にずれ込む」などです。これは書き方の例で、特定企業の実績ではありません。相談相手には、作業を減らしたあとに何を改善したいのかも伝えてください。文章を作る速さだけでなく、確認待ちを短くしたいかどうかまで伝えられます。
今の流れを書くときは、普段どおりに進む場合と、途中で戻る場合を分けます。書類が足りないとき、担当者が休んでいるとき、内容がいつもと違うときに誰が判断するかを書き添えましょう。例外の扱いが分かると、相談先も人の確認を残す場所を考えられます。例外を隠して簡単そうに見せると、提案と実際の仕事がずれてしまいます。
同席する人は、メモの内容を見て決めます。経営者だけでは手順を説明できないなら、現場担当に説明を補ってもらいます。担当者だけでは予算を決められないなら、持ち帰って誰に相談するかを先に書きます。全員の予定が合わなくても、質問を預かっておけば話を止めずに済みます。
最後に、「相談を終えたら何が分かっていてほしいか」を短く添えます。向いている業務を絞りたいのか、試作の見積を頼める状態にしたいのかで、聞く順番が変わります。メモを作る目的は、きれいな資料を完成させることではありません。答えてほしい問いを相手と共有することです。
② 相談前|外に出してよい情報を決める
社外に出して困る情報は、相談の段階から伏せるのが原則です。相談の目的は「自社の課題に合う進め方を聞くこと」であり、本物のデータを見せなくても果たせます。
具体的には、取引先名・個人が特定できる情報・金額の細目は、伏せ字かダミーの数字に置き換えて説明します。たとえば「架空取引先向けの見積を作り、社内で確認する」と、作業の流れだけを説明します。相談の段階では、実際の顧客データも本物の契約書も渡さないと決めておくと、迷いません。
確かめ方は2つです。ひとつは、社内で「外に出してはいけない情報」を一覧にし、相談メモの内容がそれに触れていないか照らすこと。もうひとつは、当日に「持ち込んだ資料は、どこに保存され、誰が見ますか」と聞くこと(質問7)です。AIに入力してよい情報の線引きや、設計の考え方は中小企業の生成AIセキュリティにまとめています。相談では、社内で許可した範囲だけを見せることが出発点です。
画面を共有する場合も、渡す資料と同じ確認が必要です。通知、開いている別のタブ、ファイル名から取引先や担当者が分かることがあります。相談で見せる画面だけを開き、説明用に作った架空の見本を使ってください。共有の直前に自分の画面を見直すと、資料本文だけでは気づかなかった情報を見つけられます。
名前を消すだけでは足りない場合もあります。珍しい案件の内容や、相手を特定できる組み合わせが残るなら、業務の構造を説明する文章に置き換えます。伏せると相談できないと言われたら、「どの判断に、どの情報が必要ですか」と用途を聞きましょう。必要性を理解してから、社内の管理担当と共有範囲を決めます。
録音やAIによる議事録作成を使う予定があるかも、開始前に確かめます。相談相手の手元に資料を渡さなくても、発言が記録されることがあるためです。保存先、閲覧する人、削除の扱いが分からない間は、機密を含まない説明にとどめます。利用に同意できない場合は、記録の方法を変えられるか相談してください。
③ 公的窓口|よろず支援拠点と補助金事務局の予約と事前確認
公的な窓口は、経営全般の相談ならよろず支援拠点、補助金の手続きならデジタル化・AI導入補助金の事務局(=補助金の問い合わせを受け付ける組織)のコールセンターと、目的で使い分けます。どちらも公式サイトで案内されている窓口です(参照日: 2026年10月4日)。
| 窓口 | 相談できること | 連絡方法 |
|---|---|---|
| よろず支援拠点(全国本部: 中小企業基盤整備機構=中小企業を支援する国の機関) | 国が設置した無料の経営相談所。経営全般について繰り返し相談できると公式サイトが案内 | 公式サイトの拠点一覧から地域窓口を選び、予約方法を確認 |
| デジタル化・AI導入補助金/IT導入補助金 事務局コールセンター | 公式サイトの見出しは「お問い合わせ・相談窓口」。補助金の制度や手続きの問い合わせ先 | 公式の相談窓口ページで、対象年度・電話番号・受付時間を確認 |
使い分けのコツは、聞きたいことが「うちの課題にAIは合うか」なら前者、「補助金の申請の手続きや書類」なら後者、と分けることです。よろず支援拠点は無料で何度でも使えるので、民間の窓口に行く前に、課題の整理だけでも相談する価値があります。
よろず支援拠点の公式サイトでは、AIアドバイザー登録者一覧表が公開されています。予約の前に、自分の地域の拠点が一覧にあるかを見て、予約時にAIアドバイザーに担当してもらえるかを聞いてください。補助金の対象や申請の流れそのものはAI導入の補助金|2026年度の5枠と申請の流れで整理しています。
確かめ方は、予約のときに次の2点を聞くことです。「AI導入の相談を受けられますか」「当日、持っていく資料は何ですか」。ここで相談メモの話をして、足りない資料がないか確かめます。
予約の連絡では、製品名だけを伝えず、困っている作業と聞きたいことを添えてください。「AIの話を聞きたい」より、「見積の転記を減らしたい。今の道具の見直しで足りるか相談したい」と伝える形です。担当者が合うかを確かめやすくなり、別の担当や窓口を案内された場合も、相談内容を引き継ぎやすくなります。
補助金の問い合わせでは、業務への向き不向きを聞く話と、制度の手続きを確かめる話を分けます。公式の相談窓口ページは、問い合わせ前に「よくあるご質問」や資料を読むよう案内しています。先に該当箇所を読み、どの説明で迷ったかを控えましょう。窓口の回答も、その質問に対するものとしてメモに残します。
④ 当日の聞き方|売り込みに偏っていないか確かめる質問7つ
売り込みに偏っていないかを確かめるには、質問7つへの答えを自社の課題と照らします。相手を疑うためではなく、相談の中身が自社の課題に向いているかを見るための質問です。
質問7つは3つのグループ。答えが具体的かどうかは、相談の中身を見る判断材料の1つになる
図の内容: 質問7つを、比べる・お金と断り方・根拠と安全の3グループに分け、答えの具体性を早見表と照らして判断する流れ。
そのまま使える質問の文面は、次のとおりです。全部聞けなくても構いません。時間が短ければ、質問4(費用)→質問5(断ったあと)→質問7(資料の保存先)→質問1の順に聞いてください。
本日は相談の時間をありがとうございます。判断の材料として、次の7点を教えてください。
1. この課題について、AIを使わない選択肢(今のやり方の見直し、既存の道具の設定など)はありますか
2. 他の相談先や他の方法と比べて、何が違いますか
3. 今回の課題で「やらない方がよい」と判断する場面はありますか
4. 費用が最初に発生するのは、どの時点で、いくらからですか
5. 今日お断りした場合、費用や連絡は続きますか
6. 提案の根拠を、公開できる資料や仕組みの説明(事例の資料、仕組みの図など)で見せていただけますか
7. 持ち込んだ資料は、どこに保存され、誰が見ますか公的窓口では質問1・3・7を中心に聞きます。費用に関する質問4・5は、民間の窓口や、診断など有償の次の段階の話が出たときに特に重要です。
この7つは、見分けたいことで3つのグループに分かれています。
- 比べる(質問1〜3): 相手が「AIを入れる」以外の道も話せるかを見ます。AIを使わないほうがよい場合の話ができる相談先は、自社の課題から考えてくれていることが多いです
- お金と断り方(質問4〜5): 無料の範囲と、有料の入口をはっきり言えるかを見ます
- 根拠と安全(質問6〜7): 提案の理由と、持ち込んだ資料の扱いを説明できるかを見ます
答えを控えるときは、次の記録メモをそのまま使えます。質問の番号ごとに、返ってきた答えと、具体的だったかを書くだけです。行は、時間が短いときに優先する4つ(1・4・5・7)を載せています。ほかの質問も、同じ形で書き足してください。
【当日の記録メモ】相談先: 日付:
質問番号 | 返ってきた答え(短く) | 具体的だったか(○/△/×) | 持ち帰る確認事項
1 |
4 |
5 |
7 |
最後に: 次に自分がやること(1行)/相談先がやること(1行)窓口側がどう答えるかの例は、次の2つです。質問4に「相談は無料で、診断に入る時点から費用が発生します。金額は書面でお出しします」と返れば、境目と書面の話が揃っています。質問7に「保存先と閲覧者は、申込書の別紙に書いてあります」と返れば、聞かれる前に整理されています。いずれも架空の言い回しの例で、特定の窓口の実際の回答ではありません。
同席者がいる場合は、役割を決めておくと聞き漏らしが減ります。1人が質問を読み、もう1人が記録メモを書く形です。1人で行く場合は、相手の許可を取って、答えを復唱しながら書き取ってください。
確かめ方は、質問のあとに必ず「具体的に」と1回だけ重ねて聞くことです。「たとえばどんな場合ですか」と返して、例が出れば具体的な答えです。同じ説明を繰り返すだけなら、その質問は印を付けて持ち帰ります。相手を問い詰める必要はありません。答えが曖昧だった質問を記録しておくと、後の判断の材料になります。
業種による読み替えも一言。小さな店舗や個人事業の方は、質問2の「他の方法」を「今使っている表計算やアプリの設定の見直し」に置き換えてください。現実的な答えが得られます。
⑤ 相談後|次の一手を決める
相談後は、「そのまま進む」「別窓口で裏を取る」「見送る」の3つから1つを選びます。その場で契約する必要はなく、メモを持ち帰り、社内で確かめてから決めて構いません。判断では、答えの数より、費用や情報の扱いなどの重要な疑問が残っていないかを見ます。
次の表は「相談後の判断表」です。このあとの早見表が「質問への答えの良し悪し」を見る表なのに対し、判断表は「相談の結果から次の動きを決める」表です。
| 相談後の状態 | 判断 | 次にやること |
|---|---|---|
| 課題に合う提案で、費用・資料の扱い・依頼範囲が分かった | そのまま進む | 次の段階(診断や見積)の依頼内容と、費用が発生する時点を書面で確認する |
| 重要な質問への答えが曖昧、または提案が特定の方法に偏っていた | 別窓口で裏を取る(=別の窓口にも同じ質問をして比べる) | 同じ相談メモを持って、別の窓口(無料の公的窓口を含む)に相談し、答えを比べる |
| 相談後も課題が1行に落ちない、または使える予算が決まらない | 見送る(=今回は進めず、整理して出直す) | 相談メモを書き直し、社内で課題と予算を決めてから再度相談する |
この表は、相談内容を整理するための編集部の提案です。制度で決まった基準や、支援会社の品質を点数で判定する仕組みではありません。資料の扱いが不明な場合は、他の答えが具体的でも、共有や発注を進める前に確認を終えます。
相談後は、分かったことと残った疑問に応じて進み方を選ぶ
図の内容: 提案の説明が揃えば次の依頼を確認し、疑問が残れば別窓口で照合し、社内の課題や予算が未定なら整理に戻る。
別窓口で裏を取るときは、最初と同じ相談メモを使います。相談先ごとに課題の説明を変えると、違う答えが出た理由を比べられません。新しく分かった条件は追記し、最初から伝えていた条件と分けましょう。違う提案が返ってきた場合は、どちらが正しいかを急いで決めず、前提にした業務や資料の違いを聞きます。
「そのまま進む」を選んでも、直ちに本番導入まで頼む必要はありません。次に依頼するのが調査なのか、試作なのか、実際の業務に組み込む作業なのかを揃えます。成果物、社内で確認する担当、別料金になる作業を提案書と照らしてください。相談で聞いた範囲と書面が違うなら、その差を解消してから申し込みます。
見送るのは失敗ではありません。 AIを入れる前に課題が整理できたこと自体が、相談の成果です。むしろ避けたいのは、答えが曖昧なまま「せっかく相談したから」と進めてしまうことです。進める場合の全体の順番はAI導入の進め方5ステップ(別記事・導入全体の流れ)に、診断から先の考え方はAI診断とAIコンサルの違いにあります。
確かめ方は、相談の翌日に相談メモを見返し、「相談の前と後で、何が分かったか」を1行で書くことです。書けるなら、相談は役に立っています。書けないなら、別窓口で裏を取る判断に切り替えてください。
相談の場には会議が付きものなので、打ち合わせの録音から文字起こし・要約・配布までを自社で整えたい場合は、AI 議事録 作成の5ステップと注意点も参考にしてください。
早見表|質問ごとの「良い答え」と「要注意の答え」
早見表は、質問7つへの答えを「良い」か「要注意」かに振り分けるための表です。当日にメモを取りながら、返ってきた答えをこの表に当ててください。「要注意」は、1つあっただけで相談先を外す基準ではありません。複数重なったときに、別窓口で裏を取る材料にします。
| 質問 | 良い答えの例 | 要注意の答えの例 | 聞く理由 |
|---|---|---|---|
| 1 AIを使わない選択肢 | 「その作業は、まず入力の様式を揃えるだけで減ります」のように、AI以外の手も話す | 「AIを入れれば解決します」だけで、他の手が出てこない | 手段が先に決まっていないかを見る |
| 2 他の方法との違い | 自社の得意と不得意を、条件つきで説明する | 「他社より優れています」と言うだけで、条件がない | 比較の物差しが相手にあるかを見る |
| 3 やらない場面 | 「データが少ない場合は見送ったほうがよい」など、具体的な条件が出る | 「どんな会社でもできます」と言うだけで、条件がない | 向かない場合を言えるかを見る |
| 4 費用の発生時点 | 「相談は無料、診断から有料で◯円」と、境目を言える | 「まず見積を取ってから」と、境目をぼかす | 無料の範囲を確かめる |
| 5 断ったあとの連絡 | 「連絡は不要なら止めます」と言える | 期限つきの割引で契約を急かす | 断る自由があるかを見る |
| 6 提案の根拠 | 公開できる資料や仕組みの説明で理由を示す | 根拠は「実績多数」の一言だけ | 提案の理由が検証できるかを見る |
| 7 資料の保存と閲覧 | 保存先と見る人の範囲を、聞かれる前から言える | 「大丈夫です」としか返らない | 持ち込んだ情報の扱いを見る |
自社の無料相談の場合(仕様の開示)
ここまで書いた聞き方は、当社の無料相談にも当てはまります。当社のサービス仕様では、AI Expertの初回相談は無料で、時間は30分です。導入は、無料相談、打ち合わせ、契約、専門家候補のご提示、キックオフ(=作業開始の打ち合わせ)の5ステップで、初期費用は0円です。
より手前の入口として、AI適用診断(=AIが合う業務かを調べる有料の調査)があります。2週間で、本番システム(=実際の業務で使っている環境)には接続せず、現場に同席して進めます。費用は、ライト診断が15万円、標準診断が30万円(いずれも税別)です。研修・試作・実装のどれで進むかを切り分けるための入口で、本番化や保守(=使い始めたあとの運用や修正)は別契約になります。診断の費用の中身はAI適用診断の費用相場に書きました。
無料の範囲、有料に入る時点、本番に触れる範囲は、どの窓口にも書面で確認してください。たとえば当社なら、「初回相談は30分で無料、AI適用診断は有料(ライト15万円・標準30万円、税別)で本番には接続しない」と書面で示せます。同じ細かさで説明できる窓口は、質問4と質問6に答えやすいはずです。逆に、無料と有料の境目を説明できない窓口には、境目を書面にしてほしいと頼んでください。
AI導入の相談を今すぐしなくていい会社と、この記事に含まれないこと
次に当てはまる会社は、民間の有償相談や見積の依頼より先に、社内で決めることが残っています。当社も、この3つが決まっていない段階では、見積を取るより社内の整理を勧めます。ただし、課題の整理だけであれば、よろず支援拠点(無料)に相談できます。
- 解きたい課題が1行に書けない(業務の名前で言えない状態では、民間の窓口も一般論しか返せません)
- 使える予算の感覚が、まったく無い(診断だけなら出せる、程度の目安もない場合)
- 社外に出してよい情報の線引きが無い(相談の場に何を持ち込めるか決まらず、資料の用意が止まります)
この記事に含まれないことは次のとおりです。
- 公的無料・民間有償・ベンダーの窓口の種類の比較と選び方 → AI導入の相談窓口|公的無料と民間有償の違い
- AI適用診断の費用の中身と、診断以外の費用 → AI適用診断の費用相場
- 入力してはいけない情報の細目とセキュリティの設計 → 中小企業の生成AIセキュリティ
- 診断を自社で進める手順 → AI業務診断|自社でできる4ステップ
特定の窓口のランキングや推薦、各窓口の最新の相談枠や費用は載せていません。公的窓口の案内は変わるため、最終的には各公式サイトでご確認ください。
Summary in English
This article explains how a small or mid-sized company in Japan should use an AI consultation desk, once it has already chosen which kind of desk to visit. The conclusion: the accuracy of the answer depends less on which desk you pick and more on the three points you bring: one line describing the problem, how the work flows today, and your budget and deadline. A one-page memo of these three lines is enough. The article follows five steps: prepare the memo; decide which information can leave the company and mask the rest; use public desks; ask seven questions on the day; and decide afterwards whether to proceed, cross-check with another desk, or pause. According to the official site, the Yorozu Support Centers offer free, repeatable management consultations nationwide, with SMRJ supporting their activities through the national headquarters. The subsidy office for the Digital and AI adoption subsidy runs a separate call center for subsidy procedures. Both pages were checked on October 4, 2026. The seven questions test whether the adviser can name non-AI options, explain when not to proceed, state exactly when fees begin, and describe how your documents are stored. AI Expert’s own first consultation is free and lasts 30 minutes; its AI assessment takes two weeks, stays disconnected from production systems, and costs 150,000 or 300,000 yen excluding tax.
まとめ|相談は「持ち込む3点」で決まる
AI導入の相談窓口の使い方を整理します。
- 窓口の種類より、相談前に決めた3点(課題1行・今の業務の流れ・予算と期限)で、答えの精度が決まる
- 社外に出して困る情報は、相談の段階から伏せる。実際の顧客データや契約書は渡さない
- 公的窓口のよろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所で、全国に窓口があり、何度でも無料。補助金の手続きは事務局のコールセンターへ
- 当日は質問7つを聞き、答えの具体性を判断材料にする。特に費用の発生時点と、断ったあとの連絡は必ず聞く
- 相談後は「そのまま進む」「別窓口で裏を取る」「見送る」から選ぶ。その場で契約しなくてよい
相談の準備には手間がかかります。ただ、課題が曖昧なままだと、相談が一般論で終わり、次の窓口でまた同じ説明が必要になります。先に書いておけば、どの窓口に行っても同じ相談メモが使えます。
次のアクションは3つのうちどれか1つで構いません。
- 今日: 相談メモ(課題・今の流れ・予算と期限を1行ずつ)を書く
- 今週: よろず支援拠点か、候補の民間窓口に予約を入れ(予約時にAI相談に対応できるかを聞く)、質問7つを持って行く
- 今月: 相談の結果を判断表で「進む・裏を取る・見送る」に分け、次にやることを1行で決める
相談メモができて、聞きたいことが固まったら、無料相談で一度見せていただければ、一緒に整理できます。
次に読む
- 窓口の種類(公的無料・民間有償・ベンダー)をまだ選んでいない → AI導入の相談窓口|公的無料と民間有償の違い・選び方5項目
- 診断とコンサルの違いを知りたい → AI診断とAIコンサルの違い|現状把握と実装支援を分ける理由
- 自社で課題の洗い出しから始めたい → AI業務診断|自社でできる4ステップと有料診断の中身
- 診断のあとの進め方を知りたい → AI導入の進め方を5ステップで解説
- 社内への説明で止まっている → AI導入の社内説得
更新履歴
- 2026-10-04: 初版公開。よろず支援拠点とデジタル化・AI導入補助金事務局の公式案内、相談メモの3項目、質問7つ、早見表、自社の無料相談とAI適用診断の仕様を収録
- 次回更新予定: 2027年1月(よろず支援拠点と補助金事務局の公式情報の再確認)
本記事は2026年10月4日時点の公式サイトの公開情報と当社のサービス仕様に基づきます(公開日: 2026年10月4日)。窓口の受付時間や連絡先は変わることがあるため、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
参考・出典
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点」 https://yorozu.smrj.go.jp/(参照日: 2026年10月4日)
- よろず支援拠点全国本部「よろず支援拠点・生産性向上支援センター AIアドバイザー登録者一覧表」 公式PDF(参照日: 2026年10月4日)
- デジタル化・AI導入補助金/IT導入補助金 事務局「お問い合わせ・相談窓口」 https://it-shien.smrj.go.jp/contact/(参照日: 2026年10月4日)
- 当社調査: 当社の無料相談・導入5ステップ・AI適用診断のサービス仕様の確認(2026年10月4日)
FAQよくある質問
- AIの相談窓口はどこですか?
- 大きく分けて、国が設置した無料の経営相談所(よろず支援拠点)、補助金の事務局、民間の有償・無償の相談サービスの3種類があります。よろず支援拠点は全国の地域窓口で相談を受け付け、中小企業基盤整備機構は全国本部として活動を支援しています。課題がまだ漠然としているなら、無料で何度でも相談できる公的窓口から始めると、民間の提案を比べる物差しができます。課題と予算が決まっていて製品や支援会社まで絞れているなら、民間の窓口で見積を取るほうが早いです。どれを選んでも、課題・今の業務の流れ・予算と期限の3点を決めて持ち込むほうが、答えは具体的になります。
- 自治体のAI相談窓口はどこで探せますか?
- 自治体ごとに異なり、この記事では一覧を示せません。お住まいの自治体や都道府県の公式案内、または最寄りのよろず支援拠点で確認してください。公的な窓口の有無や相談できる範囲は、年度で変わることがあります。
- AIに入れてはいけない情報は何ですか?
- 社外に出して困る情報は、相談の段階から伏せるのが原則です。取引先名・個人が特定できる情報・金額の細目などは、伏せ字やダミーの数字に置き換えて説明すれば、相談の目的は十分に果たせます。扱いの細かい線引きは、自社の情報管理ルールと相談先の保存方法の両方を見て決めます。
- AI導入の無料相談は本当に無料ですか?
- 相談そのものが無料でも、次の段階(診断・提案・契約)から費用が発生する窓口はあります。無料の範囲がどこまでで、費用が最初に発生するのはどの時点かを、相談の最初に聞いてください。当社の初回相談は30分で無料です。AI適用診断は有料です。
- 相談前に何を準備すればよいですか?
- 3点です。解きたい課題を1行、今の業務の流れ、使える予算と期限の目安を用意します。この3点を1行ずつ書いた紙1枚の相談メモで足ります。あわせて、外部に出してよい情報とそうでない情報を社内で分けておくと、当日に資料を出せずに止まることがありません。
- 相談したら契約しなければいけませんか?
- いいえ。相談後の提案を持ち帰り、依頼する範囲を検討して構いません。ただし、窓口によっては相談後に連絡が続くことがあるため、当日の最初に「今日お断りした場合、費用や連絡は続きますか」と聞いておくと安心です。その場で決めず、社内に持ち帰って構いません。
- 相談には誰が同席すればよいですか?
- 課題を説明できる現場の担当者と、予算や進め方を決められる人の2者がそろうのが理想です。2者がそろわない場合は、決める人に事前に相談メモ(課題・今の業務の流れ・予算と期限を書いた紙)を読んでもらい、判断できない点を持ち帰る前提で相談します。1人で行くときは、費用の発生時点や断ったあとの連絡など相談先に聞く7点を読み上げ、答えを書き取る役を兼ねることになるため、答えの記録メモを先に用意しておくと進めやすくなります。
- 相談先に社内の説明を任せてもよいですか?
- 任せきりにはしないほうがよいです。相談先は自社の業務の細部を知らないため、課題や例外の扱いは社内の人が説明する必要があります。相談先には、選択肢の比較や進め方の整理を頼み、何を採用するかは社内で決めます。
- 相談当日は何を聞けばよいですか?
- AIを使わない選択肢はあるか、他の方法と何が違うか、やらない方がよい場面はあるかの3点で、相談先が自社の課題から考えているかを見ます。そのうえで、費用が最初に発生する時点、断ったあとに費用や連絡が続くか、提案の根拠、持ち込んだ資料の保存先と見る人を聞きます。時間が短いときは、費用の発生時点、断ったあとの連絡、資料の保存先、AIを使わない選択肢の順に聞きます。
- 相談の記録はどう残せばよいですか?
- 質問ごとに、返ってきた答えを短く書き、具体的だったかを○・△・×で付けます。具体的に答えられなかった点は、持ち帰る確認事項として別に書き出します。最後に、次に自分がやることと、相談先がやることを1行ずつ書いておくと、相談後に進むか、別の窓口にも聞いて比べるか、見送るかを決めやすくなります。


