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AI OCR 帳票|種類別の読み取りやすさと選び方5基準【2026年10月】

AI OCRで帳票を読み取る前に確かめることを整理。定型・非定型・手書きの違い、選び方5基準、自社の帳票で試す手順を、NTTデータの73帳票の検証など2026年10月時点の公的・公式資料で確認しました。

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AI Expert 編集部運営 Orga合同会社

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AI OCR 帳票|種類別の読み取りやすさと選び方5基準【2026年10月】

結論: AI OCRで帳票を読めるかどうかは、AIの優劣より帳票の種類と状態で決まります。同じAI OCRでも、様式が決まった帳票、発行元ごとに形が違う帳票、手書きの帳票では、読みやすさも人が直す量も違うからです。この記事では、帳票を定型・非定型・手書きの3つに分ける見方、帳票別の確かめどころ、公的資料に出ている読み間違えの傾向、選び方5基準、自社の帳票で試す4ステップを書きます。

この記事の要点

  • 帳票は「定型・非定型・手書き」の3つに分けて考える。AI OCRの製品比較より先に、自社の帳票がどれに当たるかを書き出す
  • NTTデータが6つの自治体と行った検証(2018年12月〜2019年3月)は、73帳票で正読率(=正しく読めた割合)約93%。難しい手書きのサンプルを混ぜた2019年の試験の結果で、今の製品の精度を示す数字ではない
  • 公的資料は、判読しにくい字・罫線との重なり・枠からのはみ出しで誤読になる傾向を挙げている。AI OCRを入れても、人が確認する工程は残る
  • 選ぶ前に、自社の帳票を種類別に5枚ずつ読み取らせ、直す箇所を記録する。読み取ることと、電子帳簿保存法の保存要件を満たすことは別の話

この記事は、中小企業の経理・総務・現場の担当者に向けて書いています。対象は、紙やPDFの帳票(請求書・納品書・注文書・申請書など)を人が手で入力している方です。AI OCRを入れる前に「自社の帳票は読めるのか」「どう選ぶのか」を決めたい段階を想定しています。「手入力を続けず、帳票の入力を減らす」ことはすでに決めた前提で進めます。請求書1種の読み取りの流れはAI 請求書 読み取り|AI-OCRと生成AIの違い・選び方5基準に、精度の数字の読み方はOCR精度|AI-OCRとの違いと正読率を上げる4つの方法に書きました。

今日やることは1つです。自社の帳票を種類別に5枚ずつ選び、定型・非定型・手書きのどれに当たるかを紙1枚に書き出してください。分け方は次の節で説明します。迷うときは「自社の様式か、取引先の様式か」で分けます。製品の資料請求は、その後で構いません。

AI OCR 帳票とは|従来のOCRとの違い

AI OCRで帳票を読むとは、紙やPDFの帳票から文字を読み取り、金額・日付・取引先といった項目ごとにデータとして取り出すことです。従来のOCRは、画像の文字を文字データに置き換えます。この記事でいうAI OCRは、帳票のどの位置に何が書かれているかも手がかりにして、項目を取り出すものを指します。

用語を3つ整理します。

  • スキャン: 紙を画像データにする作業です。この段階では、人が見れば読めても、パソコンは文字として扱えません
  • OCR(=画像の中の文字を、文字データに変える処理): スキャンした画像から文字を取り出します。「OCR伝票」と呼ばれるのは、伝票や帳票をこの方法で読み取ってデータにする使い方です
  • 項目抽出: 取り出した文字のうち、どれが金額で、どれが日付かを振り分ける段階です。AI OCRが従来のOCRと分かれるのは、主にここです

スキャンとOCRは別の作業です。スキャンしただけのPDFは、人が目で見るには足りても、金額を検索したり集計したりはできません。OCRまで通して、はじめて文字として扱えます。

下の図の「人の確認」は、読み取り結果を原本と見比べて直す工程です。「書き出し」は、確認した結果を会計ソフトなどの入力先へ渡す工程です。

帳票の読み取りは「スキャン→文字認識→項目抽出→人の確認→書き出し」の5段階で、人の確認が入る

AI OCRで帳票を読み取る流れ紙の帳票をスキャンし、文字認識で文字を取り出し、項目抽出で金額や日付に振り分け、人が確認してから入力先へ書き出す5段階の流れ。項目抽出と人の確認を強調している。① スキャン紙を画像にする② 文字認識文字を取り出す③ 項目抽出金額・日付に分ける④ 人の確認原本と見比べる⑤ 書き出し入力先へ渡す結果は③の当たり外れと④の手間で決まる。帳票の種類で、どちらも変わる

図の内容: 帳票の読み取りは5段階で進み、項目抽出と人の確認が結果を左右する。

確かめ方: 手元の帳票を1枚スキャンし、PDFの中の文字を選択してコピーできるか試してください。コピーできなければ、そのPDFはまだ画像のままで、OCRの対象です。読み取り結果の精度の数字をどう読むかは、OCR精度の記事で扱っています。

帳票の3分類|定型・非定型・手書きで読みやすさが変わる

帳票は、様式が決まった「定型」、発行元ごとにレイアウトが違う「非定型」、記入者で字が違う「手書き」の3つに分けると、AI OCRで何が起きやすいかを見通せます。自社の帳票は、この3つのどれかか、その組み合わせに当たります。

分類例AI OCRで起きやすいこと最初に確かめること
定型自社で作った注文書、自社の申請書、社内で様式を固定している帳票項目の位置が毎回同じなので、読み取りの設定を一度作れば同じ形で繰り返し使いやすい様式が本当に固定されているか。印字の位置や紙の向きがずれて届かないか
非定型取引先から届く請求書・納品書、発行元ごとに形が違う書類項目の位置が発行元で変わるため、項目の取り違えや取りこぼしが出ていないかを見る手間が増えやすい発行元の数と、明細行の数・書き方がどれだけ違うか
手書き記入式の申請書、手書きの注文書、手書きで修正された書類字の癖や記入枠の大きさで、読み取り結果の差が大きくなりやすい記入欄の大きさ、罫線との重なり、修正や押印が上に重ならないか

ここでいう「読み取りの設定」は、「この位置に金額がある」と製品に教える作業です。提供元が代行する場合もあるので、誰がやるか、どれくらい手間がかかるかを提供元に聞いてください。

分類は「帳票の名前」ではなく「届き方」で決めます。同じ請求書でも、自社の様式を取引先に使ってもらっているなら定型に近く、取引先ごとの様式で届くなら非定型です。そこに手書きの追記や押印が重なれば、手書きの要素も加わります。

「相手の様式をこちらで決められるか」が、実は一番大きな分かれ目です。 自社で様式を決められる帳票は、様式を見直して読み取りやすくする手が打てます。取引先の様式で届く帳票は、そうはいきません。この違いは、後の「選び方5基準」の最初の基準にもつながります。

確かめ方: 自社の帳票の名前を1行ずつ書き出し、その横に「様式は自社で決められるか(はい・いいえ)」「手書きが入るか(はい・いいえ)」を付けてください。「いいえ・いいえ」なら非定型、「はい・いいえ」なら定型、手書きが「はい」なら手書きの要素あり、と仕分けられます。

帳票別の早見表|請求書・納品書・注文書・申請書・契約書

帳票ごとに、確かめるところは違います。下の表に、主な5種類の「どの分類に当たりやすいか」と「確かめる観点」を並べました。精度の数字は載せていません。数字は帳票・読み取りの設定・紙の状態で変わるので、自社の帳票で測る前提にしています。

帳票主な分類確かめる観点関連記事/補足
請求書非定型が中心発行元ごとにレイアウトが違う。明細行の数が請求書ごとに変わる。合計と明細の金額が合うか読み取り手順と誤読しやすい項目はAI 請求書 読み取り
納品書非定型が中心。発注元の指定様式なら定型品名・数量の列の並びが発行元で違う。押印や手書きの訂正が数量の上に重なる精度の測り方はOCR精度の記事
注文書自社発行なら定型。取引先発行なら非定型自社で様式を固定できるか。固定できれば項目の位置が毎回そろい、読み取りの設定を共通にできる受発注の流れ全体はAI 受発注 自動化
申請書定型と手書きの組み合わせ記入枠の大きさ、選択肢の丸の付け方、年月日の区切りの印字。様式を自社で見直せるか様式見直しの例は、下の「読み間違えやすい場面と、人が確認する場面」の節
契約書非定型。押印・手書きの修正が入りやすい条文の本文を読むのか、日付や金額など一部の項目だけを取るのか。読み取る目的を先に決める自社の契約書で試して判断する

請求書はAI 請求書 読み取り|AI-OCRと生成AIの違い・選び方5基準で1種類だけ深く扱っているので、ここでは並べるだけにとどめます。精度の数字の読み方や上げ方は、OCR精度の記事を見てください。

確かめ方: 表の「確かめる観点」を、自社の帳票ごとに1つずつ選び、5枚の見本を見ながら当てはまる枚数を数えてください。たとえば納品書なら、押印が数量の上に重なっている枚数です。数えた結果が、そのまま提供元に伝える条件になります。

公的資料で見るAI OCR|総務省の導入状況とNTTデータの73帳票の検証

公的な資料には、導入の広がりを示す総務省の調査と、実帳票を使ったNTTデータの検証があります。どちらも自治体向けの資料で、民間企業の帳票にそのまま当てはまる数字ではありません。使えるのは「どんな条件で、何が分かったか」という読み方の部分です。

総務省の「自治体におけるAI・RPA活用促進」(令和7年6月30日版)に、令和6年度調査の結果が載っています。導入件数が最も多いのは「音声認識」(879件)で、AI-OCR等が該当する「文字認識」(622件)が2番目です。この調査は地方自治体が対象で、民間企業の導入状況ではありません。「文字認識」が自治体で広く使われている、という広がりを知る材料にとどめてください。

NTTデータは、町田市・郡山市・市川市・つくば市・横浜市・福岡市と、2018年12月から2019年3月まで、実帳票でAI-OCRの実用性を検証しました。対象は73帳票(参加団体が実用している帳票)で、結果は「正読率約93%という結果が得られ、参加団体からは、自治体の業務や帳票によって実用に耐え得る可能性があるという意見がありました。」と記載されています。正読率とは、読み取った結果のうち正しく読めた割合のことです。

この数字を読むときは、条件を一緒に見ます。同じ資料には、参加団体が雑字・くせ字・悪筆などさまざまな手書き記載のサンプルを作成した、という記載があります。読み取りの検証は、AI OCRシステムに不慣れな人が作業することを想定した帳票定義(=どこに何が書かれているかを製品に教える設定)で行われました。これは2019年の検証の結果で、現在の製品の精度を示すものではありません。「93%」を今の製品に当てはめず、「手書きの難しいサンプルを含めても、帳票によっては使える水準が出た」という方向を知る材料として使います。

資料発行元分かること分からないこと
AI-OCR実用性の検証結果(2019年3月27日)株式会社NTTデータ6つの自治体・73帳票の検証条件と、正読率約93%、誤読の傾向、様式見直しの例現在の製品の精度。民間企業の帳票での結果
自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年6月30日版)総務省令和6年度調査での「文字認識」622件という導入件数の位置づけ民間企業の導入状況。帳票の種類ごとの内訳
電子取引関係/電子帳簿保存法の概要国税庁電子データの保存と、スキャナ保存制度の位置づけ読み取りの精度。要件の細目は原文で確認が必要

数字を見たら、対象の帳票・期間・測り方が書かれているかを必ず確認してください。

確かめ方: 提供元が精度や削減時間の数字を出してきたら、「どの帳票を何枚、どの条件で測った数字か」を聞いてください。条件が答えられない数字は、自社の判断材料にしません。

読み間違えやすい場面と、人が確認する場面

AI OCRが読み間違えやすいのは、人が見ても迷う字、罫線と文字が重なる場面、文字が枠からはみ出す場面です。 ここはNTTデータの検証資料が挙げる傾向で、帳票が手書きかどうかに関わりなく、紙の状態がそのまま結果に出ます。

同資料は、誤読の傾向として次の点を挙げています。

  • 判読しにくい字: 「目視でも判読が難しいような、雑字、くせ字、悪筆等は、誤読となる傾向がある。」
  • 罫線・枠線との重なり: 「罫線や枠線と文字が重なるケース、文字が枠線からはみ出るケースでは誤読となる傾向がある。」
  • 様式の印字: 日付の年月日などの区切りを示す「.」や、選択肢を示す「○」(点線の○)が帳票にあらかじめ印字されている帳票

同資料は、帳票の様式を見直すと正読率の向上が期待できる例を挙げています。この印字のある帳票に加え、記入枠が小さく手書き文字が罫線と重なりやすい(または枠からはみ出しやすい)帳票と、裏面の文字が表面に裏写りする帳票です。

公的資料の傾向に加えて、帳票の実務で起きやすい読み間違いもあります。たとえば、カタカナの「ロ」と漢字の「口」、「ニ」と「二」のように、形がほぼ同じ字は、前後の文字や項目の意味から判断しないと取り違えます。会社名や品名でこの取り違えが出ると、突き合わせで見つからない原因になります。ここは一般的な傾向です。出やすさは製品と帳票で違うので、後述の4ステップの③(直す箇所の記録)に残して確かめてください。

読み取りの前処理でも結果は変わります。スキャンした紙が傾いている、歪んでいる、薄いといった状態は、読み取りの前に補正する機能があるかを提供元に聞きます。

公的資料から読み取れる範囲では、「AI OCRは使えない」と言われる場面で、帳票の状態、設定、確認工程の不足が重なっていることがあります。AI OCRそのものが読めないのではなく、読みにくい帳票をそのまま通して、確認せずに入力先へ流した結果、誤りが残る、という流れです。

参加した自治体の意見として、同資料には次の記載があります。「入力内容にミスが許されない業務については、2名体制で入力しているケースもあり、その一部にAI-OCRを活用するということも検討できる。」つまり公的資料には、AI OCRを人の置き換えとして全面に入れず、人が2名で入力している業務の片方に使う進め方が出ています。

では、どこを人が確認するのか。次の図のとおり、判断は2段階です。

間違うと困る項目と、読みにくい帳票は、人が原本と見比べる

人が確認する場面の分岐読み取り結果の項目が金額・日付・取引先など間違うと困る項目なら、人が原本と見比べる。そうでなければ、罫線との重なりや手書きの修正がある帳票かを見て、あるなら人が見る。どちらでもなければ、抜き取りで確認する。読み取り結果金額・日付・取引先など間違うと困る項目か罫線との重なり・はみ出し・手書き修正がある帳票か人が原本と見比べる人が原本と見比べるどちらでもない帳票は、抜き取りで確認するはいはいいいえ

図の内容: 間違うと困る項目と、読みにくい帳票の2つは人が原本と見比べ、残りは抜き取りで確認する。

図の分岐は、本文で挙げた誤読の傾向をそのまま使っています。「間違うと困る項目」は会社ごとに決めてください。経理なら、金額・日付・振込先などが候補です。どちらにも当たらない帳票は、数枚を抜き取って確認します。

確かめ方: 提供元に、読み取り結果を人が確認して直す画面があるかを聞いてください。原本の画像と読み取った文字が並んで見え、直した履歴が残る作りなら、確認の工程を組みやすくなります。AI OCRの導入後も人が確認する工程は残るので、その手間を含めて業務を設計します。

帳票から逆算する選び方5基準

AI OCRは製品の機能表から選ぶのではなく、自社の帳票の種類と、読み取り後に何をするかから逆算して選びます。基準は、帳票の分類への対応、確認と修正のしやすさ、書き出し先、データの扱い、料金体系の見方の5つです。

基準聞くこと良い答えNGの答え
① 自社の帳票の分類に対応するか定型・非定型・手書きのうち、自社の帳票を試せるか。試すときの条件は自社の帳票を預けて読み取りを試せる。試した結果を帳票ごとに見せてもらえる「なんでも読めます」と言うだけで、自社の帳票での試用を断る
② 読み取り後の確認と修正のしやすさ原本の画像と読み取り結果を並べて確認できるか。直した内容は残るか。直した内容が次の読み取りに反映される(学習する=機械が間違いを覚えて、次から直る)か確認画面で直せて、誰がいつ直したかが追える。学習の有無と、その範囲(自社だけか全利用者で共有か)を説明できる確認の画面がなく、書き出した後にファイルで直す前提
③ 書き出し先会計ソフトや基幹システムの入力形式に合う形で出せるか。形式を変えられるか。RPA(=人の操作を真似て自動入力するソフト)やAPI(=システム同士をつなぐ口)で入力先へ自動で転記できるか自社が使う入力先の形式を具体的に挙げて、対応を説明できる。転記の方法(ファイル書き出し・RPA・API連携)を選べる書き出し先が決まっていないまま「後で調整します」と言う
④ データの扱い帳票の画像とデータの保存場所、保存期間、読み取り結果をAIの学習(=製品の改良)に使うか否か保存場所・期間・学習への利用の有無を文書で答える。社内の情報管理ルールに合わせた設定がある質問に口頭でしか答えない。保存場所を答えられない
⑤ 料金体系の見方従量課金か定額か。初期費用はあるか。確認画面や書き出しは料金に含まれるか公式サイトに公開価格があり、含まれるものが書かれている。想定枚数で見積が出る条件を聞く前に「すぐ契約を」と急かす。含まれる範囲を答えない

NGの答えは、その会社が悪いと決める印ではありません。文書で返らない答えは、後で確認できません。答えが文書で返ってきたかを必ず記録してください。

⑤の費用については、この記事では金額を示しません。提供元ごとに料金体系も含まれる範囲も違います。まず公式サイトの公開価格を確認し、無ければ自社の帳票の想定枚数を伝えて見積を取ってください。見積を比べるときは、読み取り枚数あたりの単価だけでなく、確認画面と書き出しが含まれるかをそろえて比べてください。

①と②は、自社の帳票で試さないと答えが出ません。③は読み取り後の入力先が決まっていないと比べようがありません。会計ソフトや基幹システムへ渡すなら、AI OCRの選定より先に入力先を決めてください。表計算ソフトに出すだけで足りる場合は、この点は急ぎません。仕訳の自動化は仕訳AI自動化|3つの導入パターンと電帳法対応の注意点に書いたとおり、読み取りの後の別の工程です。

④のデータの扱いは、帳票に取引先の名前や金額が載ることを前提に、社内の情報管理ルールと照らして確かめます。提供元によっては、預けた帳票の内容が製品の改良に使われる場合があるため、使うかどうかを聞きます。生成AIの業務利用全般の注意は、中小企業の生成AIセキュリティ|入力してはいけない情報と設計の3原則でも書きました。

確かめ方: 5つの基準を、提供元の候補ごとに表にして書き込み、答えが「文書で返ってきたか、口頭だけだったか」も記録してください。5つのうち、答えが曖昧なまま残る項目が多い会社は、候補から外して構いません。

自社の帳票で試す4ステップ

選ぶ前に、自社の帳票で小さく試すのが一番確かです。手順は4ステップです。帳票を種類別に選び、3分類に仕分け、読み取り結果で直す箇所を記録し、様式を見直せる帳票は見直します。

試すのは4ステップ。帳票を選び、仕分け、直す箇所を記録し、様式を見直す

自社の帳票で試す4ステップ帳票を種類ごとに5枚ずつ選び、定型・非定型・手書きに仕分け、読み取り結果で人が直す箇所を記録し、様式を見直せる帳票は見直す。① 帳票を選ぶ種類別に5枚ずつコピーを用意する② 3分類に仕分け定型・非定型・手書きに分ける③ 直す箇所を記録人が結果を見て間違いを書き留める④ 様式を見直す自社で決められる帳票だけ直す③の記録が、提供元への質問と比較の材料になる

図の内容: 帳票を選んで仕分け、読み取り結果で直す箇所を記録し、様式を見直せる帳票は直す4ステップ。

① 帳票の選び方

まず、実際に入力している帳票のうち一番多い1〜2種類から始めます。請求書・納品書・注文書・申請書など、種類ごとに5枚ずつ選びます。5枚は、直す箇所の傾向を見るための最低限の目安です。きれいな帳票だけを集めると、結果が実際より良く出ます。かすれたもの、押印が重なったもの、手書きの修正が入ったものも混ぜてください。個人情報や取引先の情報が載る帳票を外部の提供元に預けるときは、社内の情報管理ルールを先に確認します。

② 3分類への仕分け

選んだ帳票を、前の節の表に従って定型・非定型・手書きに仕分けます。1枚で2つにまたがるときは、より読みにくい方に入れてください。

③ 直す箇所の記録

先に、提供元に自社の帳票での試用を頼みます。無料で試せるか、有料かは提供元ごとに違うので、条件は各社の公式サイトや問い合わせで確かめてください。読み取りを試したら、人が原本と結果を見比べます。ここでは「何枚中何枚が合っていたか」より、どの項目をどう間違えたかを書き留めるのが目的です。たとえば「明細の3行目の数量が隣の列に入った」「押印の下の日付が読めなかった」のように、場面を具体的に記録します。この記録が、提供元への質問にも、後の運用設計にもそのまま使えます。

④ 様式の見直し

自社で様式を決められる帳票は、様式を直せないか考えます。目安は、NTTデータの資料が挙げた例(印字された区切りや丸、小さい記入枠、裏写り)です。取引先の様式で届く帳票は、見直しの対象外です。

提供元の候補は、「AI OCR 帳票」「AI OCR 請求書」などで検索します。各社の公式サイトで自社の帳票の種類に対応しているかを見て、2〜3社に絞ります。提供元に聞く内容は、そのまま送れる文面にまとめておくと、会社ごとの答えを並べて比べられます。

質問テンプレ(メール文面)
件名: 帳票読み取りサービスについての確認事項

お世話になっております。貴社のサービスを検討しており、以下を確認させてください。

1. 当社の帳票(請求書・納品書など種類別に各5枚程度)を、契約前に読み取って結果を見せていただくことは可能でしょうか。その際の条件も教えてください。
2. 読み取り結果を人が確認して直す画面はありますか。原本の画像と結果を並べて見られるか、直した履歴が残るかを教えてください。
3. 読み取り結果を、当社が使っている会計ソフト(または基幹システム)へ渡す形式に対応していますか。対応形式を具体的に教えてください。
4. 帳票の画像と読み取り結果の保存場所・保存期間、およびAIの学習に使われるかどうかを、文書で教えてください。
5. 料金体系(従量・定額・初期費用)と、確認画面や書き出しが料金に含まれるか。公開価格があればURLも教えてください。

以上、よろしくお願いいたします。

自社の帳票で何がどこまでできるかを、実際の業務システムにはつなげずに切り分けたい場合は、AI適用診断とは(分かること・分からないこと)が入口になります。AI適用診断は、2週間かけて、現場に同席し、実際の業務システムにはつながない形で、研修・試作・実装のどれで進むかを切り分けます。

確かめ方: ③の記録は、帳票の種類ごとに「間違えた項目・場面・直すのにかかった時間の体感」を一覧にしてください。直す箇所が毎回同じ場所に出るなら、設定か様式の見直しで減らせる余地があります。毎回ばらばらなら、人の確認を厚く置く前提で選びます。

読み取りと保存は別|電子帳簿保存法で確かめること

帳票を読み取ってデータにしたことと、法令の保存要件を満たすことは、別の話です。 AI OCRで項目を取り出しただけでは、保存の義務を果たしたことにはなりません。

紙の帳票を電子データにする動きは、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応から始まることがあります。法対応が理由でも、読み取りの精度と保存の要件は、別々に確かめます。

国税庁の「電子取引関係」ページは、請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要だと記載しています。また、国税庁の「電子帳簿保存法の概要」の「スキャナ保存制度」の項は、紙の国税関係書類を一定の装置で電子データにして記録する場合に、一定の要件の下で、その保存をもって紙の書類の保存に代えられるとしています。つまり、紙をスキャンして保存すれば紙を残さなくてよい、とは限らず、条件があります。

要件の細目は、この記事では書きません。どちらの資料も最終更新日は本文から確認できなかったため、参照日(2026年10月12日)で鮮度を示します。AI OCRの導入を決める前に、国税庁の原文を開き、自社の保存の流れが当てはまるかを税理士に確認してください。税理士には「紙をスキャンして保存し、原本を処分してよいか」「読み取った結果のデータと画像を、どの形で残せばよいか」の2点を聞くと話が早く進みます。請求書の電子化と義務化の全体像は、請求書の電子化・デジタル化|義務化はいつから・発行側と受領側の違いに整理しています。

確かめ方: 提供元に「読み取った結果と、元の帳票の画像を、どちらも保存できる作りか」と聞き、あわせて税理士に「自社の保存の流れが、国税庁の要件に当てはまるか」を確認してください。

今すぐAI OCRを入れなくていい会社と、この記事に含まれないこと

帳票の量が少ない、人が見る量が少ない、読み取った後の入力先が決まっていない会社は、今すぐAI OCRを入れなくて構いません。 入れても、手間が減らないからです。量の目安は、手入力に週に何時間かかっているかを自分で測って考えてください。

今すぐ入れなくていい会社の条件は、次のとおりです。

  • 読み取りたい帳票が月に数枚しかなく、手入力の時間が短い
  • 様式が毎回違い、試してもほとんどの項目を人が見直すことになる(見直す量が読み取りで減らない)。続けるか見送るかは、自社の帳票で試した結果で決める
  • 読み取った後の入力先(会計ソフト・基幹システム)が決まっていない
  • 取引先が電子の請求書で送ってくれるため、そもそも紙の帳票がほとんど届かない

この記事に含まれないことは、次のとおりです。

確かめ方: 自社の帳票の月間の枚数を数え、1枚あたりの入力時間を測ってください。合計が小さいなら、まず様式の統一や取引先への電子化のお願いから始める方が早く済みます。

Summary in English

AI OCR can read business forms well or poorly depending on the type and condition of the form more than on the AI itself. This article sorts forms into three types: fixed-layout forms, variable-layout forms that differ by issuer, and handwritten forms. It then gives five selection criteria: whether the product supports your form type, how easily a person can check and correct the results, where the data is exported to, how the data is stored and whether it is used for training, and how to read the pricing model.

Public sources show both the potential and the limits. NTT Data ran a trial from December 2018 to March 2019 with six municipalities using 73 actual forms and reported a correct reading rate of about 93%. That result comes from 2019, used handwriting samples created by the participants, and does not describe current products. The same document says illegible handwriting, characters overlapping ruled lines, and characters spilling out of boxes tend to cause misreads. The Ministry of Internal Affairs and Communications reports 622 deployments of “character recognition” in its survey of local governments, not of private companies.

Reading a form and meeting the National Tax Agency’s storage requirements are separate matters. The practical step is to pick five forms of each type, read them with candidate services, record where a person had to correct the output, and redesign layouts your company controls. Keep a human check for amounts, dates and payees.

まとめ|帳票の種類を決めてから、AI OCRを選ぶ

AI OCRの選定は、製品の比較より先に、自社の帳票の種類を決めるところから始まります。

  • 帳票は、定型・非定型・手書きの3つに分けて考える。様式を自社で決められるかが分かれ目になる
  • 公的資料のNTTデータの検証は73帳票で正読率約93%。手書きサンプルを作った2019年の条件つきで、現在の製品の精度ではない
  • 誤読は、判読しにくい字、罫線との重なり、枠からのはみ出しで出やすい。人が確認する工程は残る
  • 選ぶ基準は、帳票の分類への対応、確認と修正のしやすさ、書き出し先、データの扱い、料金体系の見方の5つ
  • 自社の帳票を種類別に5枚ずつ読み取らせ、直す箇所を記録してから決める
  • 読み取りと保存要件は別。国税庁の原文と税理士で確認する

次のアクションは、3つのうちどれか1つで構いません。

  • 今日: 自社の帳票を種類別に5枚ずつ選び、定型・非定型・手書きのどれに当たるかを紙1枚に書き出す
  • 今週: 提供元の候補2〜3社に、記事の質問テンプレを送り、自社の帳票での試し読みができるかを確認する
  • 今月: 試し読みの結果を表にして、直す箇所と確認の手間を比べ、続けるか見送るかを決める

自社の帳票で何がどこまで読めるか、ご自分で切り分けるのが難しいときは、無料相談で状況を聞かせてください。一緒に整理します。

次に読む

更新履歴

  • 2026-10-12: 初版公開。NTTデータの検証結果、総務省の導入件数、国税庁の電子取引関係・電子帳簿保存法の概要を反映
  • 次回更新予定: 2027年1月(国税庁・総務省の資料の更新を再確認)

本記事は2026年10月12日時点の公開資料に基づきます(公開日: 2026年10月12日)。電子帳簿保存法の要件は国税庁の原文と税理士で、製品の機能と料金は提供元の公式サイトで確認してください。

参考・出典

FAQよくある質問

AI OCRの帳票読み取りとは何ですか?
紙やPDFの帳票を画像にして、そこに書かれた文字を読み取り、金額・日付・取引先といった項目ごとにデータへ分けて取り出す仕組みです。文字をそのまま写す従来のOCRに対し、AI OCRは帳票のどの位置に何が書かれているかも手がかりにして項目を取り出します。取り出した結果は人が確認してから、会計ソフトなどの入力先へ渡すのが基本です。
OCR伝票とは何ですか?
伝票や帳票に書かれた文字をOCRで読み取り、データにすることを指す言い方です。納品書・注文書・申請書など、紙で届く伝票を手で打ち込む代わりに、スキャンした画像から文字を取り出します。読み取りの対象が印字か手書きか、様式が決まっているかで、読み取りやすさは変わります。
スキャンとOCRの違いは何ですか?
スキャンは紙を画像データにする作業で、OCRはその画像から文字を取り出してデータにする処理です。スキャンしただけの画像やPDFは、人が見れば読めても、そのままでは金額や日付を検索したり別のシステムへ渡したりできません。OCRを通して初めて、文字としてコピーや集計ができる状態になります。
なぜAI OCRが使えないと言われるのですか?
帳票の状態、設定、確認の工程が合っていないと、期待した結果にならないからです。NTTデータの検証資料は、判読が難しい字や、罫線と文字が重なるケース、文字が枠線からはみ出るケースで誤読になる傾向があると記載しています。人の確認の工程を置かずに入力先へ流すと、誤読がそのまま残ります。自社の帳票で先に試し、直す箇所を記録してから選ぶのが安全です。
AI OCRの費用はいくらですか?
この記事では金額の相場は示していません。料金は、読み取る枚数に応じた従量課金か、月額の定額か、初期費用の有無といった体系で変わります。提供元の公式サイトに公開価格があるかを確認し、公開されていなければ、自社の帳票の想定枚数を伝えて見積を取り、確認画面の利用や書き出しが料金に含まれるかまで聞いてください。
非定型帳票もAI OCRで読み取れますか?
読み取れる場合はありますが、帳票ごとに確かめる必要があります。非定型帳票は発行元ごとにレイアウトが違うので、項目の位置が固定の定型帳票より、読み取りの設定や確認の手間が増えやすい種類です。自社に届く非定型帳票を5枚ほど選び、実際に読み取らせて、直す箇所がどれだけ出るかを見てから判断してください。
手書きの帳票もAI OCRで読み取れますか?
読み取れる場合がありますが、書き手と記入欄の作りで結果が大きく変わります。NTTデータの検証資料は、目視でも判読が難しい雑字・くせ字・悪筆は誤読になる傾向があると記載しています。記入枠が小さく文字が罫線と重なりやすい様式は、様式を見直すことで改善が期待できる例として挙げられています。手書きは人の確認を前提に使います。
AI OCRの導入事例にはどんなものがありますか?
公的資料では、NTTデータが町田市・郡山市・市川市・つくば市・横浜市・福岡市と2018年12月から2019年3月まで行った検証があります。参加団体が実用している73帳票を使い、正読率(=正しく読めた割合)は約93%という結果でした。ただし2019年の検証で、手書きサンプルを参加団体が作成した条件のものです。現在の製品の精度を示すものではありません。総務省の資料には、地方自治体の調査で文字認識の導入件数が622件という記載もあります。これは自治体の調査で、民間企業の参考程度に見てください。

Writerこの記事を書いた人

AI Expert 編集部運営: Orga合同会社

非エンジニアの運営者が、自社の営業(リスト作成・文面・送付・資料・日報)をAIで毎日動かしながら書いています。中小企業のAI適用診断・実務題材型AI研修・プロAI人材のマッチングを提供。

この記事の検証方法: 数字・価格・仕様は一次情報(公式ドキュメント・公式料金ページ)か自社の実測だけを使い、出典に参照日を付けています。公開前に機械検証(verify_post)と、書き手とは別のAIによる事実照合を通しています。

この記事の検証環境: NTTデータの検証結果(2019年3月27日)、総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進」(令和7年6月30日版)、国税庁の「電子取引関係」「電子帳簿保存法の概要」の公式資料4件を2026年10月12日に開き、本文の引用文と原文を1つずつ照合しました。公開前に、書き手とは別のAIが本文・表・図・FAQを出典と照らし合わせています。